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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine読者に尋ねたマーケティング予算、チャネル別や施策別での変化と動向は?

 コロナ禍や新たなプラットフォームの台頭、Z世代への注目など、マーケティングの潮流はこの数年だけでも大きく変化してきた。その中で、各社のマーケティング予算はどのように変化しているのだろうか。MarkeZineではビジネスパーソン805名にアンケートを実施。その回答結果をまとめて『マーケティング最新動向調査2023』として1月に刊行した。今回はその中から「マーケティング・販促・広告予算の変化」について概要を紹介する。なお、調査期間は2022年8月22日から2022年9月30日であり、文中の「昨年比」とは2021年と2022年の比較を指している。また、百分率表示は四捨五入のために丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合がある。

※本記事は、2023年3月25日刊行の雑誌『MarkeZine』87号掲載の内容と同一です。

マーケティング・販促予算の変化

 はじめに主だった回答者の属性を簡単に紹介しておきたい。マネジメント・ディレクター・マネージャークラスの合計が43.1%、リーダークラスが20.6%、一般社員が28.2%となっている。勤務先は事業会社が50.7%、コンサルティング・マーケティング支援が17.0%、広告会社が10.7%、ソリューションベンダーが10.0%、媒体社が3.7%、その他が7.8%。また、BtoCが34.4%、BtoBが65.6%である。

 さて、最初に年間(2022年)の広告宣伝費を見ると、最も回答の割合が高かったのは「1,000万円未満」の30.7%だった。1億円未満の企業の合計は49.1%で、1億円以上100億円未満の合計は計15.1%、100億円以上1,000億円未満の企業は1.6%、1,000億円以上は1.5%となった。「わからない」という回答が全体で32.7%にのぼる結果も興味深い。

 マーケティング・販促予算の変化については、全体として昨年に比べて「増えた」のは31.7%、「減った」のは13.7%だった。各チャネルの予算では、「自社サイト・自社ECサイト」の38.6%が最も「増えた」の割合が高く、「ソーシャルメディア(広告を除く)」が31.1%で続いた。一方、「減った」という回答が最も多かったのは「オフライン(リアル)イベント出展・運営」で19.8%と突出し、続く「ダイレクトメール(郵送メール)」が10.6%。チャネル別で2桁減はこの2つだけとなっている(図表1)

図表1 マーケティング・販促予算の変化(昨年比)(タップで画像拡大)
図表1 マーケティング・販促予算の変化(昨年比)(タップで画像拡大)

 今後3年間の予算の変化では、全体として「増える」の回答が47.9%、「減る」が7.9%と、予算増額の見通しが圧倒的に多かった。各チャネルの予算については、「増える」という回答が最も多かったのは「自社サイト・自社ECサイト」の55.0%で、「ソーシャルメディア(広告を除く)」48.7%、「広報・PR」41.1%と続いた。一方、「減る」という回答が最も多かったのは「ダイレクトメール(郵送メール)」13.7%で、続いて「オフライン(リアル)イベント出展・運営」11.2%となった。

 「自社サイト・ECサイト」への投資について、回答者が所属する企業の売上規模別にクロス集計をすると、昨年比で「増えた」の回答は「100億円以上500億円未満」46.3%、「1,000億円以上」44.8%、「1億円以上10億円未満」44.3%の順で40%を超える回答が続いた。

 また、今後3年間の投資の見通しは、全体で「増える」は55.0%、「減る」は2.9%で、投資意欲は高い。売上規模別に見ると「増える」の回答は「1億円以上10億円未満」が61.7%で最も高くなった。「減る」の回答が最も多かったのは「500億円以上1,000億円未満」の9.3%となっており、今後の予算を減少する企業は少ないと考えられる(図表2)

図表2 「自社サイト・ECサイト」予算の変化(今後3年間/売上規模別)(昨年比)(タップで画像拡大)
図表2 「自社サイト・ECサイト」予算の変化(今後3年間/売上規模別)(昨年比)(タップで画像拡大)
本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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広告予算の変化

 次に、広告種類別の予算について見てみよう。昨年に比べ予算が「増えた」という回答は「デジタル広告」の44.7%が突出しており、以下「テレビ」8.0%、「屋外・交通広告」7.8%と続く。「減った」という回答では「雑誌」の11.2%が最も多く、「新聞」10.8%、「屋外・交通広告」9.4%となった。

 2020年から2022年までの経年比較で確認すると、「新聞」は「利用していない」の回答が6.7%増えている。逆に「テレビ」は「増えた」という回答が1.7%増、「デジタル広告」は10.2%増とコロナ禍以降の傾向は継続している。「屋外・交通広告」も「増えた」という回答が3.8%から7.8%とほぼ倍増している。

デジタル広告予算の変化

 デジタル広告のみに注目すると、昨年比で予算が「増えた」という回答が最も多かったのは「検索連動型広告」の33.6%だった。さらに「動画広告」は26.9%、「ディスプレイ(静止画バナー)広告」は26.2%と、高い割合が続く。「減った」という回答が最も多かったものは「ディスプレイ(静止画バナー)広告」と「タイアップ広告・記事広告」でともに6.8%である(図表3)

図表3 デジタル広告予算の変化(昨年比)(タップで画像拡大)
図表3 デジタル広告予算の変化(昨年比)(タップで画像拡大)

 予算の増減を2020年から2022年までの経年比較で見てみると、「検索連動型広告」「ディスプレイ(静止画バナー)広告」「動画広告」は「増えた」の回答が2020年から2021年にかけて減少し、2022年に回復している。それぞれの3年間の増減は、「検索連動型広告」は32.5%から31.5%、そして33.6%へ。「ディスプレイ(静止画バナー)広告」は24.7%から24.3%、そして26.2%へ。「動画広告」は27.2%から24.8%、そして26.9%となった。「メール広告」は「増えた」が2020年の15.3%から2022年には12.6%になっており、減少傾向のようだ。

 デジタル広告の予算増加は著しいが、デジタル広告の出稿をやめているケースも少なくない。そこで本レポートでは、その理由を尋ねている。すべての広告で1位となった理由は「十分な費用対効果が得られなかったため」である。また、広告別では「動画広告」は53.6%、「検索連動型広告」は43.2%、「ディスプレイ(静止画バナー)広告」は41.9%がそれを理由としている。また、「より効果のある広告にシフトさせたため」「もともとトライアルで出向していただけであり、その後出稿していない」という理由も上位となっている(図表4)

図表4 デジタル広告の出稿をやめた理由(タップで画像拡大)
図表4 デジタル広告の出稿をやめた理由(タップで画像拡大)

 デジタル広告は効果が可視化されやすく、投資には積極的でもコストに見合う成果が得られなければ取りやめる判断も早いと言えるだろう。

 「十分な費用対効果が得られなかったため」という理由で出稿をやめた割合の多い動画広告は、一方で近年影響力が増している手法でもある。回答者が出稿している端末は、「PC」が44.2%、「スマートフォン」が42.8%、「タブレット端末」が36.4%となった。「出稿するつもりはない」という回答については、「タクシー」が74.0%、「テレビ(コネクテッドテレビ)」が66.5%、「デジタルサイネージ」が64.8%と半数を大きく超え、消極的な姿勢がうかがえる。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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マーケティング施策・ツールの予算の変化

 本レポートでは、自社のサイト、アプリ、ECサイトにおけるマーケティング施策やツールの予算が昨年と比べてどう変化したかも尋ねた。「増えた」という回答が最も多かったのは「コンテンツマーケティング(情報メディア、ブログなどによる情報発信)」の33.9%で、「動画コンテンツ配信」の28.0%、「アクセス解析・効果測定」の26.9%が続いた。

 一方、「減った」という回答で最も多かったものは「メール配信・プッシュ通知」の4.3%で、「SEO」が3.6%だった。「実施していない」という回答では「ライブ配信・ライブコマース」が51.0%で半数以上、「Web接客・チャット」が38.6%、「レコメンドエンジン」が36.7%、「動画コンテンツ配信」が31.7%となった。「ライブ配信・ライブコマース」や「Web接客・チャット」などは実施が難しかったり必要のないケースもあると思われるが、総じて予算増と維持が目立つ結果となった(図表5)

図表5 「自社サイト・アプリ・ECサイト」の予算変化(昨年比)
図表5 「自社サイト・アプリ・ECサイト」の予算変化(昨年比)

 経年比較では、「SEO」は「実施していない」が2020年は19.7%、2022年は16.9%に減っており、取り組みの増加が見て取れる。「Web接客・チャット」の「増えた」という回答は2020年が25.0%、2022年は16.9%へと減少している。「変わらない」の割合は2020年の16.3%から2022年には23.7%と増加しており、「減った」と「実施していない」には大きな変動がないため、「Web接客・チャット」はかねて取り組んできた企業の取り組みが安定化してきたと考えられる。「ライブ配信・ライブコマース」は「増えた」が年々減少しており、2020年の21.4%と比較して2022年には11.8%と半分ほどになっている。「実施していない」の回答は増加しており、2020年の44.2%から2022年には51.0%に。利用率の減少が見て取れる。

ソーシャルメディア予算の変化

 ソーシャルメディアにおけるマーケティング施策やツールの活用の予算は、昨年と比べてどう変化したのだろうか。「増えた」という回答が多かったのは「SNS広告」の32.7%と、「SNSのアカウント開設・運用」の30.3%。「SNSキャンペーン企画」は18.5%、「ソーシャルリスニング分析」は17.5%、「インフルエンサー/アンバサダー/ファンマーケティング」は17.0%と、これらも増加している。

 「SNSのアカウント開設・運用」は「実施していない」が16.6%と少なく、回答者の企業の約70%が何らかのSNSアカウントを利用しているようだ。また、全体的に「減った」という回答も少なく、最多でも「SNS広告」の5.2%である(図表6)

図表6 「ソーシャルメディア」の予算変化(昨年比)
図表6 「ソーシャルメディア」の予算変化(昨年比)

 SNSを含めどのプラットフォームを利用しているかを見てみると、「Facebook」が63.6%、「YouTube」が55.0%、「Twitter」が54.8%、「Instagram」が45.0%、「LINE」は33.2%と続いた。トレンドを生みやすい「TikTok」は12.7%、「note」は11.6%と利用率は高くない。また、話題に上がることの増えた「Pinterest」は4.8%、「Voicy」や「Spotify」はともに1.7%にとどまり、活用は本格化していない。先行者利益を得られる段階と言えるかもしれない。また、「いずれも活用していない」は16.1%で、多くの企業が何らかのプラットフォームを活用していると言える。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/10 07:00 https://markezine.jp/article/detail/41841