コロナ禍に積み重ねてきた取り組みの歯車が合い、スタートダッシュに成功
高橋 飛翔(以下、高橋):4年ぶりに声出し応援が解禁となった2023年、シーズン開幕からほぼ3万人を超える観客動員数を維持しています。この要因は何だったのでしょうか?
林 裕幸さん(以下、林):前提として、2020年により多くの観客を動員するために進めていた工事が完結し、いよいよフル稼働という状況でコロナ禍になったことがあります。2020年のシーズンはオープン戦から満員にするつもりでいましたから、日常が戻ったときに最多観客動員数を出せるだけのベースは整っていました。
加えて、球場に足を運べない、来ても声を出せない状況下でもできるイベントを多数実施し、既存ファンとのエンゲージメント向上と新規ファン獲得に努めていたことも大きかったと思います。2021年の開幕戦からは声を出さない手拍子での応援『YOKOHAMA CLAP』にオフィシャルパフォーマンスチームやマスコットのパフォーマンス強化、オンラインハマスタ、バーチャルハマスタといったデジタル施策など、たくさんの取り組みを実施しました。
林 裕幸(はやし・ひろゆき)
横浜DeNAベイスターズ 取締役 ビジネス統括本部 本部長。事業計画策定、「コミュニティボールパーク」化構想(球場改修企画)策定、マーケティング分析・顧客戦略策定などを担当。2017年より経営・IT戦略部部長を担当。2020年からビジネス全般を統括。
高橋:なるほど。キャパシティの拡大が済んでいたこと、そして既存ファン・新規ファンとの関係性を継続的に構築していたことで、声出し応援の解禁とともに動員数を確保できたわけですね。コロナ禍によって生まれた制限のある中で、できることを模索する姿勢がすばらしいと思います。
チーム強化と早めの準備で集客を加速
林:ありがとうございます。さらに当社の場合、チーム要因と早めの準備も奏功しました。
チーム要因というのは、昨シーズンをリーグ2位で終えていたこと。そして、NPB史上2人目となるサイ・ヤング賞受賞経験者のトレバー・バウアー選手の獲得です。今年こそ優勝を狙えるのではないかという期待値に、メジャートップクラスの投手の実力に対する期待値が加わって、開幕から多くのファンが球場に足を運んでくれました。
今年も2位(2023年6月時点)の好位置につけていますから、このまま優勝に向かって突き進んでほしいですね。
高橋:それは楽しみですね。もう1つの早めの準備というのはどういった内容ですか?
林:昨年から観客動員制限がなくなり、コロナ前の日常を取り戻せるのではないかという予測もあって、例年よりも早く2023年の計画策定に着手しました。昨年の夏頃には、すでに内部的な目標を掲げ、具体的な計画に落とし込んでいたんですよ。
また、声を出しての応援が解禁になることがわかってからは、ホームページやSNSで最新の応援ルールや、実際にどんな応援ができるかを具体的に伝え、解禁初日にはファンの皆さんが思い切り大声を出せる状態を作っておきました。
初日の盛り上がりを見たときは、たくさんの方がこの日を待ちわびていたことを実感しましたね。ファンの皆さんが前例のない3年間に溜め込んだ鬱屈とした思いを受け止める場として機能できたことが嬉しかったです。