クラシエが直面していた課題とは?
本セッションに登壇したのは、クラシエホールディングス(以下、クラシエ)で実際に「共想い(ともおもい)カンパニー」の運営に携わる津田氏と北原氏だ。
まず、津田氏はクラシエについて解説する。同社は2007年に設立され、前身はカネボウ。現在「トイレタリー・コスメティクス事業」と「薬品事業」「フーズ事業」の3事業を展開し、15超のブランドを持つ。代表的なブランドとしては「ナイーブ」や「いち髪」「甘栗むいちゃいました」「漢方薬の葛根湯」などがある。
では、クラシエが抱えていた課題とは何だったのか。津田氏によると、社名変更直後の認知率は28%だったが、10年後には91%にまで上昇(クラシエ調査より)。しかし、その多くはブランド経由のもの。つまり、法人としての「クラシエ」を消費者がどこまで認知しているか、有り体に言えば“クラシエファンの顔が見えない”状態が続いていたのだという。
「お客様がクラシエに対してどんな期待を持っているのか、また当社がその期待にどの程度応えられているのかが、明確につかめていなかったのです」(津田氏)
社外の人たちとの“共創”を目指す
そこで、クラシエファンの顔、その解像度を上げる施策として始まったのが「価値共創プラットフォーム」だ。そのコンセプトは下図に象徴されている。
この「くらしえ港」が目指すのは「社内外の様々な人が入り混ざり、交わりながら、新しいものを生み出していく」こと。その上で、実現のために必要な三つの機能もこの図には描かれている。
一つ目の機能は、ファンコミュニティ活動「共想いカンパニー」だ。これは、クラシエファンの可視化と、彼らと社員が交わる場としての役割を持つ。二つ目の機能「くらしの夢中観測所」では、ファンだけでなく生活者全体が夢中になっているモノ・コトを解き明かす、いわばシンクタンクだ。そして、三つ目の機能「KuracieX」。ここでは、社外のビジネスパートナーと連携し、新規事業の開発など新たな可能性にチャレンジする場だという。
「我々が目指すのは、この『くらしえ港』のように、ファンや社外のパートナーとの共創を通じてクラシエの新たな未来を形作っていくことです。その第一歩である『共想いカンパニー』は、クラシエの理念に共感してくださっている熱心なファンの方々と、クラシエ社員が一体となって取り組むコミュニティ活動です」(津田氏)