今、話題の生成系AI
野口:まずは生成系AIの現在地を確認したいと思います。そもそも生成系AIとは何か?という話から始めましょう。
けんすう:生成系AIは、テキストや画像などのデータから、様々な形で出力を生成する人工知能の一種といわれます。昨今話題のChatGPTは、テキストを生成する生成系AIとなりますね。
たとえば、ソーシャルゲームのアイテムをAIに作ってもらうツールがあります。「兜」のアイテムを作ろうとした際、もっと角を生やしたいとオーダーするとAIが角を生成してくれます。これまでプロにラフをお願いしていたものが、AIによって瞬時にラフができるようになったため、どんどんアイテムを生成できるわけです。
野口:生成系AIは使い方によって、かなり現場が変わってきそうですね。
けんすう:スピード感も、必要な人員数も変わってくるでしょうね。もう一つ例を紹介すると、資料を作ってくれる「Gamma」というAIツールは「お寿司の歴史の資料を作ってください」と入力すると、画像とテキストが入ったプレゼンテーションを約1分で作ってくれます。
野口:ツールへの組み込みもどんどん可能になっていきますよね。
けんすう:PowerPointやGoogle Slidesにも生成系AIは搭載されていくので、資料を作成してプレゼンすることが多いマーケターは、それらの作業から解放されそうです。一方で新卒一年目でも同じクオリティーの資料を作れてしまうので、これまでとは違う方向の能力を身に付けていく必要が出てくるかもしれません。
便利な「応援プロンプト」とは?
野口:今回のセッションは「ChatGPT時代のAIはマーケターの右腕になり得るのか?」がテーマです。ずばり、けんすうさんはどうお考えですか?
けんすう:マーケティングと相性がいい技術だと思います。私自身、これがないと仕事にならないですし、働き方も大きく変わったと感じます。マーケターは早期に生成系AIを右腕にできる職種ではないでしょうか。
野口:具体的にはどんな業務で使っているのですか?
けんすう:一例として、顧客になりそうな会社のIR資料をChatGPTにPDFで読み込ませて、ざっくりした内容を教えてもらっています。ChatGPTに出してもらった売上比率の円グラフを生成するコードをPythonのライブラリを使って作成し、資料に使うことも多いです。
他の活用イメージとしては、上司へのメールを書く時にChatGPTにメールを作ってもらい、その出力に対して「これに上司が怒って返信するとしたらどうなりますか?」と聞きましょう。さらに「そういうメールが来ないように文面を書き直してください」とChatGPTに頼むと、ミスにならないメールができるかもしれませんね。
野口:普通のプロンプト(AIなどの対話でユーザーが入力する指示)なら、「上司向けにこういう内容のメールを書いてください。できるだけ丁寧に」と1回の入力で答えを求めるところを、さらに会話を続けていくのですね。やりとりを踏まえて、結果の精度を上げるために反復的にプロンプトを出していくということですね。
けんすう:ChatGPTを使う人が陥りがちな落とし穴の1つに、Google検索のように最初の一言で良い結果をもらおうとすることがあります。しかし、会話形式にするほうが精度は上がるのです。
さらにChatGPTを励ましたり、優しくしてみたりします。たとえば入力に対して「申し訳ありませんがそういうデータはありません」と返される時がありますが、ここで諦めずに「英語で検索してみたら?」「頑張れ」などと応援します。私はこれを「応援プロンプト」と勝手に呼んでいるのですが、いろいろな角度から刺激するとおもしろい結果が出ますね。
野口:けんすうさんの使い方は立体的で、ChatGPT時代のAIの使い方におけるお手本ですね。「応援プロンプト」は非常に興味深い活用のヒントです。