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デジマ人材育成 5つの落とし穴と回避術

時代に合わせた新たなOJT 自走できるデジマ人材を育む三つのポイント

8割がアウトプット 「自ら考えさせるOJT」の重要性

 元々OJTには先述のような問題を抱えていたものの、今まではその弊害と向き合う機会がありませんでした。

 しかし、リモートワークの定着でリアル前提のOJTは物理的に難しくなり、OJTが抱える問題や弊害と向き合うきっかけが生まれました。だからこそ、これを「従来のOJTに頼りすぎない人材育成へ転換するチャンス」と捉え、オンライン前提での育成法を考えるべきだと感じます。

 ここでは、私が実際にリモートワーク下で行ってきた方法を基に、新たな育成法に必要な三つのポイントを紹介します。

 一つ目は「知識をそのまま伝えるインプットと自身で答えを出すアウトプットの比率を1:4にする」。つまり、「若手が自ら主体的に考える時間」を意識的に取り入れることです。その結果、彼らは「自分に任されたことへの期待」を感じるようになり、多くの物ごとを自分ごととして捉えて考えるようになりました。

 ただし、「アウトプットの時間を増やす=放置する」ではないので注意が必要です。私の場合、業務の一環として必ず毎週1回は課題の提出を求めていました。たとえば、過去の自社ブランドの施策とその結果を考察するレポートや、競合他社の特筆すべきマーケティング事例考察、またターゲットとなる生活者についてのインサイト情報の考察、新たなマーケティングテクノロジーとその効果についてなど、自分の言葉でドキュメント化するトレーニングを行い、それに対してフィードバックを与えていたのです。

 このアウトプット重視型のOJTに移行してから、若手社員の分析力・言語化能力が大幅に向上しました。「自ら考え、自ら行動できる自走型人材」の基礎固めとなったのです。

 加えて、私は部門間交流として、他部門の若手社員とトレーナーを集めて定例会を開き、メンバーが作成したアウトプットを発表する場を設けました。

 これにより、他部門のメンバーの発表内容や異なる視点のアドバイスから多くの学びを得ることができ、学んだことを自部署でも共有してもらうことで、チーム内で学んだことが循環するようになりました。この学びの循環も非常に大切です。

マネージャーに求められる「メンバーとの信頼関係」

 新たな育成法の二つ目のポイントは、「メンバーとの信頼関係構築」です。

 OJTを受けるメンバーは、自身のトレーナーが担当する業務をできるようになるだけではいけません。「チームのために」の意識を持って業務を行えるようになることが求められます。その意識が芽生えるためにはメンバーとの信頼関係が重要であり、マネージャーの行動がその要となります。

 たとえば、「メンバーのことを気にかけ、必要な時に声をかける」ことが重要です。ある食品メーカーのコミュニケーション戦略部では、こうした声かけを「先読みサポート」と呼び、マネージャーが実践していました。具体的には、翌年のマーケティングプランやキャンペーンのコンセプトを上長にプレゼンするといった重要なイベントの2週間程度前から、メンバーが困っていることや関係各所からの協力の有無などを聞いていました。

 この先読みサポートがもたらす効果は絶大で、メンバーは自分たちがマネージャーに見守られていると感じ、安心感を持ちながら業務に集中することができました。

 ここで重要なポイントは、「いつも声をかけていたわけではない」点にあります。必要だと思う時に手を差し伸べることで、自律性と心理的安定性の両方が担保できるためです。

 これに加えてマネージャーに必要な行動が、プロジェクトで問題が発生した際に、「前面に立って指揮をとる」ことです。問題発生時のマネージャーの所作はチーム全員が見ています。その際、責任感のある適切な行動ができれば、チームメンバーに安心感と信頼を与えることにつながり、チームメンバーの士気も上がります。

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「自走する人材」を育てる環境としての仕組み作り

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この記事の著者

髙岡 直人(タカオカ ナオト)

株式会社Growthing 代表取締役

29年間電通グループのプロモーション専業会社である株式会社電通テック(現:電通プロモーションプラス)で統合プロモーションのプランニングから実装まで数百件の案件に従事。大手メーカーのオウンドメディア立ち上げやPDCAサイクルの構築などの経験があり、前職での実績として、デジタルマーケティング...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/08 08:30 https://markezine.jp/article/detail/44193

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