変化が求められるOJT型の研修
第二回では、脱「学んで満足症候群」デジマ人材の育成に欠かせない“小さな成功体験”の促し方についてお話しました。
今回は、コロナ禍でテレワーク化が進んだことで思うように研修ができず「自走人材が育たない」という問題が噴出している“OJT”の問題点と「自走人材の育成術」についてお話していきます。
まずOJT(On the Job Training)とは、新人のトレーニングのなかでも座学のようなものと異なり、先輩社員や上司などから実際の業務を通じて必要な知識や技能を指導する育成法のことです。これは「業務内容や部署での役割を直接教えることで、即戦力の人材を育てる」という狙いがありました。
たとえば、企業のマーケティング担当部署の場合、配属された人材に求められるのは、大きく分けて次の三つになります。
- 担当ブランドについて:「商品知識とブランド戦略の理解」
- 部署間のコミュニケーション:「チームワークと調整能力」
- パートナーディレクションスキル:「外部協力者との連携能力」
これらのスキルは、マニュアル化しづらいという課題があったため、実務経験を積む中で身に着けてもらうというOJTの仕組みが適していました。
しかし、コロナ禍の流行によりリモートワークが普及したことで、OJTは物理的に難しくなってしまいました。コロナ禍が収束した2023年以降もリモートワークという働き方が活用されていくことは予測されます。つまり、現在の労働環境に合わせた育成モデルが必要になったのです。
OJTに問題が生じてしまうシステムとしての問題点
コロナ禍で、OJTの難しさに直面した企業も多いですが、そもそも従来型のOJTには限界がありました。理由としては以下の二つが挙げられます。
- トレーナー側のスキルや経験の差から、教育内容や方法に個人差が生まれてしまうこと
- 優秀なトレーナーに育成の業務が集中しがちになること
これらは「人」起因で起こる問題ですが、他にも、社内の組織構造の不備によって問題が起こる場合もあります。ここでは、実際に見られた失敗事例を紹介します。
事例1.人事ローテーションが早くOJTの型が作れない組織
一般的に、マーケティング担当者は一人前の仕事ができるまでに5~10年はかかると言われています。それにも関わらず、多くの人が3~5年で異動してしまうケースはよく見られます。その結果、「どんな人材になってほしいか」というゴール設定もないままにOJTの指導者側になってしまうことがあり、OJTの仕組みを作ることもできません。そうすると、スキルも経験も中途半端な人材育成体制になってしまうのです。
事例2.現場に降りてこないマネージャーの弊害
本来OJTは、マネージャーが必要な研修内容や行った研修内容のフィードバック(以下、FB)をトレーナーに指示し、それをトレーナーが若手社員に行うという構図であるべきです。しかし、マネージャーが経営層とばかり向き合ってしまい、現場のマーケティングチームの実務について理解を示さないといったケースも見受けられます。
当然、OJTの内容は現場任せになってしまい、なんとなく決められた内容をこなすようになってしまうため、若手社員の成長は難しいでしょう。