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デザインで行政を良くしたい JAPAN+Dコアメンバー/経産省・平山さんの奮闘から探る、企業とデザインの関係

 経済産業省に「JAPAN+D」というプロジェクトがあることをご存じだろうか。20代、30代の職員有志を中心としたチームで、経済産業省全体へのデザインアプローチの普及を目指している。今回話を聞いたのは、そのボードメンバーとして当初からプロジェクトに関わる経済産業省 九州産業局の平山由佳さん。2018年に同局でデザイン担当になるまでまったくデザインとは接点がなかった平山さんは、なぜ行政の課題をデザインで解決しようと思ったのか。デザイナーではない立場で深く関わってきたからこそ実感するデザインの価値とは――。平山さんの視点や今までの取り組みには、企業とデザインのより良い関係のヒントが詰まっていた。

デザインは「誰かを思いやる気持ち」を大切にするもの

――まずは平山さんのご経歴を教えてください。

検察官を目指し大学は法学部を選びましたが、検察官は法科大学院を出なければ司法試験受験資格がなく、社会に出るタイミングも遅くなることから、いったん検察官の道は諦めました。検察官ではありませんが、国家公務員であれば検察庁や裁判所に就職することができ、検察官になりたかった理由である、「悔しい想いをしたことがある人を助けたい」という気持ちが叶うのではないかと思い、国家公務員の道を選びました。

あまり知られていないかと思うのですが、国家公務員は、採用試験を受けたあとは最終合格者の名前が名簿に掲載されるのみで、その名簿をみて官公庁が合格者を指名し採用する仕組みになっています。もちろん名前を見ただけではその人がどんな方かを判断できないため、一次試験に合格したら、合格者は各省庁に採用してほしい旨を自らアピールしにいく、いわゆる就職活動のような「官庁訪問」というプロセスがあります。

一方、官庁側も一次試験合格者に各官庁の取り組みなどをアピールする機会「国家公務員官庁合同説明会」があります。そこに参加した際、当初目指していた検察庁のブースを訪れたのですが、少し時間が空いたため経済産業省もちらっとのぞいたところ、とてもおもしろかったんです。検察庁や裁判所は「検察官」「裁判官」が主役で、決定権もそこにあるのですが、経産省は予算の執行権などにおいて担当職員の裁量幅が非常に大きく、また新たな政策立案に挑戦できる風土があると感じました。働く際の男女差も感じなかった点などにも魅力を感じ、官庁訪問を機に志望先を経済産業省に変更しました。

経済産業省は1~2年で部署が変わります。着任した初日から相手からはその分野のプロとして見られる、と私は認識しています。そのため、部署異動のたびに、いつでもその部署の説明ができるよう配属先の分野に関わる勉強をし、新しいことを学ばせてもらいました。なかば強制的にいつでも学び続けられる環境に身を置けることは、非常にありがたいと感じています。

正直に言えば、過去に転職を考えたこともありました。しかし誰かが働きやすくなるように制度を設計したり、環境を整えたりすることは行政にしかできない。そのため、色々な活動をしながらも、行政に軸足を置きたいと思っています。現在は半導体産業振興を担当しており、ダイナミックに変化する産業の中に身を置かせてもらえることはとても楽しいです。

経済産業省 九州経済産業局 地域経済部 情報政策課 調査官/本省 大臣官房 業務改革課 併任 RIETIコンサルティングフェロー 平山由佳さん
経済産業省 九州経済産業局 地域経済部 情報政策課 調査官/本省 大臣官房 業務改革課 併任 RIETIコンサルティングフェロー 平山由佳さん

――そんな平山さんが、最初にデザインと接点をもったきっかけは何だったのでしょうか。

異動により、2018年にデザイン政策係長という役職についたことです。そこでデザインについて学んだ際、デザインは外形を整えるのではなく、人間の発する思いを形にするプロセスや、形にしてみたものを立ち止まって考え直してみたり、届けたつもりの思いがしっかり届いているかを整理したりすることなのだと理解しました。経営に当てはめると、「これはわが社の技術を詰め込んだ自慢の商品だから絶対に売れる」と企業さん側は思っていても、これだけ世の中に商品が溢れる今は、手に取ってもらうまでが大変だったりしますよね。そうした顧客とのコミュニケーションや、商品・サービスづくりを相手の立場に立って考え、試行錯誤することがデザインだと考えています。

私が異動した2018年当時は、IDEOが提唱していた「デザインシンキング」が日本でもじわじわと広がっていた時期だったと記憶しています。デザインシンキングは、デザイナーの思考過程をなぞることができる型ですが、それを実際に行動に落とし込むことは自分自身の考えかたや態度の変革が重要です。デザインを読み解いていくと、ただ純粋に、企業にも、日々生活をしている方々にとっても「誰かのために何かをしたい」といった思いやりを通じて、「三方よし」な状態を目指すことなのではないかと気づきました。そこで、そういったデザインの考えかたを経営に取り入れるために、「そもそも私たちの会社は何のためにあるのか」「誰を喜ばせたいのか」「ひとりよがりの課題設計になっていないのか」を考え直すためのプロジェクトを立ち上げ。そういった考えをもったデザイナーと企業をつなぐプラットフォームを運営するような取り組みを、地域のデザイナーの方々の協力を得て3年ほど行っていました。

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2024/01/16 08:15 https://markezine.jp/article/detail/44543

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