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第106号(2024年10月号)
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MarkeZine Day 2024 Spring(AD)

“CMOの右腕”、マーケティングのビジネスへの貢献度を最大化するMOpsの役割と組織体制を解説!

 欧米企業の8割が採用するマーケティングオペレーション(MOps)は、マーケティングチームと施策の効率性、再現性を上げる鍵となっている。MarkeZine Day 2024 Springでは、ゼロワングロースの廣崎 依久氏が登壇。MOpsを通じてデータを活用し、マーケティング戦術をデータドリブンに最適化するための手法や、継続的な改善を実現するためのベストプラクティスとフレームワークを、最新の欧米情報を交えて紹介した。

マーケティング組織の本質的な問題は戦術設計にあり

 マーケティングの収益への貢献度が可視化できない――いまだ多くのマーケターが抱えるこの課題は、ほとんどの欧米企業のマーケティング組織においては既に過去のものとなっているという。

 自身も米国でマーケターを務めた経験を持ち、現地の情報に精通するゼロワングロースの廣崎氏は「日本と欧米の違いはマーケティングオペレーション(以下、MOps)体制が整っているかどうかにある」と語る。

ゼロワングロース株式会社 Director, Growth Strategy 廣崎 依久氏
ゼロワングロース株式会社 Director, Growth Strategy 廣崎 依久氏

 MOpsとは、一言で表わすと「マーケティングチーム内のツール、キャンペーン、データプロセス管理を通してマーケティングが収益にもたらす影響を最大化するチームもしくは役割」のことだ。

 欧米ではMOpsの体制が整っている企業が多く、米国では「専任のMOpsがいる」と答えた企業は8割にも上るという。一方、日本では徐々にその重要性が理解されつつあるが、欧米にはまだ及ばない状況だ。2023年にパワー・インタラクティブ社が行った調査によると、日本で「社内にMOpsの業務を担う体制や組織がある」と回答した企業は9%だったという。

 一方で、日本と欧米を比較して、マーケティング施策の内容や使っているツールに大差はないと廣崎氏は語る。では大きな違いは何か。

 「戦術設計にかけるエネルギーや時間が大きく異なります」(廣崎氏)

 多くの日本企業はマーケティング活動を行う際、最初に戦略を考えた後に一足飛びで実行へと進めているのではないだろうか。しかし、MOpsの体制が整っている欧米企業では、実行に移す前に予算や人員配置、チャネル計画などの戦術設計を緻密に、時間をかけて行っている。また、それらの意思決定に必要なデータもMOpsがしっかり活用しているのだという。

専門性を追求するマーケティング組織体制

 MOpsの体制を整える際には、実務のプロフェッショナルであるフィールドマーケターと、管理のプロフェッショナルであるMOpsのチームの役割をしっかりと分けることが理想的だ。

 欧米では10年程前からこのようなチーム体制で運用されていることが多いという。少人数でリソースが限られているスタートアップ企業などは別として、多くの場合、MOpsとフィールドマーケターは兼任することなく、それぞれの専門性を磨くことに専念している。結果的にマーケティング全体の質の向上も期待できるのだ。

理想的な組織体制
理想的な組織体制

 「生産工場の生産ラインで例えるならば、フィールドマーケターが実際に仕入れてきた材料の加工や組み立てを行い後工程(セールス)に渡していく一方、MOpsはそれらを可能にする機械を選定したり、油を差したりネジを巻いたりメンテナンスすることで、全体プロセスがスムーズに進むよう管理しているといったイメージです」(廣崎氏)

MOpsの役割を担うべき人材の特徴

 多くの欧米企業では、フィールドマーケターのチームとMOpsを分けていることはわかった。しかし、わざわざ分ける必要はあるのだろうか?と疑問を抱く人もいるかもしれない。この問いに対し、廣崎氏は「できる限り分ける必要がある」と語る。

 なぜなら、「マーケティングの収益への貢献度の可視化」「緻密な戦術設計」の実現には、テクニカルな知見が求められるためだ。

 テクノロジーの進化により、マーケティングテクノロジーツールは増加しており、2011年には150しかなかったが、2023年には11,038ものツールがあるといわれている。同時に各企業が使うマーケティングテクノロジーツールの数も増えており、米国ガートナー社のデータによると、デジタルIQが高いといわれているリーダー企業では、平均して64個のマーケティングテクノロジーツールを使っているそうだ。

 マーケティングテクノロジーツールは今後も数・種類共に増えていくだろう。その分、これらを使いこなすスキルも高度化・複雑化するはずだ。このような状況で、既存のIT部門にマーケティングテクノロジーツールの導入や運用までサポートしてもらうことは、現実的に難しい。そのため、自社に必要なツールを選び、使いこなしていくためには、MOpsの役割を担う人材にもテクニカルな知見が求められるようになる。

MOpsはマーケティングとIT部門のブリッジ
MOpsはマーケティングとIT部門のブリッジ

 「高度なコーディング技術が求められるわけではありませんが、各データやツールの特徴を把握し、マーケティングだけでなく、IT領域のことも理解できる、エンジニアと対等に会話できる人材が重宝されるようになっています」(廣崎氏)

 そのため、フィールドマーケターとの兼任ではなく、MOpsに専念する環境が理想的になるわけだ。

MOpsが実現するマーケティングマネジメント

 改めてMOpsが実現するマーケティングマネジメントを整理すると、「レベニュープロセスマネジメント」と「キャンペーンマネジメント」、そして「生産性のマネジメント」の3つに分けられる。これらすべてが揃って初めてマーケティングチーム全体のROIを高めることが可能になる。

 「欧米のマーケティング組織では、MOpsはCMOの右腕といわれるほど重要なポジションです」と廣崎氏。

 たとえば予算の計画もMOpsとCMOが二人三脚で考えている。このようにMOpsは収益に対するマーケティングの効果や生産性を可視化する役割を担っている。

「個別最適化から全体最適化へ」RevOpsの役割

 MOpsの体制を整え、マーケティングパフォーマンスを可視化できるようになった場合、次に気になり始めるのが部門間の溝ではないだろうか。各部門で個別最適化され過ぎているケースもあるだろう。そこで最近欧米でも話題になっているのがレベニューオペレーション(RevOps)だという。

 RevOpsとは、戦略的にマーケティング、営業、カスタマーサクセスを統合し、データプロセス管理を通してレベニューの成長をサポートするチームもしくは役割を指す。

 各部門で最適化することは大切であるものの、それはあくまで一連の流れの一部を担っているだけに過ぎないため、最終的には、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスを一気通貫でつなげて見ていく必要がある、つまり「個別最適化から全体最適化へ」という考え方から成っている。

 米国でも「RevOpsのチーム、もしくは部門があると答えた企業は67.5%」となっており、MOpsよりは低いものの、まさにこれから注目される取り組みと考えられるだろう。

レベニュー組織体制がAI活用の成功の鍵となる

 「レベニュー組織体制は今後活用の広がるAIについても重要な役割を担っています」と廣崎氏は語る。

 テクノロジーの進化とともにテクノロジーの民主化が広がり、特に生成AIブームの到来でマーケターが現場でAIを活用することも多くなった。

 この流れはポジティブなものと捉えられる一方、部門ごとに活用するAIツールが異なる場合、学習内容のサイロ化や個別最適化が過度に進んでしまうと考えられる。結果として、収益にどう貢献したかや学習内容が組織全体に適用できるかかがわからなくなってしまうため、廣崎氏は「AIを効果的に活用するための組織体制やテクノロジー管理体制が整っていなければ、近い将来にカオスになってしまうのではないか」と警鐘を鳴らす。

 欧米においては、これまでMAやSFAにセールスやマーケティングがデータを集約・管理していたものを、レベニュー組織全体でデータウェアハウスやCDPなどを活用することでレベニューに関わるデータを集約し、その上にAIやBIツールをつなげる企業が増えているという。

 「欧米の最前線では、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスのプロセスの最適化を行うというビジョンのもと、このような整理が進められています」(廣崎氏)

 最後に廣崎氏は日本における体制の進め方について語り、講演を終えた。

 「マーケティングを担当する皆さんの場合はまずMOpsの体制を整えることから始め、その効果を示すことで順にセールス、カスタマーサクセスとレベニュー組織の立ち上げにつなげていただければと思います。本日お伝えした内容が、マーケターの皆様の参考になれば幸いです」(廣崎氏)

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ゼロワングロース株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/20 16:22 https://markezine.jp/article/detail/45121