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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?

愛され続ける商品を実現する「ベネフィット設計」の方法とは

本当の競合商品は何か?「カテゴリー市場」と「ベネフィット市場」

 ここまでヒット商品の三原則を満たしたベネフィット設計の方法について解説してきましたが、ベネフィット設計ができると愛され続けるための「本当の競合商品は何か?」「適した売り場はどこか?」を定義することが可能になります。

 通常「競合商品」というと、商品の「機能・性能」から導かれるものを指すことが多いと思います。料理に味付けをする商品であれば「他社製の調味料」を競合と捉えるでしょうし、販路は「スーパーの調味料売り場」などがすぐに思い当たる場所でしょう。

 この「機能・性能」のみから導かれる市場を「カテゴリー市場」、その市場における競合商品を「カテゴリー競合」と呼びます。一方、「ベネフィット」から導かれる市場を「ベネフィット市場」、その市場における競合商品を「ベネフィット競合」と呼びます。

 たとえば「アウトドアスパイスほりにし」は、アウトドアファンをターゲットに、企画開発者ご本人の想いとともに「キャンプにたくさんの調味料を持っていく煩わしさからの解放」というベネフィットを定義しました。

 「キャンプの荷物を減らせるグッズ」としてアウトドアファンの間で大ヒットした事象を見ても、「調味料市場(カテゴリー市場)」ではなく「アウトドア市場(ベネフィット市場)」で「キャンプグッズ」を真の競合(ベネフィット競合)としていることがうかがえます。

 初期の売り場も「アウトドアショップ」に限定し「ベネフィット市場」での販路展開を行っていることもユニークです。このように「アウトドアスパイスほりにし」は、ベネフィットに基づく一貫したマーケティング展開がなされることで、調味料としては破格の値段でも大ヒットしています。

図3:「カテゴリー市場」と「ベネフィット市場」の違い
図3:「カテゴリー市場」と「ベネフィット市場」の違い

 ベネフィットストラテジーは「競合商品との比較」から考え始めることを前述しましたが、この競合商品とは「カテゴリー競合」のことを指します。カテゴリー競合と差別化できる特徴を定め、ベネフィットを導くことで、真の競合であるベネフィット競合が見えてくるのです。

 また、ベネフィット設計後の検証のファーストステップとして、商品にベネフィット競合に対する優位性があるかを確認することも、重要なポイントです。

「欲しい」と「買う」は違う。設計したベネフィットの検証法

 最後に、設計した「ベネフィット」で顧客の購入意向が得られるかを検証する手法について解説します。

 ここで「アウトドアスパイスほりにし」のベネフィットストラテジーを見ていただきましょう。

図4:「アウトドアスパイスほりにし」のベネフィットストラテジー
図4:「アウトドアスパイスほりにし」のベネフィットストラテジー

 「体験価値(ベネフィット)」を導くには、「便益」の設計後に「企画・開発に込められたビジョンや想いの言語化」というステップを挟みます。「便益」に「ストーリー」という“スパイス”を加え「体験価値(ベネフィット)」へと昇華させることで、実際に商品を購入してくれた顧客は「応援」の気持ちが芽生えやすくなります。

 一方、「応援」される前提として、まずはその商品を手に取ってもらい「ヒット商品の入り口」に立たなければなりません。そのため、設計した「体験価値(ベネフィット)」でターゲットが購入意向を抱くかを商品販売前の段階で検証しておくことが非常に重要になってくるのです。

 ここで注意すべき点が1つあります。過去Makuakeでは数多くの新製品・新サービスの誕生をサポートしてきましたが、発売前のアンケート調査で「欲しい」と回答した人が多数を占める商品でも、発売後「購入」につながらなかった事例を数多く見てきました。

 「欲しい」にはお金を払う責任がともないませんが、「購入」にはその責任がともないます。「欲しい」と答えた人に「ではこの価格で実際に購入していただけますか?」と聞くと渋い表情をされ曖昧な回答をいただくことはよくあります。「欲しい」と「買う」の間には大きな谷が存在するのです。

 そのため、愛され続ける商品を実現するためには、ターゲットに対して「この『ベネフィット』と『価格』で実際に買うか」を問い、設計したベネフィットの確からしさを検証する必要があります。そこで大事なのがN1に向き合うということです。

 過去Makuakeで誕生した商品では、発売前に「欲しい」という人を100人見つけられている商品よりも「買う」という人を明確に1人見つけられている商品のほうがヒットしやすい傾向にあります。私は商品を発売する前に「買う」と約束してくれる人を必ず1人見つけられるまでベネフィットのブラッシュアップを続けます。

 これがN1に向き合うということです。これを我々はN1(エヌワン)インタビューという手法を用いながら検証します。

次のページ
「買う」を起点にベネフィットを検証する「N1インタビュー」(前編)

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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?連載記事一覧
この記事の著者

北原 成憲(キタハラ マサノリ)

株式会社マクアケ 専門性執行役員/R&Dプロデューサー

 サイバーエージェントを経て、2015年にマクアケへ入社。「Makuake Incubation Studio(MIS)」を立ち上げ、企業の研究開発(R&D)を起点にした新商品プロデュースや、新規事業創出のための新たな仕組みづくりに従事。手...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/45214

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