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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?

愛され続ける商品を実現する「ベネフィット設計」の方法とは

「買う」を起点にベネフィットを検証する「N1インタビュー」(前編)

 N1インタビューとは、ターゲット像と思われるインタビュー対象者に「買う・買わない」に向き合った商品のデプスインタビューを行う手法です。

 N1インタビューは前半と後半に分けられます。前半は、商品の説明をする前にターゲットの欲求を探るパート。後半は商品の説明を行い「この『ベネフィット』と『価格』で実際に買うか」を問うパートです。

 前半では、インタビュー対象者がターゲット像に合致し、商品の購入につながる欲求を持っているかを誘導尋問せずに聞いていきます。この「欲求を誘導尋問せずに聞き出す」ということが非常に重要です。「こんな欲求ありませんか?」と誘導してしまうとインタビュー対象者の多くが話を合わせてしまい正確な検証になりません。

 さて、欲求の探り方ですが、具体的には対象となる商品が活躍するシーンを想像し、そのシーンから連想されるワードを3つほど聞きます。たとえば「アウトドアスパイスほりにし」であれば、「『キャンプ』と聞いて連想するワードを3つ教えてください」といった具合です。

 そして、なぜそのワードが連想されたのか、ワードごとに理由を具体的なエピソードとセットでヒアリングします。そうすると、たとえばこんな回答が来ます。

 「キャンプで連想したワードの1つは『車』です。いつもキャンプには車で行くのですが、前の晩から荷造りをして車に積み込むんです。でも、積める量には限界があって、この荷造りと積み込み作業がとても大変で。」

 一見、調味料には関係のない話のように見えますが、「キャンプの荷物に困っている」という悩みが誘導尋問せずに浮き彫りになりました。「アウトドアスパイスほりにし」の「キャンプにたくさんの調味料を持っていく煩わしさからの解放」というベネフィットはこの悩みの解決に貢献できるかもしれません。

 また、連想ワードを聞く質問の他に「現状の『キャンプ』に点数をつけるとしたら何点ですか?」という聞き方も有効です。満点をつける人はほとんどいませんから、「なぜその点数なのですか? マイナス◯◯点した理由は?」と聞けば、これも誘導尋問せずに現状の困りごとや欲求を確認することができます。

「買う」を起点にベネフィットを検証する「N1インタビュー」(後編)

 インタビュー対象者の欲求内容が確認できたら、実際に商品の説明を行い「買うか、買わないか」を単刀直入に聞きます。商品を説明する際は、設計したベネフィットと販売予定価格を丁寧に説明してください。使えそうであれば、インタビュー前半で聞けたエピソードの話を絡めながらベネフィットを説明してもいいでしょう。

 実際にインタビューの様子を再現してみます。

 「今回の商品は、『(商品の概要)』ということができる商品です。『(差別化できる特徴の説明)』という独自の機能を備えていて、『(商品のメリットの説明)』ができることから『(ターゲット像の説明)』の方々に『(便益の説明)』という価値を提供します」

 「我々は、『(ビジョンや想いの説明)』という想いを持っており、その想いを実現するためにこの商品を開発しました。そんな想いを重ねて『(体験価値=ベネフィットの説明)』を実現したいと考えています。価格は『(販売予定価格の説明)』を予定しています。販売開始した際は、購入していただけますでしょうか?」

 より具体的にイメージしていただくために、「アウトドアスパイスほりにし」をケースにした場合も再現してみます。次の説明をご覧ください。

「今回の商品は、『キャンプやアウトドアの際に1つのスパイスでどんな食材にも合うことを実現した万能スパイス』です」

「『20種類以上のスパイスや調味料をスペシャルブレンドする』という独自の配合をしていて、『どんな食材にもマッチする味付け』ができることから『都市部から車でキャンプに向かうアウトドアファン』の方々に『これ一本でアウトドアのどんな料理も美味しくする』という価値を提供します」

「企画開発者の堀西は、『自身がキャンプやアウトドアを行う際に色々なスパイスや調味料を持参していて、そういった煩わしさを無くしたい』という想いを持っており、その想いを実現するためにこの商品を開発しました」

「そんな想いを重ねて『キャンプにたくさんの調味料を持っていく煩わしさからの解放』を実現したいと考えています。価格は『一般販売価格で800円台』を予定しています。販売開始した際は、購入していただけますでしょうか?」

 自分が情熱を注ぐ商品について、ターゲットに「買うか、買わないか」を聞くことは、思った以上に勇気がいるものです。しかし、不安や自信のなさに押しつぶされて「欲しいか、欲しくないか」を聞くことに逃げてしまってはベネフィットの検証になりません。

 たとえインタビュー段階でネガティブな回答がきても、それをヒントにベネフィットをブラッシュアップし、最終的に商品をヒットさせてしまえば失敗ではありません。商品を発売する前に「買う」と約束してくれる人を見つけることができれば、ヒットの確率は大きく上がります。ぜひ勇気を出してN1インタビューに挑戦していただけたらと思います。

 今回はベネフィット設計の具体的なポイントやプロセスについて解説しました。次回は、ベネフィット設計を行い成功した具体事例について紹介します。

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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?連載記事一覧
この記事の著者

北原 成憲(キタハラ マサノリ)

株式会社マクアケ 専門性執行役員/R&Dプロデューサー

 サイバーエージェントを経て、2015年にマクアケへ入社。「Makuake Incubation Studio(MIS)」を立ち上げ、企業の研究開発(R&D)を起点にした新商品プロデュースや、新規事業創出のための新たな仕組みづくりに従事。手...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/45214

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