米国時間の2024年3月26日(火)、ラスベガスでデジタルマーケティングカンファレンス「Adobe Summit 2024」が開幕した。
今回のテーマは「生成AI時代の顧客体験管理」だ。オープニングのキーノートには、アドビの会長兼CEOを務めるシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇した。
同氏はChatGPTやNIM(※)などを引き合いに出しながら、この1年を「驚くべき変革の年」と表現。「新しいテクノロジーが人々の想像力を掻き立てた」と話す。
※NVIDIAが発表した、生成AIアプリケーションを開発するためのマイクロサービス
新しいテクノロジーとは、言わずもがな生成AIを指す。かく言うアドビも、2023年9月より独自の生成AIモデル「Adobe Firefly」の一般提供を開始。新しいテクノロジーを自社のソリューション群へ積極的に搭載しているが、今回のサミットで強調されたのは“新規性”から“実用性”へのシフトだ。
2時間にわたる講演では、数多くのアップデートや新サービスのリリースが発表された。MarkeZineが注目したトピックスは次のとおり。
対話型AIの新機能
近日搭載予定の新機能として紹介されたのが「Adobe Experience Platform AI Assistant」だ。これは「Adobe Real-Time Customer Data Platform」や「Adobe Journey Optimizer」「Adobe Customer Journey Analytics」など、顧客体験の管理に特化したアドビの各種アプリケーションに搭載される。
シンプルな対話型のインターフェースで、ジャーニーの自動生成やキャンペーン結果の予想などを実行。対話型ゆえの親しみやすさにより、より幅広い関係者がデータにアクセスする状態、言わば「データ活用の民主化」を促す期待がある。
Adobe GenStudioのAI強化
2023年秋に公開されたAdobe GenStudio。「Adobe Creative Cloud」や「Adobe Experience Cloud」などの製品を統合したコンテンツ制作支援ソリューションとして知られている。
このGenStudioの中核を成す生成AIテクノロジー・Adobe Fireflyに、新しく「Adobe Firefly Services(以下、Firefly Services)」「Custom Models」という二つの機能が追加された。
Firefly Servicesを使うと、企業は20以上のAPIやサービスにアクセス可能となる。これにより、チャネル別のサイズ変更や地域別のローカライズ、対象者別のパーソナライズなど、一気に多様なバリエーションのコンテンツを生成できるわけだ。
一方のCustom Modelを使うと、企業は自社のブランドルールをFireflyに学習させることができる。具体的には10~20 枚の画像をアップし、自社の製品やキャラクター、トンマナなどをチューニングすれば、ブランドに沿ったオブジェクトや背景、スタイルの生成が可能だ。
パーソナライゼーションをスケールさせよ
これらのアップデートが共通してもたらすのは「Personalization at Scale」つまり大規模なパーソナライゼーションの実現だ。それぞれの機能が「企業固有のデータに基づく体験のパーソナライゼーション」と「大量かつパーソナライズされたコンテンツの制作」を可能にする。壇上では「Create and Scale」という言葉も用いられた。
「AIの飛躍的な価値を実感するためには、日々のタスクやワークフローにうまく統合する必要がある」と語るナラヤン氏。アドビが網羅的なソリューション群と多業種に及ぶ事例によって、実務に資する生成AI活用を可能にしていることが伝わるセッションだった。