一つの町から大きなインパクトが生まれたスポンサーシップの内容とは?
平地:両者の取り組みの背景や想いからも、今回のスポンサーアクティベーションの独自性の高さがうかがました。続いて、具体的な取り組みの内容を教えてください。

小南:まず、複数回にわたり付知フットボールクラブの子どもたち向けにイベントを開催してきました。イベントを行ったのは、SDGsやサーキュラーエコノミーに関する知識を得てもらうだけでなく、実際に体感してもらう目的があるためです。
たとえば、最初に行ったお祭りでは、廃食用油を持ってくることを参加条件にしました。廃食用油の持参を参加条件にしたイベントを何度か行っているうち、育成会の方から「定期的に廃食用油を回収できる場所が欲しい」という要望が出てきました。
そこで、付知フットボールクラブにスポンサーいただいている地元のスーパーに協力を依頼し、油田スポットを置かせていただきました。その結果、定常的にクラブの子どもや保護者の方たちが廃食用油の回収に協力してくださるようになったんです。
平地:廃食用油を回収する際、皆さんはどのように廃食用油を持ってくるのでしょうか。
近江:自宅にあるペットボトルに廃食用油を入れて持ってきてくださっています。ペットボトルも再生利用できるため、ゴミを新たに出す必要もありません。
平地:回収にそこまで手間がかからないのも、参加のハードルを下げていますね。また、イベント参加の条件に廃食用油を持ってくるというのは、参加者の回収率が100%になるのでとてもユニークだと思いました。
イベントの開催、スーパーの油田スポット設置以外に行った施策はありますか。
小南:子どもたちの中で、回収した廃食用油がどうなるのかの理解が進んでいない課題があったので、最初は洗剤のプレゼントを行い、自分たちが普段捨てている廃食用油が洗剤になることの認知を獲得しました。
また、廃食用油は自動車の燃料にもなるため、最終的には遠征試合で使うバスの燃料にしたいと子どもたちに伝えていました。そして、1年かけて一定の廃食用油が集まったタイミングで、試合の遠征に使うマイクロバスにバイオディーゼルを投入し、子どもたちが実際に乗って市内を走るイベントを開催しました。

行政の許可もいただき、廃食用油を集めたバイオディーゼルでバスが走っていることをスピーカーで告知しながらバスを走らせることができ、子どもはもちろん、付知に住む皆さんにも取り組みの認知が広がりました。
想定の倍以上廃食用油が集まり、採用や営業にも貢献
平地:では、実際に得られた成果についても教えてください。
近江:今回の取り組みでは、毎回のイベントに約100名の方が集まりました。その際、当初人数×500ml程度の廃食用油の回収を想定していたのですが、その倍以上の廃食用油を回収でき、アンケートでも90%以上の方に満足いただけました。
また、油田スポットの設置を含め、スポンサーアクティベーションを通じて集まった廃食用油は約400Lとなりました。飲食店でも3ヵ月で100L集まれば良いほうですので、とても良い結果だったと捉えています。

小南:付知フットボールクラブとして行った取り組みですが、現在はNPOつけちスポーツクラブ全体のイベントまで広がっていますし、参加条件を伝えずとも廃食用油を持ってきてくださるので、ケイナンクリーンさんとの取り組みが認知されていることを感じています。
平地:このスポンサーアクティベーションをきっかけに新たな取引も生まれたんですよね。
近江:取り組み以降、産業廃棄物に関するお問い合わせも増えましたし、廃食用油を回収事例として別のお客様に紹介した結果、新たなサーキュラーエコノミーの取り組みが本格的に動き始めています。
また、取り組みを始めてから採用活動でも良い印象を持たれることが増え、これまででは出会えていなかった人材が入社してくるようになっています。