サントリーホールディングスがInstagramに力を入れる理由
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はサントリーホールディングスのSNS施策についてうかがいます。自己紹介からお願いできますか。
白洲:サントリーホールディングスの宣伝部に所属しています。宣伝部では、各事業部門のメディア出稿を一元的に管理し、メディアの買い付けを戦略的に行っています。
我々は単なるメディアの購入代行にとどまらず、特定のブランドにとらわれない「メディア」という接点を生かして、お客様の視点に立ったコミュニケーションを提案・実現することをミッションとして掲げています。
齋川:私はSNSマーケティング支援を行うスマートシェアで、ハッシュタグSEOの事業責任者を務めています。新規営業や企画立案、運用体制の構築、プロダクトのディレクションまで全般的に対応しています。
MZ:サントリーホールディングスのSNSマーケティング戦略についてお聞かせください。
白洲:生活者のマインドシェアを高めていく手段の1つとしてSNSを活用しています。
従来型のマスメディアへの出稿だけでは、伝えたい情報を全員に届けることは難しくなっています。実際、調査を実施しても20代・30代の方と50代の方ではテレビの接触回数が明らかに違うという結果が出ています。また、若年層に向けた施策をTikTokで行った場合は、テレビで行った場合と比べて売り上げが大きく伸びることがわかっています。
したがって、商材とターゲットのバランスを考えながらどのような施策を打つべきか、戦略的に練る必要があるでしょう。
白洲:今回のテーマであるInstagramは、他のSNSに比べて、好意醸成に効果的なメディアだと考えています。広告を配信する媒体としてだけでなく、インフルエンサーの発信力が特に活きるメディアだと捉えており、この特性を踏まえた活用に力を入れています。
たとえばサントリー公式Instagramでは、グルメ・レシピ系のインフルエンサーさんとコラボレーションを行い、料理とサントリーの飲料を組み合わせて紹介しています。このように生活者が欲しいと思う情報を届けることで「サントリーっていいよね」といったイメージを醸成しています。
生活者のInstagramの使い方が変化。企業はどう対応すべきか
MZ:生活者のInstagramの使い方に変化は感じますか?
白洲:変わったと思います。以前は「映え」が重視されたように非日常的な世界観を見せる場と捉えられることが多かったですが、最近はX(旧Twitter)のように情報収集のために使う方も増えました。
また、企業発信で「この商品がおすすめです」とプッシュされるより、同じ立場である他の生活者に「この商品、いいよね」とすすめられるほうが響く方も増えた印象です。
齋川:白洲様が話されたように、今までのマス的な打ち出し、画一的な企業側の発信だけでは情報を受け取らない生活者が増えてきました。まさに生活者が能動的に情報を取得しているといえますが、これは購入意思があるかを問わず、何気なく投稿を見に行き、そこから派生する形で新たに投稿を探しにいく行動も含まれます。
このようなことから、納得のいく投稿・ブランドUGC・公式アカウントの信頼性をInstagram上で確認し、情報収集を一旦完結させた上で、購買につながっていくサイクルが発生しているとと考えられるでしょう。
約14万人にリーチし、過去実績から見ても好成績!「フレシネ」が取り組んだ、新Instagram活用
MZ:具体的な取り組みについてうかがいます。サントリーホールディングスはスパークリングワインブランド「フレシネ」の施策として、スマートシェアのハッシュタグSEOを導入したそうですね。背景や課題感を教えていただけますか。
白洲:直近の課題は新規獲得、特に若年層の認知拡大でした。フレシネブランドは、長年発売している“コルドンネグロ”をメインにワインユーザー40~50代を中心に選ばれている商品でしたが、若年層にはあまり認知されていなかったのです。そこで海外でも若年層を中心に注目を集めている、ボトルデザインが特長的な「フレシネ プロセッコ」に着目し、ターゲットを20代~30代女性に絞ったプランニングを進めることに。この年代の多くが活用しているInstagramを活用することにしました。
齋川:お話を聞いた際に、ハッシュタグSEOを活用することで「InstagramのSEO」と「ユーザーによって作り上げられているInstagram上でのSOV上昇」という、サントリーホールディングス様が求められている2つのことを満たせると考え施策を進めていくこととなりました。
MZ:フレシネの施策について、詳しくお聞かせください。
白洲:10月~12月のモーメントに関連したハッシュタグを選定し、訴求したいシーンのタグ検索上位を図りました。
具体的には、スマートシェア様とハロウィンや年末イベントに関連して投稿や検索がされるハッシュタグの中からフレシネのイメージと合うタグを選定したほか、「フレシネ プロセッコ」の特長を魅力的に表現していただけるようなインフルエンサーをリストアップ。あとはスマートシェア様にインフルエンサーアサインから条件交渉、ディレクション、投稿、レポーティングまで一気通貫で対応していただきました。
その結果、約14万人へリーチし、エンゲージメントや保存も当社の過去実績の平均よりも非常に高く獲得できました。
齋川:インフルエンサーの方に、フレシネの飲用シーンを投稿していただく形です。「#クリスマスディナー(47.4万投稿)」と「#お泊まり女子会(2.1万投稿)」で1位、「#女子会パーティー(3.7万投稿)」と「#お泊まり会(17万投稿)」で2位など、様々なハッシュタグで上位表示を獲得し、フレシネは女子会シーンに欠かせない商品イメージを醸成することができました。
※ハッシュタグのボリュームは2023年10月~12月時点で確認したものを記載
リーチ数、エンゲージメントで高い効果を発揮する「ハッシュタグSEO」とは
MZ:サントリーホールディングスが導入したスマートシェアのハッシュタグSEOとは、どのようなサービスなのでしょうか。
齋川:ハッシュタグSEOは、独自の指標からインフルエンサーを選定し、フォロワー外へのリーチとSOV(Share Of Voice※1)を高めて、ブランドの認知率を最大化するInstagramソリューションです。2023年8月にローンチし、現在サントリーホールディングス様をはじめ約50社の企業様に導入していただいています。
齋川:ハッシュタグSEOでは、APIを活用し特定のハッシュタグにおける検索結果での投稿内容を吸い上げます。そのデータを基に、検索結果に表示されやすいインフルエンサーを抽出。フォロワー数やエンゲージメント数といった従来の基準に加えて、新たなロジックである表示順位・表示回数など、検索結果での出現頻度を算出しています。
この抽出ロジック・システムは、特許取得済みです。
また、投稿データから併用率の高いハッシュタグを抽出できるため、訴求内容に合わせる形で実際のユーザーの投稿を基にハッシュタグ候補を複数の軸で提案できるのも特徴です。その上で各訴求軸での表示に向いているインフルエンサーの提案・アサイン・投稿補助・レポーティングまで一気通貫で支援するサービスです。
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成果を出せた理由は、フォロワー外へのリーチにあり
MZ:今回のフレシネにて成果が出せた理由はどういったところにありますか。
白洲:インフルエンサーさんが丁寧に作っていただいた、クリエイティブの良さが要因の1つとして挙げられるかと思います。
齋川:そうですね。加えて、ハッシュタグ検索・発見タブを中心としたインフルエンサーのフォロワー外(アンフォロワー)リーチが効率的に獲得できたことも挙げられます。
齋川:ハッシュタグSEOでは、インフルエンサー選定時に、独自の基準で選定していることを先ほどお伝えました。フォローをしているインフルエンサーからの情報を受動的に受け取るだけでなく、ハッシュタグをたどって自分から情報を取りに行く現代の生活者の情報収集サイクルにフィットさせたことで、自然な形での認知の拡大が行えたことが大きいと思います。
変化に対応し、その時にあった勝ちパターンを見つけていく
MZ:こうした成果を受けて、社内からの反響はありましたか?
白洲:サントリーホールディングスでは、フレシネの事例を受け、他のブランドでもハッシュタグSEOを活用しています。
たとえばジャスミン焼酎ブランド「茉莉花(まつりか)」では2024年4月に新商品JJ缶(ジェージェーかん※2)を発売しました。ターゲットである20代~30代のブランド認知を高めるべく、ブランド名や商品名以外のタグ検索への露出を目指し、「#お花見」「#桜祭り」「#お茶割り」などのハッシュタグをインフルエンサー投稿へ組み込み検索上での露出を図りました。
※2:2024年3月5日(火)より全国のコンビニエンスストアで先行発売
白洲:ほかにもクラフトウイスキー「メーカーズマーク」や、コーヒーリキュール「カルーア」などでもハッシュタグSEOを活用しています。
ターゲットに対し、Instagram上で正しく情報設計することで効率的にリーチできることがわかったので、今後も他ブランドで検証を重ねていき、ハッシュタグキーワードの勝ちパターンを模索していきたいです。
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
白洲:これからも時代や生活者の行動様式の変化によって、メディアの活用方法も変わっていくでしょう。引き続き、変化に対応しながら新しいコミュニケーションへのチャレンジを続けていきたいです。
齋川:今回はInstagramの事例を紹介しましたが、これからもサントリーホールディングス様とともに、生活者の行動様式における、メディアやプラットフォームに適した価値あるコミュニケーションを実現させ続けていきたいと思います。
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