元々、ビジネス視点で生まれた「フェムテック」
MarkeZine編集部:このところ、日本でも「フェムテック」という言葉が一般に浸透してきた印象があります。改めて「フェムテック」の意味や定義を教えてください。
奥田:フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語です。もともとは2016年、「Clue(クルー)」という生理管理アプリを立ち上げた女性起業家のイダ・ティンさんが作った言葉とされています。
当時はまだ生理の話題がタブー視されていた中で、シリコンバレーの投資領域で注目され始めていた「○○テック」という言葉を効果的に使うことによって、ファンドからの投資を獲得したそうです。
MarkeZine編集部:ビジネス視点から生まれた言葉とは意外でした。フェムテックというと、性教育から更年期障害まで様々なテーマが考えられますが、概念としてはどう捉えるのがよいでしょうか。
奥田:私は「初潮以降、女性の一生を通じて、女性ホルモンのゆらぎによって起きる女性特有の課題をテクノロジーで解決する商品やサービス」 として、フェムテックを捉えています。企業や人によって解釈は大きく異なり、課題の中に美容やダイエットを含めない場合や「女性の働き方」といった社会的背景を含める場合などもあります。
大手参入で日本のフェムテック市場も一気に拡大
MarkeZine編集部:フェムテックという概念が、日本に持ち込まれたのはいつ頃でしょうか?
奥田:日本における「フェムテック元年」は2019年ごろと言われています。2024年で5年目となりますが、現在の市場規模は700億円弱で、年間約10%増加している成長市場です。
MarkeZine編集部:日本でフェムテックが広がり始めたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
奥田:1つのきっかけとして、アパレルブランド「GU」の動きは影響が大きかったと思います。
今では様々な選択肢のある生理用品ですが、従来はナプキンかタンポンかのほぼ2択でした。そんな中、注目され始めたフェムテック商品が吸水ショーツです。とはいえ、吸水ショーツも当初は、クラウドファンディングサイトでしか買えないような、希少かつ高額なものでした。
吸水ショーツ1枚7,000円以上というのが当たり前の状況を、一気に変えたのがGUです。GUが1枚1,000円台の価格で吸水ショーツを販売し始めたことをきっかけに、様々な企業が参入。競争が高まるにつれて吸水ショーツは手の届きやすい価格となりました。大企業が入ることによって低価格化し、プロダクトが急速に世の中へ広がった事例と言えるでしょう。
MarkeZine編集部:吸水ショーツを広めたのは意外にも、生理用品メーカーではなくアパレルブランドだったのですね。最近では、ほかにどんな企業がフェムテック市場に参入していますか?
奥田:本当にありとあらゆるジャンルの企業が参入しています。製薬会社やビューティー関連企業はもちろん、商社、食品メーカー、金属加工メーカーまで、幅広いですね。