声を上げることで社会が変わる、SNSが与えた影響
――はじめに、西本さんのご経歴およびランドリーボックスについて簡単なご紹介をお願いいたします。
私はPR会社を経てIT関連企業で広報を担当するかたわら、女性向けの情報発信をするブログメディアを運営していました。これがきっかで、2019年にランドリーボックスを起業し、現在に至っています。
ランドリーボックスは「あらゆるワタシに選択肢を」をテーマに、生理・更年期・婦人科疾患・セクシャルウェルネスなど多様な悩みを可視化しQOL向上を目指しています。
具体的には、現代女性のカラダやココロの悩みに特化したコミュニティプラットフォーム「ランドリーボックス」を運営しているほか、メインの事業として企業のブランドプロモーションのサポートを展開、企業とユーザーの悩みを繋ぎながら課題解決を目指しています。
――西本さんが活動されてきた約10年間で、生活者と企業、それぞれに変化はありましたか?
変化してきたと感じます。生活者側の変化を考える際に無視できないのがSNSの影響です。特に2017年頃の#Me Too運動では、セクハラなどの問題について当事者が声を上げ、それに共感した方々や同様の被害に遭った方々が連帯して社会を変えようという動きが生まれました。この現象は、一人の声が社会を動かすきっかけになるということを示しました。
女性の性や生理に対するタブー視が減ったとは言いがたい部分もありますが、情報量が増えたことによって、これらの課題が可視化されてきたと考えられます。
「フェムテック」ではなく、生活者の課題に向き合うべき
――企業側の変化はいかがでしょうか?
企業側の観点からは、2つの変化があると考えられます。1つは「フェムケア」や「フェムテック」といったワードが登場したことです。トレンドになることの是非は別として、これらに関する情報が非常に増えたことで、新規事業のテーマに女性の健康課題を入れる企業が増えている印象があります。展示会など、関連するイベントも増えています。
もう1つ感じる変化は、当事者である女性がフェムケアやフェムテック関連の事業を立ち上げるようになったことです。当事者が決裁権を持つ立場にいる、または提案しやすい環境をつくることで、事業を進めやすくなっているという見方もできると思います。
――フェムケアやフェムテックは生活者にどれくらい広まっていると思いますか。
フェムテックという言葉自体はあくまでもビジネスカテゴリーです。生理・更年期・婦人科疾患・セクシャルウェルネスなど多岐にわたるため、カテゴリーをどこまで広げるかによって、状況は異なります。
たとえば、フェムテックのカテゴリーには不妊治療も含まれますが、当事者の方々は「フェムテック」としてではなく、自分の悩みや課題に基づいてリサーチしています。そのため、単に「フェムテック」という言葉だけを見ていては、実際のニーズがどこにあるか、企業が把握できない可能性もあります。誰に対して何を解決するサービスなのかを考えることが重要です。