変化し続ける“かわいい”の魅力とビジネス
今回注目した“かわいい”には、その言葉の一部に愛着を示す意味合いがあります。この愛着、ロイヤルティを形成していくことこそが、流動的な価値観を乗り越え、企業と生活者の継続的な関係性を構築するために必要不可欠な共創プロセスであり、そうした感情や態度が生じたことを示すのが“かわいい”概念であると考えます。
また同時にこの概念は、今後当社のみならず『液状化する社会』を生き抜く様々な企業において、マーケティングプロセス上生活者との共創関係を構築するキー概念としての重要性を増していくだろうとも考えています。
とはいえこの“かわいい”という概念によって、従来フリューが目指してきた「盛れる」という言葉の価値がなくなったとは考えていません。プリントシール機ビジネスで培ってきた「女子高生」文脈の代表的な「盛れる」価値は、プリと同様にブームを越えて今や文化となってきた「推し活」の出現により新たな様相を見せ始めてきました。それが“かわいい”概念への拡張であり、この概念がキャラクタービジネスを始め様々なエンタテインメントを融合し新たなビジネスへと発展させていけるものと感じています。
こうした発展を更に加速させていくため、フリューでは様々な企業との共創を担う「かわいいトレンド研究所」を立ち上げました。今後は自社のみならず、フリューが培ってきた若年生活者との共創関係構築のノウハウを活かし、幅広いビジネス領域において“かわいい”をプロデュースしたいと考えております。
今回、“かわいい”の研究という捉えづらいテーマにおいて、多様な発言や言外の細かなニュアンスを適切に把握できたことは、単にグラフィックレコーディングをやってみただけではなく、インテージとの共通課題のすり合わせや各社リソースの活用など、まさに共創関係が作れたからこそ実現できたものと考えます。今後も既存の枠組みに固執せず、新しいアイデアを積極的に取り入れ、様々なビジネスプレイヤーの皆様とフリュー、そしてもちろん女子中高大生を始めとしたあらゆる生活者の皆様と、様々な場面において共創関係を作りあげることで、「フリューが関わる商品・サービスはみんなかわいい!」と喜び、楽しんでいただけるよう、多様な“かわいい”の価値をお届けしてまいります。
※1:四方田 犬彦(2006)『「かわいい」論』筑摩書房 p.151
※2:髙木 健一・小巻 亜矢 (2022)『Kawaii経営戦略 幸福学×心理学×脳科学で市場を創造する』日経BP 日本経済新聞出版 p.140-141
※4:株式会社矢野経済研究所「2030年「オタク人口比率40%」へ!?」(2018年8月)