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今知っておきたいマーケティング基礎知識

マーケティングにAIを活用!期待される効果や企業事例を紹介

 ビジネスのあらゆる分野でAIが活用されるようになり、マーケティングの領域でもAIの重要性が高まっています。「データが多すぎて大変」「業務を効率化したい」などの理由で、AI活用を検討しているマーケティング担当者も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、どのようなマーケティング業務にAIを活用できるのか解説します。活用メリットや企業事例なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

AIマーケティングとは

 AIマーケティングとは、マーケティング活動にAI技術を取り入れることです。

 AI技術の著しい進歩を背景に、ビジネスのあらゆる場面でAIが取り入れられるようになっており、マーケティング領域でもAIの活用が進んでいます。コンテンツ生成を得意とする生成AIの分野だけでも、OpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini(旧:Bard)」、Microsoftの「Copilot」など、多くの企業が様々なAIツールを開発している状況です。

 AIができることは多岐にわたり、生成AIのように文章や画像などを自動で生成できるAIもあれば、分析や予測、制御などを得意とするAIもあります。このようなAIの特徴はマーケティングと非常に親和性が高く、業務を効率化・自動化して生産性の向上が見込めます。

 今後も技術の進歩にともない、マーケティング活動でAIが代替できる業務が増えていくと予想されており、AIマーケティングのさらなる発展が期待されています。

AIをマーケティングに活用するメリット

 マーケティングにAIを取り入れると、どのようなメリットや効果があるのでしょうか。本章で詳しく紹介します。

膨大なデータを分析できる

 マーケティングでは、商品・サービスや顧客に関するデータを分析し、行った施策の効果を検証したり、次の戦略を立案したりします。

 しかし、データは膨大なため集約・集計だけでも多大な工数がかかります。データ分析にも多くの工数がかかる上に、分析結果から現状の把握や将来の予測などをするスキルも必要です。また、人手による作業ではミスが発生するリスクもあり、正確な結果を得られない可能性もあるでしょう。

 そこで、マーケティングにAIを活用するとデータの集約・集計・分析が自動化でき、人手による作業よりも高速かつ正確な分析ができます。さらに、AIは膨大なデータからの洞察も得意としているため、将来的に想定されるリスクや、効果が見込めるマーケティング施策などの予測・提案も可能です。

 今までは多大な工数をかけていたデータ分析も、AIの活用によって工数を削減できるようになるため、社員は人間にしかできない業務に時間を使えるようになります。

データドリブンなマーケティングを行える

 AIによってデータ分析の精度が高まれば、データドリブンなマーケティングを実現できます。データドリブンとは、データに基づいて客観的に判断することです。

 近年、インターネットショッピングやSNSなどの登場によって顧客の購買行動が多様化しているため、今まで一般的とされていた「AIDMA」といった購買行動モデルがマッチしなくなっています。そのため、従来は効果的だった施策や、社員の経験や勘に頼った施策などの効果が見込めなくなっている状況です。

 そうした中で、商品・サービスの売り上げ動向や顧客の購買行動などのデータを分析し、客観的に意思決定していくデータドリブンマーケティングの重要性が高まっています。

 データの分析や分析結果からの洞察はAIが得意とする分野であるため、データドリブンマーケティングを実現するのにAIは非常に親和性が高いといえるでしょう。

業務が効率化する

 マーケティングに関わる業務をAIが代替できれば、業務効率化にもつながります。

 AIは、先述したデータの集約・集計・分析だけでなく、コンテンツ制作や問い合わせ対応などもできるため、マーケティングで発生する多様な業務を代替できます。今までは人手による作業で、時間がかかっていたりミスが発生していたりした業務も、AIの代替によって時間とミスを削減できるため業務効率化になるでしょう。

 さらに、業務が効率化すれば人手不足にも対応できます。日本では人手不足が深刻化しており、マーケティング人材の確保が困難になっているため、多様なマーケティング施策を実行するのが難しいという企業も少なくありません。しかしAIがマーケティングに関する業務を代替できれば、リソースが限られていてもマーケティングを行えるでしょう。

パーソナライズしたアプローチができる

 近年のマーケティングで必要性が高まっているのが「パーソナライズ」です。パーソナライズとは、顧客一人ひとりに対して最適化した施策でアプローチすることを指します。

 かつてはテレビCMや折り込みチラシなどの不特定多数に対する画一的な施策が主流でしたが、「テレビを見ない」「新聞を取っていない」という顧客も増加しています。さらに「SNSの口コミを参考にしている」「店舗で商品を見てインターネットで購入する」など、購買行動や価値観、関心ごとなどが多様化しており、従来のようなアプローチでは効果が見込めません。

 そこで、一人ひとりの属性や行動、趣味嗜好などに合わせて、個別に最適化した施策を展開するパーソナライズマーケティングが必要とされています。

 AIを活用すると、顧客の属性や購買履歴、インターネット上の行動履歴などのデータを収集できるようになり、それらのデータを分析して各顧客に最適な施策を提案してくれるため、パーソナライズしたアプローチが実現するでしょう。

売り上げ向上も見込める

 AIの活用により、売り上げにも良い影響が出る可能性があります。

 たとえば、マーケティング業務の効率化ができれば、社員は顧客との関係性構築や新しい商品・サービスの開発など、人間にしかできない業務の時間を確保できます。また、パーソナライズしたアプローチができると、顧客の満足度が向上してリピート購入したり口コミを広げてくれたりもするでしょう。

 このように、AIが直接的に売り上げに直結するわけではないものの、AIによる効果で売り上げ向上も見込めるため企業の成長につながります。

AIを活用できるマーケティング業務

 ここからは、マーケティングの各業務でどのようにAIを活用していくか、例を挙げながら詳しく紹介します。

ライティングやWebデザインなどのクリエイティブ

 クリエイティブを得意としている生成AIを活用すると、ライティングやWebデザインなどの業務を代替できます。

 たとえば、オウンドメディアにおける記事制作でも、対策したいキーワードの選定から構成作成、タイトル作成、さらには記事のライティングまで生成AIの活用が可能です。最近では生成AIが画像の生成もできるようになっており、記事のアイキャッチ画像や、広告のバナー画像、情報を整理した図表など、多様なコンテンツを生成できるようになっています。

 このような業務をAIに代替させれば、スキルがなくてもクリエイティブを制作できるようになるため効率的です。ただし、文章や画像が不自然だったり誤っていたりする場合もあるため、生成されたコンテンツは必ずチェックして、必要があれば手を加えるようにしましょう。

セグメンテーションやパーソナライゼーション

 人手による作業では工数がかかるセグメンテーションやパーソナライゼーションも、AIの力を借りれば効率的かつ正確に行えます。

 たとえば、属性や購買行動などによるセグメンテーションは、顧客すべてのデータを分析して正確に分類しなければなりません。それぞれのセグメントによって適切な施策が異なるため、セグメンテーションを誤ってしまうと成果が得られなくなる可能性もあります。

 そこで、AIを活用すると、データ量が膨大でもスピーディーに集計・分析し、結果から適切なセグメントに分類してくれるでしょう。

 また、パーソナライゼーションに関しても、顧客一人ひとりによって状況や関心ごとが異なるため、分析結果から最適な施策を見極めなければ期待通りの成果が得られません。しかしAIの活用により、一人ひとりの課題やニーズにマッチした施策を実行できるようになります。

データ分析・予測

 データ分析と、分析結果からの予測も、AIが得意とする分野です。

 たとえば、今までの施策で成果が出なくなっている時、AIにデータを読み込ませて分析することでその原因を特定できるかもしれません。また、その分析結果から、将来的な予測や次にするべきアクションなどのヒントも提供してくれます。

 人間による分析では、データ量が膨大すぎると時間がかかったりミスが発生したりします。また、分析する人の主観が入ってしまい、分析結果に偏りが生じるリスクもあるでしょう。しかしAIがデータ分析を行えば、時間をかけずに客観的な分析結果を得られます。

広告運用

 広告で成果を出すためには、広告を出稿する媒体の選定、広告文やバナーの作成、入札調整、効果測定など多様な業務をうまく回す必要があります。また、Web広告の種類は多岐にわたるため、複数の広告を運用する場合のリソースは多大なものです。

 AIを取り入れると、これらの業務が自動化されるため効率的に業務が回るだけでなく、成果を高められる可能性も見込めます。

 たとえば、AIが広告媒体やターゲット層に最適なバナーを生成してくれたり、広告の入札単価を24時間365日モニタリングしてくれたりするなどの活用方法があります。また、広告運用におけるセグメンテーションやパーソナライゼーションにもAIを活用できるでしょう。

 2021年には、インターネット広告費の市場が、マスコミ4媒体(テレビメディア、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費の市場を上回り、その差はさらに広がると予想されています(※)。そのため、広告運用におけるAI活用は、さらに重要性を増していくでしょう。

第2部 情報通信分野の現状と課題|第3節 放送・コンテンツ分野の動向(情報通信白書|総務省)

インフルエンサーマーケティング

 マーケティングにおいてSNS活用は欠かせなくなっています。SNSマーケティングには、SNSアカウント運用やSNS広告出稿などの施策がありますが、その中でもインフルエンサーマーケティングを行う企業が増加しています。

 インフルエンサーマーケティングとは、多くのユーザーに支持されていて影響力のあるインフルエンサーを起用し、自社の商品・サービスをプロモーションしてもらう施策を指します。

 しかし、SNS上には多くのインフルエンサーが存在しており、自社に最適な人材を見つけることは困難になっています。

 そこでAIを活用すると、インフルエンサーが紹介している商品の画像を解析したり、発信している情報の内容を分析したりして、自社の商品・サービスと親和性の高いインフルエンサーをマッチングしてくれるため、効果的なプロモーションの実現が可能です。

SNSマーケティング

 近年、SNSの利用者数が拡大しており、企業が顧客の購買行動やニーズを把握するためにSNSを活用する機会も増えてきています。また、自社の商品・サービスに関する口コミが発信されていることもあり、顧客からの客観的な評価を得る場としても活用されています。

 しかし、SNS上には膨大な情報があふれているため、自社にとって有益な情報を見つけるのは簡単ではありません。

 そのような時も、AIを活用できます。AIがSNS上の膨大な情報から必要な情報だけを収集して分析してくれます。顧客のニーズや、自社の商品・サービスの反応だけではなく、競合他社の商品・サービスの口コミや動向などの分析にも活用できるでしょう。

Web接客

 Webサイトにチャットボットを設置してお問い合わせ対応をしたり、ポップアップで最適なコンテンツを表示して次のアクションを促したりするなど、Web接客に力を入れている企業も増えています。Web接客にもAIを取り入れると効果的です。

 たとえば、AIチャットボットに自社によく寄せられる質問と回答例を学習させると、問い合わせ対応を自動化でき工数を削減できます。また、Webサイトに訪問したユーザーに対して、AIが最適なポップアップを表示させられるため、購買意欲を促進できるでしょう。

 近年は顧客の購買がオンライン化しており、企業と顧客が接点を持つことが難しくなっている時代です。そのためWeb接客を上手に活用し、オンライン上でも顧客との関係性を構築しましょう。

AIを活用したマーケティングを実践している企業事例

 次は、実際にAIマーケティングを実践している企業の事例を紹介します。

はるやま商事株式会社

 主に紳士服の製造・販売を手がけるはるやま商事株式会社は、購買履歴のデータから顧客ごとの好みをAIが分析し、さらに顧客の好みにマッチしたスーツやシャツをAIが提案してくれるツールを活用しています。抽出されたスーツやシャツなどの割引クーポンをつけたDMハガキを郵送したところ、通常のDMハガキと比較してメンズが15%、レディースが12%も来店が増加したそうです。

江崎グリコ株式会社

 グリコやポッキーなどのお菓子メーカーである江崎グリコ株式会社は、食品業界でなかなか進まないAI活用にいち早く取り組もうと注力しています。具体的には、商品開発にAIを取り入れて開発期間を短縮したり、顧客ごとに最適な商品を提案したりするなどの活用方法を検討中です。

スターバックス

 スターバックスはモバイルアプリを通じて膨大な顧客データを収集し、AIが顧客の生活習慣や好みにパーソナライズした商品やクーポンを提案する仕組みを構築しました。さらに、エリアごとの所得水準や交通量、競合の存在などからAIが収益を予測し、出店エリアの選定にも活用しているようです。

AIマーケティングの将来性・未来像

 AI技術の進歩が著しい中、今後マーケティング領域でのAI活用はどのようになっていくか気になる人も多いのではないでしょうか。現段階での予測を見ていきましょう。

AIの精度はより向上する

 AI技術の進歩はすさまじく、世界的に名だたる企業がこぞって開発やアップデートを行っています。ChatGPTは2024年5月に「GPT-4o」を発表し、テキスト評価や翻訳などの分野において従来モデルよりも高い、もしくは従来モデルと同等の正確性を実現したとしています。

 今後、AIの精度はさらに向上すると考えられており、今は精度に不安があってAIを活用していない層も将来的にはAIが不可欠になるかもしれません。

AIができることが増えてくる

 既にAIは多様なことができますが、今後できることはさらに増えていくと予想されています。人手による業務をAIが代替できるようになり、さらなる業務の自動化・効率化が進むと考えられます。

 少子高齢化が進む日本では、限られた人手で生産性を向上させていく必要があるため、人手による作業を代替できるAIは今後ますます存在感を増していくでしょう。

AIを使いこなせるスキルが求められる

 AIは、あくまでも意思決定のヒントを与えたり、業務を補佐したりする役割のものであり、AIが直接的に企業を成長させられるというわけではありません。そのため、「どの業務でどのようにAIを活用するか」「AIの提案をどのように活かすか」というように、AIを使いこなせるスキルが求められる時代になります。

 AIにマーケティングを任せっぱなしにするのではなく、活用方法や活用場面を見極めて使いこなすことが重要です。

AIをマーケティングに取り入れる際の注意点

 マーケティングにAIを活用すると多くのメリットや効果が期待できますが、覚えておくべき注意点もあります。ここから紹介する注意点を把握しておき、事前に対策を講じておくと成果につながりやすくなります。

すべてのデータが正解だとは限らない

 AIが提供するデータをすべて鵜呑みにするのは危険です。AIの精度が高まっていて正確性が向上しているとはいえ、学習した内容や参照したデータが間違ったり古かったりすると、誤ったデータを提示することもあります。

 AIが提示したデータをそのまま公表したところ、内容が間違っていた場合、企業の信用を失う可能性もあるかもしれません。

 対策としては、AIが提示するデータは、内容を改めて確認してから公表したり、アイデアとして参考にする程度にしたりして、うまく使いこなしましょう。

取り入れやすい業務から始める

 最初からすべての業務にAIを取り入れると、担当者のスキルが追い付かず現場が混乱しかねません。まずは取り入れやすい業務から始めていき、徐々に範囲を広げていくとよいでしょう。

 たとえば、コンテンツ生成やデータ分析などは、AIを活用しやすい分野です。自社のマーケティング業務で工数が割かれている業務やルーチンワークなどを洗い出し、AIを活用できないか検討してみましょう。

機密情報の取り扱いに気を付ける

 AIを活用するにあたり、情報の取り扱いは大きな課題です。

 たとえば、ユーザーから提供されるデータを基に学習をしていくAIツールの場合、自社の機密情報を読み込ませてしまうとAIツールが学習してしまい、別のユーザーへの回答でその機密情報を提示してしまう可能性があります。

 AIツールの中には社内のデータを学習しないよう設定できるものもありますが、社外に漏れてはいけないデータはなるべくAIツールに読み込ませないように注意するのがコツです。

まとめ

 AIをマーケティングに活用すると、データを基にした意思決定ができるようになり、顧客一人ひとりの課題やニーズにマッチしたアプローチができます。また、作業を行うにあたっての工数やミスが削減され、業務効率化にもつながるでしょう。

 今後AIの精度が高まって活用範囲も広がっていくと、マーケティングの様々な業務がAIによって代替できる将来がくるかもしれません。そのような未来に備え、今からAIに関する知識を深め、使いこなせるようスキルを磨いておきましょう。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/31 00:00 https://markezine.jp/article/detail/46848

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