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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

MarkeZine Day 2024 Focus

ファミマ&ツルハドラッグが明かす!リテールメディア展開で見えてきた「活用の成功パターン」と「課題」

 近年、注目度が急上昇しているリテールメディア。メーカーなど広告主側だけでなく、小売業界からもその動向が注目されており、新たにリテールメディア運営に取り組む小売事業者も増えている。コンビニではファミリーマートが2019年から、ドラッグストア大手のツルハドラッグは2020年からリテールメディアを展開し始め、広告成果を上げているという。両社はリテールメディアを実践するために、どのような道を歩んできたのか。またリテールメディア運営から見えてきた活用の鍵とは何か。2024年11月13日、東京・丸の内で開催された「MarkeZine Day 2024 Focus」にて語った。

※記事の内容は、2024年11月時点の情報です。

店舗・デジタル広告・アプリを中心に展開するファミリーマートのリテールメディア

 今、マーケティング領域を始めとするさまざまなビジネス分野で最も注目を集めているのがリテールメディアだ。「MarkeZine Day 2024 Focus」でも、リテールメディアを展開しているファミリーマート デジタル事業本部 デジタル事業部長の国立(こくりゅう)冬樹氏、ツルハホールディングス 執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長の小橋義浩氏による「リテールメディア活用の鍵」と題する対談が行われた。

 国立氏によると、ファミリーマートではリテールメディアとして3軸を展開しているという。1つは店内サイネージである「店舗メディア」、もう1つが「デジタル広告」、最後に「自社アプリ」であるファミペイだ。

株式会社ファミリーマート デジタル事業本部 デジタル事業部長 国立 冬樹氏
株式会社ファミリーマート デジタル事業本部 デジタル事業部長 国立 冬樹氏

 「サイネージは2019年から取り組み始め、2022年には3000店舗、2024年4月に1万店舗に設置しました。デジタル広告も、NTTドコモさんやPPIHさんとアライアンスを組み、NTTドコモデータとファミリーマートデータを基にした拡張配信を実施して現在5000万IDまで配信できるプラットフォームに育っています。アプリのファミペイも現在2200万ダウンロードを達成し、アプリと連動した店内ビーコンを全店に設置してお客様とのコミュニケーションに活用しています」(国立氏)

 このデジタルサイネージ・デジタル広告・ファミペイに加え、自社が運用しているXやLINEの公式アカウント、店内ビーコン、そして1日に平均1500万人が来店するという店舗そのものの6つが「リテールメディア」となっている。いずれも1日1000万以上のリーチを持つ強力なメディアだ。

 ファミリーマートではこれらのメディアを組み合わせ、たとえば「サイネージとアプリと店頭POP」の相乗効果で商品の魅力をアピールし、メーカーと店舗と来店した顧客がそれぞれ「三方良し」になる提案を行っている。またサイネージも、設置店舗数が1万店に達したことで、地域や立地条件に応じたセグメント配信が可能となり、さらなる成果向上が期待できるという。

ユーザーの信頼とプラットフォーム作りから始めたツルハグループのリテールメディア

 一方、ツルハホールディングスがリテールメディアに取り組んだきっかけは「リアル店舗ではデータを基にしたOne to Oneの提案がなかなかできない」という危機感だったという。小橋氏は「実際に来店するお客様の購買行動やデータを利用して適切な情報を適切なタイミングで配信できないかと考えました」と話す。

 そこで顧客にリーチできるチャネルとして2020年にスマホアプリをリリース。2024年現在1000万ダウンロードを超え、重要な顧客基盤となっている。

 さらにデータ分析を基にしたオファーを実現するため、ID-POSをBigQueryに集約して広告配信のスキームを開発した。2021年にはそのデータを基に、YouTubeやInstagramなどの外部メディアに広告配信を実施、さらに店内にデジタルサイネージを設置して店舗における広告展開の仕組みを整えた。

 こうして試行錯誤を続けながら、2022年にはデータクリーンルームを使ったメーカー向け広告計測サービスをスタート。「大切な顧客情報を預かるのだから、不利益がないような状態で活用したいと考えました」(小橋氏)といい、データの安全性担保にも注力している。

株式会社ツルハホールディングス 執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長 小橋 義浩氏
株式会社ツルハホールディングス 執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長 小橋 義浩氏

 そして2023年にはツルハグループを横断した各店舗に合計約1万台のサイネージを設置し、商品と近い位置で広告を配信できる棚前サイネージも導入した。

 こうして顧客基盤とデータ分析基盤、配信環境を整えたところで、2024年からはツルハグループアプリでの広告配信を開始。1000万ダウンロードのりー知力、MAU約500万から生まれるインプレッション数を誇り、エントリーから数日で半年分の枠が完売したという。現在同社は、アプリや自社Webサイトなどでの広告配信のほか、YouTubeなど外部メディアへも広告を配信し、さまざまな面・メディアで広告主の商品訴求を展開している。

 小橋氏はそんなリテールメディアの実施・運用について2つのポイントを挙げている。

 1つは、プラットフォームを整え、アプリが顧客から一定の信用を得てから広告配信を行うこと。まだアプリ利用が定着せず、アプリに対する理解が深まらないうちに広告が出始めると、ダウンロードしてくれた顧客が離脱するリスクが高くなる。

 もう1つはソフトなセグメンテーションを行うこと。同社では性別・年代や来店回数・エリア、購買金額、購入商品などでセグメント化しているが、あまりに厳しいセグメンテーションを行うとボリュームが小さくなってしまう恐れがある。認知度向上や購買意向のリフトなど要件に応じて試行錯誤しながら出し分けていき、知見を蓄積しているという。

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リテールメディアのメリットは「消費者の目に届く場所に商品情報を置けること」

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/29 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47716

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