「ウーブン・シティ」は第2フェーズへ。トヨタ自動車 豊田章男会長が登壇
メディア向けに行われたカンファレンスに登壇したのは、トヨタ自動車 代表取締役会長の豊田章男氏。2020年のCESで発表した実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」について、構想の第1フェーズが竣工したことを報告した。

静岡県裾野市に建設中の「ウーブン・シティ」は、様々な新しいプロダクトやアイデアを発明・開発する場としてスタート。人々が住み・働き・遊んで暮らす街の中で、新しいテクノロジーを生み出し、実証し、取り入れていく――そんな「Living Lab」として機能することを目指し、プロジェクトが進められてきた。
章男氏によると、第1フェーズの竣工を経て、2025年からウーブン・シティへの入居が順次開始していくとのこと。住民はトヨタ従業員やその家族、定年退職者、パートナー企業、科学者、小売事業者などで、最終的には約2,000人がここに住まう予定だ。
また、ウーブン・シティでは、モビリティ領域において「人」「モノ」「情報」「エネルギー」の4テーマの研究に注力していく。これらのモビリティのテストコースとして、ウーブン・シティが機能することになる。
章男氏は「地球に住む人間として未来に投資し、地球と人々に利益をもたらす新しいアイデアを支援する責任がトヨタにはある」「私たちは人々を移動させるだけでなく、心を動かしたいと考えている」とスピーチし、ウーブン・シティへの招待状を送った。
「サステナビリティ」「AI事業戦略」を強く発信したパナソニックグループ
長年CES に出展し続けているパナソニックグループからは、グループCEOの楠見雄規氏がオープニングキーノートに登壇。かなり広いスペースを使った展示も行い、露出・情報発信に力を入れていた。
キーノートで楠見氏は、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みや、その達成に向けた250年計画を発表したほか、AIを活用したビジネスへの変革を推進するグローバルな企業成長イニシアティブ「Panasonic Go」の推進を強調。2035年までに、AIを活用した事業の売上比率を約30%にまで拡大するという戦略を発表した。
展示ブースでは、「Panasonic Go」の事業例として、対話型AIを活用したウェルネスサービスの「Umi(ウミ)」がお披露目された。「Umi」は、家族の健康・ウェルネスをサポートするアプリケーションサービス。家族に健康的な習慣を身に付けさせるだけでなく、そうした日々の習慣を通して、家族間の断絶やストレスをなくすところまでサポートする。

具体的には、家族の構成、性別・年齢、日々の生活ルーティーンなどを「Umi」が学習し、それぞれの家族の状況に沿ってリアルタイムにサジェスチョンを送ってくれる。レシピを提案する際も、平日なのか・週末なのか、朝昼夜のいつ何人で食べるのか、家族
の食材の好みなどを踏まえて、最適なものを提案してくれるという。アプリは、2025年にまずは米国から提供が始まる予定だ。
海外メディアから大きな注目を集めたキリンの「エレキソルト」
キリンは今年が初めてのCES出展だったが、「CES Innovation Awards」を受賞し、海外メディアからも大きな注目を集めるなど存在感を放っていた。同社が展示で披露したのは「毎日の減塩食を、おいしく、楽しく!」というコンセプトで展開している「エレキソルト スプーン」だ。
これは食べ物を介してスプーンから舌へ微弱な電流を送ることで、塩味の素となるイオンを舌のほうへ引き寄せ(しっかり舌に乗せ)、食品の塩味・うま味を増強するという仕組みのプロダクト。展示では、エレキソルト スプーンを使ったラーメンやスープの実食体験を提供し、プロダクトの仕組みや特徴を紹介していた。

エレキソルト スプーンは、「免疫ケア」を筆頭にキリンが近年力を入れているヘルスサイエンス領域の新規事業としてスタート。減塩や高血圧に悩む消費者をターゲットに約5年かけて開発を進めてきたという。「食事をより楽しんでいただくこと」をパーパスとし、明治大学の宮下芳明研究室と共同で研究開発を行ってきた。なお、減塩市場は国内でもグローバルでも拡大傾向にある成長市場である。
既に日本では、ECでの抽選販売で商品を販売中。2024年の1年間で、抽選応募数は10倍以上にまで伸びている。
日本では大塚製薬が展開中、100ヵ国以上で利用されている栄養モニタリングサービス「Vivoo」
2024年9月から、米国発の栄養モニタリングサービス「Vivoo(ビブー)」の日本ローカライズ版を提供している大塚製薬。同社もヘルステックのカテゴリで「Vivoo」の展示を行っていた。
Vivooは、専用の試験紙に尿をかけ、それを専用アプリで読み取ると自分の栄養状態を可視化できるというサービス。アプリは無料で使用でき、検査用の試験紙を有料(日本では650円)で販売するというビジネスモデルだ。アプリでは、測定結果に合わせて食事や生活習慣のアドバイスも行っている。
サプリメントの「ネイチャーメイド」や「ポカリスエット」を展開している大塚製薬にとって、顧客の栄養状態を可視化することには大きな意味がある。サプリメントの摂取や水分補給の必要性を認識させたり、サプリメントを摂取した結果、自身の栄養状態が改善したことを理解してもらえたりするからだ。

薬機法の関係で、アプリで特定の自社商品をレコメンドすることはできないが、それでも大塚製薬の商品購入のきっかけ作り、ブランドのロイヤリティ向上には貢献する。また、1回きりではなく、アプリも含めた継続的な利用が理想的のため、ECでは定期便での利用を促進している。
日本ではBtoC向けだけでなく、BtoB向けにもサービスを展開中。健康経営を推進する目的で、健康診断よりも手軽に・定期的に社員の健康意識を向上させる手段として、ニーズがあるそうだ。
一瞬で多様なメイクを体験できるサービスをコーセー×東京エレクトロン デバイスが共同出展
コーセーは、東京エレクトロン デバイスと共同で、メイクシミュレーション「Mixed Reality Makeup」を出展。XR Technologies & Accessories部門において、「CES Innovation Awards 2025 Honoree」を受賞した。
「Mixed Reality Makeup」では、高速プロジェクションマッピングの技術を活用。顔の動きに合わせてメイクを投影することで、ユーザーは実際に顔にメイクを施さずとも、様々なメイクを体験することが可能。顔を左右に振っても、ラグなどがなく、一瞬でメイクが顔に投影されるという精度の高さに注目が集まっていた。

写真は視覚的にわかりやすいアートメイクだが、ナチュラルメイクの体験もでき、好みのリップやアイシャドウなどを気軽に試すことができる。
CES 2025では、プロのメイクアップアーティストが体験で気に入ったメイクを実際にしてくれる、といった企画もあり、ブースは非常ににぎわっていた。なお、この技術は、コーセーのコンセプトストア「Maison KOSÉ 銀座」にて2022年8月から展開中である。
コーセーとしては、「Mixed Reality Makeup」のサービスおよび技術を、企業に対して拡販していくことが狙い。ビューティ領域に限らず、エンターテイメント業界などにも展開していきたいという。
食料危機に直面する世界を救うテクノロジー
クボタグループは、「Smart Innovation For You」をテーマに最新のテクノロジーを展示。人々と社会の課題解決に貢献するというビジョンを具現化したような、自動化・AI・コネクティビティ・サステナビリティを組み合わせた最新テクノロジーを紹介した。
たとえば自動剪定ロボット「Smart Robotic Pruner」は、主にワイン用のぶどう畑での使用を想定して開発されたもの。「Smart Robotic Pruner」は、AIによる画像解析で、ワイン用ぶどうなどの果樹の芽と枝を識別し、最適な剪定箇所を判断して自律的に剪定することができる。

ワイン用ぶどうの剪定は、醸造家の長年の知見や創意工夫が活かされるものであり、決まりきった正解があるものではない。その点、「Smart Robotic Pruner」は、使用する醸造家の傾向を学習し、剪定を行うところが特徴的だという。画一的な生産ではなく、醸造家の考えを汲んだ生産が可能となる。
食糧危機は人類が向き合わなければならない世界課題であり、広大な土地を持つ国では農業に携わる人の“豊かな暮らし”は避けられない課題でもある。CESでは「Smart Robotic Pruner」の他にも、糖度などを測り適切なタイミングで収穫してくれるロボットや、地面に凸凹があってもスムーズに収穫物を運んでくれるロボットなども紹介されていた。