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『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
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【最終号特集】未来を創る、企業の挑戦

AI市場がどう変遷しても優位性を保つ。共創を軸に競争力を高めるパナソニックグループのAI戦略

 パナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)は、AIを活用し大きなビジネス変革を起こそうとしている。AIの領域はあまりに進化が速く、数ヵ月後の展開すら読めない状況だが、いかにしてAIをビジネス変革の原動力にしようとしているのか。そして、家電などにAIが組み込まれていくと、人々の生活はどう変わっていくのか。パナソニックHDでAI活用を推進している小塚和紀氏に話を聞いた。

※本記事は、2025年6月刊行の『MarkeZine』(雑誌)115号に掲載したものです

【最終号特集】未来を創る、企業の挑戦

─ AI市場がどう変遷しても優位性を保つ。共創を軸に競争力を高めるパナソニックグループのAI戦略(本記事)

AI市場のリーダーと手を組み、競争力を高めていく

──パナソニックグループは、今年1月に開催された「CES 2025」にて、AIを活用したビジネスへの変革を推進するグローバルな企業成長イニシアティブ「Panasonic Go」を発表。また、2035年までにAIを活用したハードウェアやソフトウェア事業、ソリューション事業をグループ売上全体の約30%にまで拡大する目標も発表されました。まずは、パナソニックHDとしてのAIの考え方について、小塚さんの立場からお聞かせください。

小塚:私の所属するパナソニックHD 技術部門 DX・CPS本部は、AIなど最新技術の活用を社内で広げる役割を担っています。

パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門 DX・CPS本部 デジタル・AI技術センター AIソリューション部 1課 小塚和紀氏 人工知能分野で世界最高峰の研究所である米国スタンフォード大学AI研究所に客員研究員として在籍(2016.4〜2019.3)。様々な国や 会社から集まった人工知能のトップ研究者の中で切磋琢磨した経験から、直近ではICCV2023併催CAMP workshopを主導するなど、帰 任後も組織の枠を越えた新たな事業創出への挑戦を続けている。

パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門 DX・CPS本部 デジタル・AI技術センター AIソリューション部 1課 小塚和紀氏

人工知能分野で世界最高峰の研究所である米国スタンフォード大学AI研究所に客員研究員として在籍(2016.4〜2019.3)。様々な国や 会社から集まった人工知能のトップ研究者の中で切磋琢磨した経験から、直近ではICCV2023併催CAMP workshopを主導するなど、帰 任後も組織の枠を越えた新たな事業創出への挑戦を続けている。

 各事業で商品にAIを搭載し、お客様に届けていく――その前に必要な社内でのAIの民主化を進めるため、外部技術の社内適用や独自技術の開発などを担当しています。

 パナソニックHDのAIに対する考え方ですが、基本的にAI技術は外部から積極的に取り入れる方針を採っています。この理由として大きいのは、展開している事業の幅広さです。家電をはじめとする様々な製品・ソリューションを製造販売しているパナソニックグループの場合、AIを活用するためには、幅広い事業で、かつリアル空間にAI技術を適用させなければなりません。OpenAIのようにChatGPTという1つの強いAI技術を開発すればよいわけではなく、家電、住宅、モビリティ、エナジー……と各事業で必要なAI技術が異なってくるわけです。そのため、すべてを自前で開発するとなると膨大なコストがかかってきます。

 また、近年AI技術そのものが驚異的なスピードで進化していますから、社内で独自の技術を開発しても、事業に適用する頃には次の新しい技術が登場し、結果的に後れを取ってしまうといったリスクもあります。

 こうした理由から我々は「いま最も優れているAI技術」を外部から取り入れるスタイルを採ることにしました。外部のAI技術を各事業領域で現場にいるプロフェッショナルたちが使いこなすことで、お客様の課題を解決し、環境とくらしへ貢献していくという戦略です。各事業でドメイン知識を持った人材がAI技術をツールとして使いこなせれば、あるいはそういった人材のいる事業が増えていけば、AIを活用した事業が成長し、パナソニックグループの競争力も高めることができるだろう、という考えです。

──つまり、AI市場のリーダーが変動しても、パナソニックのAI戦略は揺るがない?

小塚:そうですね。パナソニックグループはAI市場での競争は望んでいませんから、市場の最先端を行くリーダー企業と常に手を組んでいく方向で考えています。市場のリーダーが変わっても大きく影響を受けないよう、オプションも揃えています。たとえば、社内で使えるAIツールは制限されている企業もありますが、パナソニックグループではできるだけいろいろな外部のAIツールを標準で使えるようにしています。こうした取り組みにより、社内のAI活用のレベル向上を図る狙いもあります。

 一方で、外部のAI技術では対応しきれない部分をカバーするため、2024年7月に発表した言語モデル「Panasonic-LLM-100b」など、独自技術の開発も行っています。現場でAIを活用するのは、各事業領域に高度に精通した専門家たちですから、AIに質問して嘘をつかれたりしたら、もうAIを使わなくなってしまうでしょう。

 パナソニックグループならではの専門領域にも対応できるよう、カスタマイズ性の高いAIツールとして「Panasonic-LLM-100b」なども必要だと考えています。

パナソニックグループ内で活用しているAIツール群。専門用途の高さ、カスタマイズ性の高さを軸に各社のAIを使い分け、外部のAI技術で補えない領域では自社独自のLLMを開発・活用している。(タップで画像拡大)
パナソニックグループ内で活用しているAIツール群。専門用途の高さ、カスタマイズ性の高さを軸に各社のAIを使い分け、外部のAI技術で補えない領域では自社独自のLLMを開発・活用している。(タップで画像拡大)
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48982

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