曖昧さを排除し、自信と説得力のあるキャッチコピー例
もう一つ紹介したいのが、日本人がニューヨーク近郊でいちごの植物工場を立ち上げたスタートアップの「Oishii Frim」です。単に日本の高品質ないちごを生産するのではなく、技術力やこだわりを米国の消費者に伝えるためのコピーライティングとブランドメッセージの設計に極めて長けています。Webサイトの「It’s Always Strawberry Season(いつでも、いちごの旬)」というキャッチコピーは、完全屋内農法による通年生産という技術的特徴と共に、消費者目線の利便性と贅沢さのベネフィットに響かせています。
また、「A Fruit You Know, A Flavor You’d Never Expect(知っている果物、予想外の味)」というコピーは、誰もが知る「いちご」が、他とは違う特別な価値があることを示唆し、初体験への期待感を巧みに高めています。曖昧さを排除し、米国的な自信と説得力のある語り口を体現しています。これらのコピーはすべて、Oishiiの高度な栽培技術や品質管理を、感情と共感に訴える言葉で言い換えることに成功しており、日本の繊細さと米国のマーケット感覚を高い次元で融合させたまれな成功例と言えるでしょう。
米国では、「それを使うとどんな体験ができるのか」という視点が重視されます。数字や機能の羅列ではなく、日常の中でどう役立つか、何を感じられるかといった感情に訴えるストーリーの方が、消費者に響くのです。
ローカライズとは「翻訳」ではなく「共感の設計」
トランプ政権の再登場によって、米国市場における“逆風”はより強くなっていますが、日本ブランドへの信頼や憧れは、今なお強く根づいています。特に、品質の高さ、繊細さ、ストイックなものづくりへの姿勢は、数十年かけて構築された「無形の資産」として、現地の生活に浸透しています。
今、日本企業に求められているのは、その強みを「どのように伝えるか」というマーケティング・PRの翻訳力です。
「米国の人たちがどんな言葉に反応するのか?」「どんな見せ方が“自分ごと”として響くのか?」——これらの問いに向き合いながら、メッセージの粒度を調整し、コピーやビジュアルを再設計し、現地の文化や生活者の価値観に“寄り添う発信”が不可欠です。
日本企業の米国市場でのマーケティング戦略やメッセージ戦略が機能するように今後も支援をしていきたいと思います。