LINEヤフー×電通グループの共同分析プロジェクト「SynWA project」とは
MarkeZine編集部(以下、MZ):本日は、2025年6月11日に正式提供を開始された「SynWA project」について話を伺っていきます。
大下(電通デジタル):「SynWA project」はLINEヤフーと電通、電通デジタルの3社による共同分析プロジェクトです。「SynWA(しんわ)」という名称は、3社の「Sync(同期)」「Synergy(相乗効果)」「輪」を意識しており、それぞれの強みを結集して相乗効果を生み出すことを表現しています。

相原(LINEヤフー):LINEとYahoo! JAPANの両プラットフォームは、2025年6月末時点で約2,800万のユーザーのアカウント連携が完了しており、現在も連携拡大を続けています。「SynWA project」では、このユーザーが承諾したLINEとYahoo! JAPANのアカウントを紐付けたデータを分析に活用できます。
この他にも活用可能なデータは多岐にわたります。まず、LINEヤフーが保有するWeb上の行動データが挙げられます。また、テレビ実視聴データや位置情報データなど電通グループが保有・連携する多様なデータも利用できます。さらに、エンドユーザーへの同意を前提にクライアント様の許諾をいただければ、クライアント様自身が保持されている1st Partyデータとの掛け合わせ分析も実現できます。

なぜ「SynWA project」は誕生したのか?
MZ:プロジェクトが発足した背景をお教えください。
大下(電通デジタル):LINEヤフーへ合併後、これまで2社共同で推進してきた「HAKONIWA(※1)」や「LINE DATA SOLUTION(※2)」に次いで、3社のデータを活用した分析により、クライアント様が求める深い顧客理解と幅広い打ち手を実現するため「SynWA project」はスタートしました。
※1:旧ヤフーと電通の共同分析プロジェクト。Yahoo! JAPANや電通のデータ、ソリューション、リソースを使って自由度の高い分析やPDCAを実現する。
※2:旧LINEのデータソリューション群の総称。電通ではこれを応用し、ユーザー固有のLINEアカウントと連携する形で、LINEのユーザーデータ、電通・電通デジタルが保有・連携するデータなどを、ユーザーの同意許諾に基づいてプライバシーを保護した上で掛け合わせた分析を実施している。

坂田(LINEヤフー):クライアント様からも強いニーズがありました。Yahoo!広告は認知領域、LINE公式アカウントはCRM領域で特に強みを発揮するプロダクトです。「SynWA project」では潜在層へのアプローチからLTV向上まで一気通貫、フルファネルでカバーできます。

大下(電通デジタル):LINEヤフーは既に型化されたソリューションをお持ちでしたが、「SynWA project」を活用いただくことで、クライアント様の1st Party データや電通の2nd Partyデータなどを掛け合わせ、顧客課題に合わせたカスタムな分析の選択肢が広がりました。
電通グループは現在では年間1,000件、過去累計3,000件を超えるデータクリーンルーム活用の分析・コンサルテーションの実績があります。このような分析手法が一般的になりつつある中で早期から取り組みを続け、独自の認定アナリストといった実践知・人員数においても他社の追随を許さない状況を維持していると自負しております。
相原(LINEヤフー):当社単独ではLINEとYahoo! JAPANに関わるソリューションに留まってしまいがちですが、日々様々なクライアント様の課題解決に向き合っている電通グループとの協業により、強固で幅広く対応可能な意義深いプロジェクトになったと確信しています。
実際にどう活用できるのか?広告領域でできること
MZ:具体的に、企業は「SynWA project」をどのように活用できるのでしょうか?
坂田(LINEヤフー):まず広告領域での活用について説明します。「SynWA project」では、Yahoo!広告とLINE広告を同一環境で扱うことができます。そのため同一ユーザーが両方の広告に接触した場合、Yahoo!広告のみに接触した場合とLINE広告のみに接触した場合、それぞれのユーザー群を分析可能です。
また、Yahoo! JAPANが検索媒体でもあることから、どのユーザーが検索行動に寄与したかの分析もできます。たとえば、最も検索しており相乗効果が出ているのは両方の広告に接触しているユーザーである、といった検証が可能です。
同様の重複効果を生み出すためのターゲティング設計や広告配信の最適化についても、分析・提案が可能です。さらに重複効果のあったユーザーのインサイトを深掘りすることで、広告による認知だけに留まらず、LINE公式アカウントやキャンペーンへの効率的な誘導方法への打ち手へとつなげることもできます。

※記載の内容はあくまで例示であり、実際の実績を示すものではありません。
坂田(LINEヤフー):一方で、より多くのユーザーにリーチしたいクライアント様の場合は重複しなかったユーザー層を特定することで、インクリメンタルリーチを最大化するセグメント設計や分析を実施できます。

坂田(LINEヤフー):このようにKPIに応じて柔軟な分析が可能であり、結果に基づく次のアクション提案まで含めて対応できることが「SynWA project」ならではの強みです。
ユーザーのジャーニーを詳細に分析!LINE公式アカウントでの活用
相原(LINEヤフー):私からはLINE公式アカウント領域における活用イメージを説明します。前提として、企業のLINE公式アカウントを友だち追加するユーザーは、その企業の商品やサービスに興味を持っていると考えられます。「SynWA project」では、LINEヤフーが保有するWeb上の行動データでLINE公式アカウントの友だちを可視化ができるようになりました。
これにより、友だち追加したユーザーがその前後でどのような検索キーワードを使用していたかを時系列で追跡可能になり、どのような思考プロセスを経て友だち追加に至ったか把握できます。「このユーザーはこのような悩みを抱え、こういった検索を行った結果、この企業にたどり着いた」という一連の流れを時系列で理解できるでしょう。また、LINE公式アカウントからのメッセージに反応するユーザー層の特性分析も可能です。

相原(LINEヤフー):このように、LINEとYahoo! JAPAN双方のデータを活用することにより、詳細なユーザーインサイトを把握できるようになりました。
大下(電通デジタル):これらの分析に、「HAKONIWA」で利用可能なデータの掛け合わせや分析手法も、「SynWA project」に継承されていきます。具体的には電通グループが保有・連携しているテレビ実視聴データや位置情報データ、調査データなどを掛け合わせることで、より多角的な分析が可能になります。
加えて、クライアント様の1st Partyデータとの連携も可能です。自社の会員情報を基にした広告接触のリフト分析や会員のカスタマージャーニーの詳細分析、テレビ視聴接触がある会員の行動分析など、様々な観点からの分析ができるようになるでしょう。
また調査データを活用した分析は通常、LINEヤフーが保有するIDと調査IDを後から紐付ける場合、データの欠損が発生する課題がありました。そこで、事前にLINEヤフーが保有するIDに対して調査をかけるなどなるべく欠損しない仕組み作りを行っており、分析に必要なボリュームを担保できます。
坂田(LINEヤフー):他にも、購買データを掛け合わせ顧客の実際の購買行動まで分析できます。Web上のオンライン行動・オフラインでの購買情報などを横断的に分析し、デジタル広告の効果がオフラインにどの程度寄与しているかも実証可能です。
どのような企業に「SynWA project」が効果的か?
MZ:どのような企業が「SynWA project」を活用でき、効果を期待できるのでしょうか。
坂田(LINEヤフー):業種や業態、出稿量を問わず、幅広く活用いただけます。ご要望に応じた分析を実施しますので、「このような分析をしたい」「こんなことは可能か」など、お気軽にご相談ください。
大下(電通デジタル):既にYahoo!広告とLINE広告の両方に出稿しているクライアント様にとっては、それぞれの施策を“別々のもの”として扱うのではなく、相互の関係性や相乗効果の可視化が可能になります。たとえば、Yahoo!広告で獲得したユーザーがLINE広告でどう反応したか、その逆はどうかといった、施策間のつながりが見えるようになります。これにより、メニューを跨いで狙い通りの動きができているのか、どこに改善余地があるのかまで、一気通貫で把握できます。
また、どちらか一方(Yahoo!広告またはLINE広告)のみで広告展開をしているクライアント様にとっても有用です。「リーチを広げたい」「広告のリフト効果を高めたい」など次の一手を模索している場合、今出稿していない媒体にチャレンジすることで両者を同じ指標・同じ軸で評価でき、より明確な効果検証と改善が可能になります。
そして、現時点でYahoo!広告・LINE広告どちらにも出稿していない企業様にも活用可能です。最初から両媒体を統合的に捉えたアプローチを設計できるため、効率的かつ効果的なマーケティング施策のスタート地点としてご活用いただけます。
相原(LINEヤフー):プライバシーとセキュリティの観点でも、「SynWA project」で提供する分析環境は社内で厳格な確認体制を構築しています。どのようなデータを活用するのか、分析内容が適切かについて、社内のデータポリシーを管轄する専門部門に都度確認を行う座組みとなっています。セキュアな環境下でプライバシーに配慮しながら分析が行えるよう整備しています。
活用可能性は無限大。企業の数だけ分析・活用の形がある
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
坂田(LINEヤフー):これまでYahoo! JAPANとLINEは別々の媒体として、クライアント様や代理店様に認識されていた面がありました。2023年10月の合併後は、それぞれの媒体の特徴を活かし相乗効果を発揮することを考えてきました。
「SynWA project」で提供する分析環境では、Yahoo!広告がLINE公式アカウントにどの程度寄与しているかや、LINE公式アカウントを友だち追加したユーザーのその後の行動も分析可能です。これまでYahoo!広告のみを利用いただいていたクライアント様には、「SynWA project」での顧客分析や効果検証も含めて、LINE広告やLINE公式アカウントを組み合わせた統合的なご活用を検討いただければと考えております。
一方、LINE広告やLINE公式アカウントのみを活用いただいていたクライアント様は、Yahoo!広告での友だち獲得からメッセージの配信まで一連で分析と顧客管理を行っていくことで、LINEの価値をさらに向上させることが可能です。フルファネルでのサポートを提供してまいります。
大下(電通デジタル):「SynWA project」はまだ発足したばかりのため、LINEヤフーと電通グループが一丸で日々の検証と工夫を重ねながら、より良いサービスへと磨き上げている最中です。だからこそ、クライアント様のご要望によってプロジェクト自体も成長していくといえます。
本プロジェクトは使えるデータが幅広く、それらをどう掛け合わせるかの可能性も多岐にわたります。クライアント様それぞれの課題や成長に向けた打ち手があり、クライアント様の数だけ「SynWA project」の形があると考えています。ぜひ課題や成長戦略についてお聞かせいただき、最適な手法を一緒に考えられれば幸いです。


株式会社電通:福田真大、新川祥史、赤澤新之介、針原千尋、岩佐太雅、黒川大輝、甘利早
株式会社電通デジタル:大下酬人、栗山和子、坂戸美輝、小林大剛、丸山枝里子、金岡実莉、鈴木宏和
株式会社LINEヤフー:相原茉鈴、榮枝雄史、坂田凌、植田翔大、栗原秋紀子、赤尾関健