提携による強みは「自由度と案件数」 VPの具体的な制作フローも解説
━━博報堂プロダクツとHCAが提携したことによる強みはどういった部分にあると感じていますか?
寺本 いちばんの強みは、博報堂プロダクツのメンバーがHCAに出向することで、VP制作の現場との距離が格段に近くなったことです。VPは「大掛かりで敷居が高い」というイメージを持たれがちですが、この提携によって、クライアントの皆さまにも気軽に実際に撮影を行うスタジオをご案内でき、実際の撮影現場の空気を肌で感じていただく機会も増えました。
槇野 予算や内容など、なにかあればすぐに相談できる環境であることは、制作するうえでとても大事ですね。
寺本 また技術的な強みとして挙げられるのは、HCAのスタジオが誇る、圧倒的なスケールと自由度の高さが際立っている点だと思います。背景のLEDパネルを撮影内容にあわせて柔軟に設計できるのはHCAだけですし、そのために必要な専門知識も蓄積されている。LEDパネルが自由に設計できれば、それだけ表現にも自由度が生まれ可能性も広がるため、多様な提案が可能になります。
北村 僕らからすると、博報堂プロダクツとの連携が強化されたことで、さまざまなプロジェクトを実現できるようになりました。博報堂プロダクツが持つマンパワーと案件数に、HCAの技術を掛け合わせることができる点が、大きな強みだと思っています。

矢坂 実際にお問い合わせの件数も増えましたし、とても良い相乗効果が生まれていますよね。
━━では、具体的なVP制作のフローや必要な期間について教えてください。
矢坂 最初の企画段階では、VPプロデューサーとVPスーパーバイザーがクライアントと打ち合わせを行います。先方が想定されることと実際にできることが乖離している場合もありますので、そのギャップを埋めたり、企画の幅を広げたりしながら肉付けをしていきます。
案件を受注したあとは、スーパーバイザー、システムチーム、CGチームなどのスタッフィングを行います。次に広告全体のプロデューサーや撮影監督と中身の確認をし、トンマナや空間づくりといったシチュエーションを確認。そこから北村や槇野さん、CGチーム、美術部も加わり、プロジェクトの骨格を整えていきます。案件によって、LEDパネルを拡張したいといったイレギュラーな要望がある場合には、別途システムチームに構築を依頼します。

VPの場合は撮影前までに背景のCGを確定させておく必要があるので、綿密なコミュニケーションのもと進めていく必要があります。そして撮影当日になったら全員が現場に集結し、一体感をもって撮影していきます。
北村 撮影以前のCGを作る段階が重要で、何度も打ち合わせと調整を行います。スーパーバイザーとエンジニアで、木や草をどんな色合いにするかといったカラーマネジメントをしたり、現場でCGと馴染むライティングができるように美術部や照明部などと打ち合わせしたり、それをスタジオで実際に確認して調整したりといった作業が続きます。
寺本 制作期間は案件によりますね。半年ほどかかるものもあれば、3週間で納品する場合もあります。
矢坂 制作スケジュールによってできることとできないことも違いますし、それによってシステムチームやCGチームの負担も変わってきます。そういった工数の部分を、私や寺本さんでしっかり調整していくことも大切です。
━━それぞれの役割があるなかで、コラボレーションの際に心がけていること、大切にしていることはありますか?
北村 何ヵ月もかけたプロジェクトが集大成に近づくと、体力的にも精神的にもかなりハードな状況にもなります。ですがスーパーバイザーは現場の軸となる存在だからこそ、さまざまな部署や役割の人たちがいる現場では、いちばん明るくいることを意識しています。スタッフへの声がけも頻繁に行うことで問題にもいち早く気づいてフォローしたいですし、何かあれば北村に聞けば大丈夫だと思ってもらえるようなふるまいを心がけています。
矢坂 現場にはクライアントなど、VPの知識がない方々も集まるので、私たちだけで進めてしまわないよう心がけています。たとえばシステムにエラーが出て撮影が止まったときに、今はどんな状況であるかをしっかりお伝えしたり、それぞれのスタッフがどういった立ち位置なのかを説明したりと、疑問点がないよう進める必要があると思っています。
寺本 VPは専門用語も多く、初めて触れる方には少し難しく感じられる伝わりづらい部分が多いかもしれません。私もまだHCAに出向して半年ですので、わからないことはすぐにHCAの皆さんに質問するようにしています。クライアントなどに説明する際も、なるべくかみ砕いて説明できるように意識しています。