登録者数1,190万人超え。タイミーが最重要指標に置く「稼働率」
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、スキマバイトサービス「タイミー」と、グロースマーケティングチームの役割について教えてください。
本田(タイミー):「タイミー」は、ワーカーの働きたい時間と事業者の働いて欲しい時間をつなぐ、スキマバイトのプラットフォームサービスです。2025年7月現在、導入企業は20万社、登録ワーカー数は1,190万人を超え、スキマバイトを代表するサービスとして、全国の幅広い属性の方々にご活用いただいています。
そのなかで、私たちグロースマーケティングチームが担うミッションは、ワーカーと事業者の両方を増やしていくことです。タイミーの事業は、働きたい方と人手が欲しい企業の双方が増えることで成長するため、私たちは「toC(ワーカー向け)のデジタル領域」「toB(事業者向け)のデジタル領域」「toBのオフライン領域」という3つの領域から、サービスのグロースを推進しています。
マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部グロースマーケティングチーム リーダー
本田 朋史氏
MZ:今回、Yahoo!広告を活用された「toCのデジタル領域」では、どのようなKPIを設定されているのでしょうか?
本田(タイミー):今回の施策に関わる「toCのデジタル領域」では、「稼働率」および「DAU(デイリーアクティブユーザー)」をKPIに設定しています。事業を継続的に成長させるには、登録者数を増やすだけでなく、実際に働いていただく方の割合、つまり「稼働率」を高めることが不可欠だからです。この稼働率は、わずか1%の向上でも事業に大きなインパクトをもたらすため、チームの最重要指標と位置付けています。
潜在ワーカーをどう動かす?タイミーがYahoo!広告を選んだ2つの決め手
MZ:今回、Yahoo!広告の動的ディスプレイ広告を活用するに至った背景には、どのような課題があったのでしょうか?
江崎(タイミー):「求人への申し込みに至らないワーカーの増加」が課題としてありました。元々グロースマーケティングチームは「アプリのインストール数最大化」を主なミッションとしており、月間数億円規模の予算でデジタル広告を幅広く展開していました。その結果、インストール単価を抑えながらワーカー数を順調に増やすことはできたのですが、一方で「アプリはインストールしたものの、実際にはアプリ上の求人への申し込みに至らない」というケースが多く発生してしまったのです。そこで、この課題を解決するため、長期間アプリを起動していない方や、まだ一度も働かれていない方を対象としたリターゲティング広告へと、戦略の舵を大きく切ることにしました。
マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部グロースマーケティングチーム
江崎 百佳氏
MZ:リターゲティング広告に着手するうえで、数ある選択肢のなかからYahoo!広告を選ばれた理由を教えてください。
江崎(タイミー):決め手は2つあります。1つ目は「ディープリンク(アプリの特定の画面に遷移させることのできるリンク)」を活用できる点です。一般的な広告(アプリダウンロードリンクを利用したもの)では、魅力的な求人が訴求されたバナーをクリックしても、アプリストアに遷移してしまいます。ワーカーは、興味を持った求人をアプリ内でまた一から探し直さなければならず、この手間が離脱の原因になっていました。その点、ディープリンク機能を使えば、広告で見た求人の詳細ページへ直接遷移させることが可能です。これにより、ワーカーはストレスなく求人の申し込みまで進めるため、CVR(申し込み転換率)の向上が期待できました。


江崎(タイミー):2つ目は「データフィード」で運用工数を大幅に削減できる点です。タイミーには日々数万件から数十万件もの求人が寄せられます。これら一つひとつの求人に対して、手動で広告とディープリンクを設定するのは現実的ではありません。しかし、データフィード(求人などのデータを、広告媒体の仕様に合わせて送信する仕組み)を活用すれば、膨大な数の求人広告を自動で生成し、最適な出し分けまで可能です。求人ごとにパーソナライズされた広告を配信する上で、この機能は不可欠でした。
LINEヤフー×タイミーのデータで「ワーカーへ最適な求人を届ける」精緻な広告配信を実現
MZ:Yahoo!広告の「アプリデータを活用した動的ディスプレイ広告」の特徴や強みを教えてください。
田中(LINEヤフー):ユーザーの行動履歴に合わせて最適な広告を自動生成する「ダイナミック広告」は他社にもありますが、Yahoo!広告ならではの強みは、やはり「データの質と量」です。LINEヤフーの膨大なユーザーデータを活用することで、精度の高いターゲティングが可能になります。
そして今回の取り組みの最大のポイントは、そのLINEヤフーのデータに、タイミー様が持つワーカーのアプリ内行動データを掛け合わせた点です。これにより、非常に精緻なセグメント設計と広告の出し分けが実現しました。
ビジネスデザイン統括本部 第二ビジネスコンサルティング本部 ビジネスコンサルティング5部 コンサルティング1チーム
田中いづみ氏(所属は取材時)
MZ:具体的に、どのように広告を設計・運用されたのでしょうか?
大西(CyberACE):LINEヤフー側、タイミー側のデータを有効活用しながら、3つのセグメントの掛け合わせで設計しました。
1つ目は「求人セグメント」です。これはタイミー様の求人データを活用し、「どの求人を」表示するかのセグメントです。エリアや職種といった求人情報に基づき、ワーカーのお住まいや現在地から通える範囲の求人を的確に届けます。
2つ目は「ワーカーセグメント」です。こちらはタイミー様のアプリ内行動データを基に、「どのユーザー層に」広告を配信するかを定義します。たとえば、アプリインストール後の日数や、最後にアプリを起動してからの日数でユーザーを分類し、私たちのターゲットである未稼働のワーカーへ効率的にアプローチできるようにしました。
3つ目が、両社の行動データを活用した「特定セグメント」です。これは、特定の興味・関心を持つユーザー層をさらに深く捉えるためのものです。「普段から軽作業系の仕事を探している方は、他にどんなことに興味があるか?」といったペルソナレベルまで掘り下げ、よりターゲティングの精度を高めていきました。

大西(CyberACE):この3つのセグメント設計で一貫して目指したのは、「ワーカーに、最適な求人を届ける」ことです。両社のデータを掛け合わせることで、ワーカー一人ひとりの状況やニーズに寄り添った、精度の高い広告配信が実現できたと考えています。
稼働転換率326%増!稼働率も4.7ポイント引き上げ、ダイレクトに事業成長に貢献
MZ:今回の取り組みで得られた成果について教えてください。
江崎(タイミー):条件やセグメントを変えながらABテストを重ねた結果、稼働率や稼働転換率の向上など大きく4つの定量的な成果が得られました。

1つ目は、未稼働ワーカーの稼働転換率増加です。従来のアプリTOPに遷移させる場合と、今回のディープリンクを使った求人TOPに遷移させる場合を比較したところ、求人TOP遷移の場合の稼働転換率が326%も高い結果になりました。

2つ目は、注力求人における稼働転換率向上です。当社では、業務直前になってもワーカーが集まりにくい求人や、特定の経験が必要な求人を「注力求人」と定義しています。今回は勤務地周辺のアクティブユーザーを増やして応募を促進するために、位置情報データを活用した既存ワーカー配信を実施。結果、広告を配信していないワーカーと比較して、広告を配信したワーカーの稼働転換率は164%となりました。

3つ目は、CPA(応募単価)の改善です。新規ワーカーより、既存ワーカーのほうが稼働につながりやすく、結果的に新規流入の場合と比較して、CPAを約3分の1にまで抑えることに成功しました。

4つ目は、全体の稼働率の向上です。新規獲得広告経由で創出できた稼働率と比べ、今回のダイナミック広告で創出できた稼働率は4.7ポイント高い結果となりました。稼働率が1%でも高まれば、事業に大きなインパクトをもたらしますので、4.7ポイントの増加は非常に価値ある数値です。

数値以上の価値。施策の精度を飛躍させた「検証レベルの進化」
MZ:数値面以外で得られたメリットもあれば教えてください。
江崎(タイミー):広告運用の「検証レベル」が格段に上がったと感じています。これまでは遷移先が同じだったため、バナーの訴求内容くらいしか検証できませんでした。しかし今回は、求人ごとに遷移先を変えられるため、「どんな求人」と「どんなワーカー」の相性が良いのか、といった深い分析が可能になったのです。
大西(CyberACE):クリエイティブ面でも多数検証を実施しました。バナー画像は10種類から50種類まで増やし、実写訴求から(タイミーにおいて)効果の高いイラスト訴求への差し替えも行いました。
江崎(タイミー):広告テキストにおいても、エリアや時給など、求人情報のどの要素を訴求すればワーカーの反応が一番いいのか検証を重ねました。データを自由に編集して媒体側に送信できる、データフィードならではの工夫のしどころだったと感じます。
LINE広告とYahoo!広告が統合へ。新プラットフォームが拓く未来
MZ:今回の成果を踏まえ、今後Yahoo!広告を使って挑戦したいことについてお聞かせください。
江崎(タイミー):まずは、今回の取り組みで得られた知見をベースに、さらに深いユーザー理解と配信精度の向上を目指したいですね。検証のレベルが一段階アップしたといえども、まだまだ道半ば。どのようなユーザーにどんな求人が好まれるのか、今後もLINEヤフーのデータを活用しつつ、解明していきたいと思います。
本田(タイミー):事業全体としては、マッチングの「質」と「量」をさらに向上させていきたいです。たとえば「ワーカーからの評価が高い求人」「事業者から評価の高いワーカー」のデータを分析し、それを広告に連携していくことで、プラットフォーム全体のマッチングを高めていくことができるのではないかと考えています。
MZ:代理店として、今回の成功事例を今後どのように展開していきたいと考えますか。
大西(CyberACE):ディープリンクやデータフィードを活用した今回の事例は、その成果の大きさから既に当社内でも話題になっています。このナレッジを活かして横展開を進め、人材業界を盛り上げていけるような代理店として今後も尽力していきたいと思います。
MZ:最後に、Yahoo!広告としての今後の展望や最新情報などがあれば教えてください。
田中(LINEヤフー):「アプリデータを活用した動的ディスプレイ広告」はまだまだ新しい取り組みです。事業に大きなインパクトを与える顕著な数値が現れた今回の成功事例を基点にして、他業種でもお役に立てるよう、積極的に支援領域を広げていきたいです。
なお、2026年春頃にLINE広告とYahoo!広告はプラットフォームを統合し、「LINEヤフー広告 ディスプレイ広告」として提供を開始します。配信環境の一元化にともなって、メディアを横断したユーザー行動や配信結果データを収集できるようになり、機械学習モデルの性能改善が想定されます。広告効果の向上、配信効率化も見込まれますので、ぜひご期待ください。
(左から)CyberACE 安達 凛太郎氏、サイバーエージェント 辻本 祥生氏、CyberACE 大西 敦士氏
LINEヤフー 田中 いづみ氏、タイミー 江崎 百佳氏、タイミー 本田 朋史氏
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