2.UCPのコア:在庫から配送までを担うAI「Gemini Enterprise for Customer Experience」
「Gemini Enterprise for Customer Experience」は、Googleがリテール企業向けに提供するB2B特化型のAIソリューションだ。UCPからの商品に関する問い合わせ対応や、配送遅延の解消、返品手続きの対応など、顧客体験に直結するリテール企業の業務領域をAIが担う。
従来のEC体験は消費者側による「閲覧~購入」で成立しており、リテール企業側は「受動的」な対応に留まっていた。しかし、購買体験にAIが介入してくると、「リテール業として次に何をすべきか」という能動的な行動が必要となってくる。「Gemini Enterprise for Customer Experience」は、そのリテール企業の行動と意思決定をサポートし、実行へと誘導していく設計になっている。
視点を少しずらすと、Googleの構想するAIエージェント型コマースの世界では、リテール企業が「能動的な行動=マーケティング」を主体的に行えるとも言える。
UCPの戦略的意図の核心は、「MoR:Merchant of Record(販売責任者)」の権利をリテール業者に取り戻すことにある。Amazonのマーケットプレイスでは、顧客との接点、データ、そして「誰から買ったか」というブランド体験はすべてAmazonに集約され、出品者は単なる在庫供給源(ベンダー)となりがちである。
一方、UCPモデルでは、AI(Gemini)はあくまで仲介役に徹し、最終的な販売主体(MoR)は各リテール/ブランド企業となる。これにより、ブランド側は手足となる販売網と共に自社の顧客データ、購買履歴、ロイヤリティプログラムを保持し続けることができ、LTV(顧客生涯価値)を最大化するマーケティングが可能となる。
3.ドローン配送サービス「Wing」
「Wing Aviation」は、Alphabet傘下のドローン配送サービス。これが在庫と自宅を直結する“頭脳+リアルな手足”として機能してくる。
Wingでは専用アプリで注文された食料品、医薬品、日用品などを小型ドローンが自動で配送する。配送時は、上空からケーブルを降下させて荷物を地上に届ける仕組みだ(競合のAmazon Prime Airは庭先に箱を上空から落とす方式:参考動画)。
WingのWalmartのパートナーシップは既に全米主要都市で約200万人の実験的ユーザーが存在し、その上位25%は週3回以上ドローン配送を利用している。今回は対象エリアが拡大し、潜在顧客数4,000万人規模に達する見通しだ。2027年までに全米270拠点体制を目指し、ロサンゼルスからマイアミまで広域での実用化が進む。
卵を割らず、熱いコーヒーをこぼさずに届ける精度はすでに実装段階にあり、2027年には社会インフラとして定着する可能性が高い。日本においても、遠隔地への医薬品配送や郊外型店舗の物流支援などへの応用が期待される。
