「戦略策定」の最終ステップ。「激レアバイト」から学ぶ勝ち筋の描き方
本連載ではここまで、現状分析、初期仮説の設定と検証、課題設定と、戦略策定の前段となる考え方を整理してきました。今回は、いよいよ「戦略策定」の最終ステップについて、私が実際にリクルート時代に取り組んだ「激レアバイト」の事例を交えながらお話ししたいと思います。
<戦略策定の5ステップ>
| カテゴリ | ステップ | プロセス |
| 戦略策定 | (1)現状分析 | 現状分析の解像度を限界まで上げ、マーケットにおける構造とゲームルールを把握する |
| (2)初期仮説の設定 | 現状のマーケット構造とその中に潜むゲームルールから課題を見つけ、初期仮説を立てる | |
| (3)初期仮説の検証 | 初期仮説を数値で検証して解像度を高め、仮説の確度を上げる | |
| (4)課題設定 | 確度を上げた仮説を基に、問題を引き起こす本質的な課題を特定する | |
| (5)筋と数値設計 | (1)〜(4)の情報を基に勝ち筋を作り、強みを活かした戦略として勝てるかを数値で示す |
戦略は、思いつきの施策ではありません。現状を捉え、課題を定義し、そのうえで「どこで勝つか」を決めることです。そして、その勝ち筋を数字で定義し、実行しながら磨き続けることで初めて、戦略は機能します。
本稿では、私なりの戦略の定義から始めて、実際にどう考え、どう立ち上げ、どう磨いたのか、「激レアバイト」という施策が生まれるまでの思考と実践についてお伝えします。
戦略とは「勝ち筋と数値」である
まず、戦略とは一言で何かと聞かれたら、私は「勝ち筋と数値」と答えています。この「勝ち筋」という言葉をもう一段開くと、「マーケットに対して自社の強みを活かし、競合相対で勝てる筋を描くこと」です。そして「数値」は、その勝ち筋の目標とするKPIです。
つまり、私の定義では、戦略とは「マーケットに対して自社の強みを活かし、競合相対で勝てる筋と目標値とするKPI」ということになります。
ここまで、現状分析→初期仮説の設定→初期仮説の検証→課題設定と説明を進めてきたのは、すべてこの戦略策定のためです。ただし、この手順を丁寧に踏んでいない戦略だと、そもそも現状分析に観点が足りていなかったり、初期仮説がずれたまま課題設定まで進んでしまったりします。なので、戦略策定とは、現状分析からの過程をすべて含んだものであることを、前提としてまずお伝えしたいと思います。
なお、よく「戦略と戦術は何が違うのですか?」という質問を受けます。私の定義では、戦術は「KPI達成を実現するための打ち手」です。つまり、戦略が「どこで勝つか」を決めるものだとすれば、戦術は「どうやって勝つか」を決めるものです。戦略がなければ戦術はただの施策の寄せ集めになりますし、戦術が戦略とつながっていなければ、いくら動かしても成果にはつながりません。
さて、戦略の定義に戻ります。
定義の「マーケットに対して自社の強みを活かし」の部分ですが、ゼロから会社を立ち上げる時は強みなんてないと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私は必ず強みはあると断言できます。なぜなら、それは相対的にではなく、まずは絶対的に定義するものだからです。人が何かを始める以上は、必ずその人やそのチームが持っている強みがあります。ですので、まずは自社の強みが何かを定義することが、戦略策定の起点としてはとても大事なことだと思います。
大事なポイントは、「自社の固有の強みを削り出してから、その強みのレベルを競合と相対的に比べてみる」という順番です。この強みを起点とすることが、強みをマーケットに最適化して勝つための筋を考えるマーケティング戦略の出発点となると私は考えています。
次に大事なのは数値。つまりは、「勝ち筋の目標とするKPI」です。端的に言えば、KPIは事業の売上や利益を代弁するものでなければなりません。そのKPIを伸ばすことで売上が伸びる構造になっていなければ、意味のない目標値になってしまいます。
私は、勝ち筋の目標とするKPIの必要要件は、下記の4つだと捉えています。
1.売上を代弁していること
2.コントローラブルであること
3.資源を集中できるKPIの数であること
4.目標数値が、戦略上何を達成するか定義できること
特に3.は重要です。売上に関係するKPIがいくつもあるから複数のKPIを見ている、あるいは決めきれない、という悩みはよくわかります。私も多々悩んできました。ただ、戦略を策定しても、実行して成果が出なければ意味がありませんし、そのKPIは戦略を実行した時にコントローラブルでなければいけません。複数のKPIはコントロールしづらく、投資も分散してしまいます。
従って、私はKPIはできる限り1つに絞り込むことが大事だと考えています。戦略を実行する時に、「たった1つを叶えれば良い」という状態を作らないと、組織の実行力は鈍ります。
まとめると、私の定義では、「戦略=マーケットに対して自社の強みを活かし、競合市場で勝てる筋と目標値とする絞り込んだKPI」です。
戦略は「一言で言うと?」に答えられるまで磨き抜く
では、その戦略はどのように作るのか。私は「戦略を一言で言うと、つまり?」という問いに答えられる簡潔明瞭さが大事だと思っています。
戦略とは「実行すること」であり、実行できなければ戦略とは呼べません。指揮する立場として多くの方に動いていただく際に、戦略が複雑だと伝言ゲームで伝達事項がずれたり、現場が迷って推進力が出なかったりします。
私も何度も失敗してきましたが、うまくいかないケースに共通していたのは「戦略の曖昧さや複雑さ」でした。一言で言えるほどシンプルに研ぎ澄まされた戦略であれば、関わる人すべてが実行までをはっきりとイメージでき、迷わず動くことができます。
さらに、戦略がシンプルであれば、現場も試行錯誤しやすくなります。進むべき方向が明確だからこそ、一人ひとりが自ら考えて動き、得られたフィードバックから戦略をチューニングしていくという好循環が生まれるのです。
では、ここからは実際に私がリクルート時代に策定した「激レアバイト」の事例を通して、現状分析から戦略策定まで、勝ち筋と数値の作り方をお伝えしていきます。
