一般社団法人発酵性食物繊維普及プロジェクトは、2026年5月11日、都内で「新腸活最前線 発酵性食物繊維 “腸×肌”トレンド発表会」を開催した。活動2年目を迎えた同プロジェクトの参画企業は16社へ拡大。「発酵性食物繊維」が注目されつつある中、市場の現状や最新の科学的エビデンス、参画企業5社による社会実装への取り組みが発表された。
発酵性食物繊維をとりまく現状とエビデンス
「発酵性食物繊維」とは、食物繊維の中でも腸内細菌(善玉菌)の「エサ」となり、体内で発酵を促す性質を持つ成分のこと。大麦などの全粒穀物や、バナナ、ごぼうなどの根菜類、豆類などに豊富に含まれる。 腸内環境を整えるだけでなく、免疫機能のコントロールや肥満予防に関与する「短鎖脂肪酸」を生み出す材料として、今注目されている健康素材だ。
冒頭、発酵性食物繊維普及プロジェクトの事務局長を務める西沢邦浩氏が、発酵性食物繊維をとりまく現状とエビデンスを共有した。
欧米ではこれまで市場を牽引してきたプロテインブームが成熟期を迎え、次のトレンドとして「食物繊維(ファイバー)」への移行が急速に進んでいる。同氏はこのブームを支える科学的知見として、食物繊維なしでのプロテイン過剰摂取が腸内で毒素(インドール)を生むリスクがある一方、食物繊維を同時に摂取することで長寿に関わる有用成分へと代謝経路が劇的に変わるという研究を紹介した。
さらに、食物繊維の中でも「発酵性食物繊維」に焦点を当てた研究において、その継続摂取により、体重やBMIの減少、乳がんの発症リスク低減といった疾病予防にまでつながるというエビデンスを提示。
一方で、現代の日本では食物繊維、発酵性食物繊維ともに摂取量が減少しているため、1日3g以上の「プラスオン」を意識し、多様な食材から発酵性食物繊維を効率的に摂取していく社会実装が重要であるとした。
複数菌の「リレー」がもたらす腸管運動と免疫制御の最新知見
続いて、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 副所長の國澤純氏が「腸活最前線2026 発酵性食物繊維による新たな腸活アプローチ」と題した講演を行った。
國澤氏は、腸活の本質を「腸の蠕動(ぜんどう)運動の維持」と「免疫細胞の制御」であると指摘。免疫の暴走は体内で過剰な炎症を引き起こし、生活習慣病を招くだけでなく、皮膚のコラーゲンを破壊して肌のシワやたるみを促進させるという。
この暴走を抑制するのが、腸内細菌が発酵性食物繊維を分解して作る「短鎖脂肪酸(酪酸など)」だ。しかし、酪酸を生み出す中心的な菌は自身でビタミンB1を合成できないため、豚肉や玄米などの「ビタミンB1」を同時に摂取する必要がある。
また、腸内では「納豆菌」や「ビフィズス菌」など複数の菌による「代謝リレー」を経て短鎖脂肪酸が作られるため、特定の食材に偏った食生活を避け、多様な食材から発酵性食物繊維を摂取することが腸活の鍵になると締めくくった。
「リーキーガット」を防ぎ肌を守る、発酵性食物繊維を取り入れたインナーケア
続いて登壇した、まいこホリスティック スキン クリニック 院長 山﨑まいこ氏は、「発酵性食物繊維を取り入れた肌へのアプローチ」と題して講演した。
山﨑氏は、美容医療の効果を最大限に高めるためにも、土台となるインナーケア(腸内環境の改善)が最優先であると指摘。腸内環境が乱れて微弱な炎症が持続すると、腸粘膜のバリア機能が崩れて毒素などが血中に漏れ出す「リーキーガット」を引き起こす。これが全身を巡ることで皮膚のバリア機能低下やターンオーバーの乱れを招き、炎症反応の一種である「乾燥」や慢性的な肌荒れを誘発するという。
この肌の負のループを断ち切るアプローチとして有効なのが、発酵性食物繊維である。発酵性食物繊維から産生される短鎖脂肪酸は、腸管のバリア機能を強化して全身への炎症拡大を抑制。さらに皮膚の角化細胞の新陳代謝を整え、肌の保水力を直接的に高める働きを持つ。
山﨑氏は、外的なスキンケアだけでは限界がある保水力強化やシワ・毛穴などの肌トラブル改善において、日常的に発酵性食物繊維を摂取するインナーケアは不可欠なアプローチであると結んだ。
参画企業5社が取り組みを発表
「発酵性食物繊維普及プロジェクト」は、企業や業界の枠を超えてアカデミアと連携し、発酵性食物繊維の認知拡大と生活への社会実装を目指す組織。発表会終盤では、プロジェクト参画企業5社が登壇し、各領域における最新動向と取り組みを発表した。

Mizkan:「Fibee」で目指す「善玉美容」へのアップデート
1食で発酵性食物繊維が3g以上摂れるフードブランド「Fibee(ファイビー)」を展開。2026年度は「善玉美容」を掲げてコミュニケーションを強化していく。発表会と同時期には渋谷ヒカリエで期間限定のサンプリングイベントを開催し、「UV対策疲れ」や「口コミ疲れ(どの美容情報を信じて選べば良いかわからないストレス)」など、現代人が抱える美容の悩みを調査・提示。今後もブランドを通じて、無理なく美容と食を両立するライフスタイルを提案していく方針だ。
あじかん:ごぼうから生まれた新素材「MelBurd(メルバード)」と新商品「GOVOCE(ゴボーチェ)」
発酵性食物繊維を豊富に含む「ごぼう」を、手軽に美味しく食べられる形へと進化させる取り組みを推進している。世界的なカカオ価格の高騰や、国内におけるごぼうの消費量・生産量の減少といった課題解決を目指し、カカオを一切使わずに焙煎ごぼうの香ばしさと口溶けを再現したチョコレート風の食品素材「MelBurd(メルバード)」と、同素材を使用したチョコレート風菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」を開発した。
はくばく:主食を賢く置き換える「おこめにプラス」の食提案
1955年から減少の一途をたどる「穀物由来の食物繊維の摂取量」に着目し、白米に発酵性食物繊維を豊富に含む「もち麦」や「雑穀」を合わせる「おこめにプラス」という新習慣の提案を行う。栄養改善学会での啓発や、全国の小学校での食育授業、自治体やセブン-イレブンと連携した子ども考案おにぎりの商品化、コンビニでの大麦・雑穀商品の定番化などを推進している。
ドール:JO1を起用した「バナ活」による若年層の市場拡大
バナナに含まれる発酵性食物繊維「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」の重要性を啓発。バナナを継続的に食べる習慣を「バナ活」と名づけ、人気ボーイズグループJO1のメンバーをサポーターに起用。若い世代を中心に購買層を広げ、プログラム開始から1年でドールのバナナの新規購入者を140万人以上獲得。店頭では、ケロッグのシリアルと組み合わせた、日常に取り入れやすい食べ方の提案なども行っている。
日清製粉:高食物繊維小麦粉「アミュリア」を軸にした社会実装
レジスタントスターチやアラビノキシランなど多様な発酵性食物繊維を摂取できる小麦粉「アミュリア」を展開(「ウェルネスフードアワード2024」最優秀賞受賞)。フジパン等のメーカーと共同し、1年間で約60種類の商品を上市。タレントの藤本美貴さんを起用したメディア啓発や、約120社の社員食堂でのメニュー提供を通じて、発酵性食物繊維市場における“プラットフォーム的な食材”としての普及を目指している。
