カテゴリー軸から飲用価値軸へのパラダイムシフト
サントリービバレッジ&フードの新価値創造部を率いる大塚氏は、ペットボトルコーヒー「クラフトボス」の生みの親として知られる人物だ。
大塚氏は、これまでのブランドマーケティングが「特定のカテゴリー内での理解を深めること」に終始しがちであったと指摘。生活者の視点に立てば、朝起きてから夜寝るまで、カテゴリーに縛られることなく多様な飲料や食品を摂取しているのが現実である。同社は「消費者」を単に商品を購買する存在としてではなく、一日を通じて多様なベネフィットを求める「生活者」として捉え直すことで、視野の固定化を防ごうとしている。
この思想に基づき、同社は従来のRTD(Ready To Drink:そのまま飲める飲料)市場の枠を超え、外食や非RTD(粉末や希釈タイプなど)までを視野に入れた価値創造を目指す。大塚氏は「既存の強いブランドを磨き上げるオーガニックな成長とは異なる、非連続な成長への貢献」が新価値創造部の目的であると語った。この「非連続な成長」とは、従来の事業基盤では到達し得なかった価値、たとえば新技術の活用やサントリーグループの社内資産の横断的な活用によって実現されるものを指す。
新価値創造部は「マーケティング」「R&D」「生活者理解」の三つの機能を有している。横断組織として各機能の担当者や専門組織と連携しながら、新たなニーズの発掘や既存の枠にとらわれない商品の開発などを推進する体制だ。

1億円超を投じた独自の知見プラットフォーム
消費者を単なる購買者ではなく生活者として捉え直すための象徴的な取り組みとして、大塚氏は独自のグローバルプラットフォーム「Future Adventure Map」を挙げる。これは、世界の生活者の変化・機会・脅威を把握するためのデータ基盤であり、主要事業展開国8ヵ国を対象に、のべ8ヵ月間にわたるワークショップを経てデータを収集した。関わったメンバーは社内外合わせて100名を超え、総額1億円超の投資がなされている。
このプラットフォームの特徴は、生活者の“兆し”を一元集約している点にある。各国から厳選された30項目・合計240個の生活者インサイトが蓄積されており、生活者理解の担当者は必要な情報へ即座にアクセスできる。今後はAIを掛け合わせることで、マーケットの変化をよりスピーディーに捉える体制を構築していくという。
8ヵ国を対象としたワークショップの効果として「各国間の文化背景の違いだけでなく、共通するトレンドなども見出せるようになった」と大塚氏。日本で成功した商品を他国へ展開する可能性にも触れ、グローバル戦略における視座の広がりを強調した。
