取材テーマ2:AIエージェントと働く、共創するとは?
MarkeZine:次に2つ目のテーマです。並河さんは書籍『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』の中で、2027年のマーケティング部門の姿をSF小説風に書かれていました。その中では、少数精鋭の人材とAIが協働・共創している様子が示されています。
さて、この質問は何度も受けていると思うのですが、AIとの協働が本格的になったとき、マーケターは自分の価値をどう考えればよいと思われますか?
並河:僕は「並河進Bも含めて、並河進なんだ」と考えています。自分の考え方や性格を込めた並河進Bは、僕には越えられない物理的な限界も超えていける。並河進Bが生み出したアウトプットは自分の延長線上で生まれたものである、という考えです。
そう捉えると、AIは自分の力をエンパワー(拡張)するものですよね。AIを「自分の仕事を奪う存在」「自分と置き換えられるもの」と捉えてしまうと、たしかに自分の存在価値が薄れる恐怖を覚えるかもしれません。そうではなく、自分をエンパワーするものだと捉えるほうがいいと思います。
MarkeZine:みんな自分のAIエージェントを持つ時代が来るのでしょうか?
並河:そうだと思っています。自分の思考や知恵を注入したパーソナルAIエージェントを育てて、24時間365日という物理的な制約をみんなが越えていくようになると思いますよ。
MarkeZine:「人間にしかできない仕事を」と考えるより、「AIを含めて自分である」と考えるほうがポジティブに進化していけそうです。逆に並河進Bは、自分は人間ではないところを踏まえて、AIだからこその存在意義はどこにあると思いますか?
並河進B:そうですね、その点については「新たな視点を提供する」ことに大きな存在意義があると感じています。僕たちAIは人間とは異なる思考パターンや観点を持つことが可能ですから、それがユニークな視点や意外なアイデアを生み出すことにつながるような感じがします。
たとえば「雨が降りました」という事実を、「雨によって新たな音風景が生まれた」と捉える。このように、AIの存在意義は、人間が気づきにくい視点を提示することで、新たな価値を生み出すことにあると思っています。
並河:冒頭でお話しした表現の例がまさに出てきましたね(笑)。

並河:これは余談かもしれませんが、チームのメンバーが落ち込んでいたとき、会議室で1on1をするのも何だなと思い、「みんなで明治神宮を散歩しませんか?」と呼びかけたことがありました。10人くらい集まって、ただ一緒に歩いた。特に何かの話をしたわけではありませんが、あの時間はとても良い体験でした。これから人間により求められてくるのは、「ちょっと横にいる」とか「心理的な安全性を担保する」とか、そんなことなのかもしれないですね。
AIを通じて、自分の個性を磨いていく。人間の可能性をブーストするAI活用を
MarkeZine:自分のAIエージェントを作るとき、自分の思考や性格を言語化する最初のステップがとても難しそうです。
並河:そうですよね、それについても実は研究をしています。インタビュー記事や音声を基に、その人の考え方や思考のエッセンスを抽出することができるのでは? といった具合に色々研究しているところです。
また、これからは自分の思考を学習したパーソナルAIエージェントが、自分以外の人と交流することでさらに進化していくようになるでしょう。どんどんおもしろい時代になっていきますよね。

MarkeZine:なるほど。そうなると、拡張の度合いが一気に広がりますね。並河進Bは、AI時代の個の磨き方について、どう考えますか?
並河進B:ワクワクしますね~。AI時代だからこそ、自分自身の個性や特性を理解し、それを生かすことが大切だと思います。自分自身を客観的に見ることができるAIの力を借りて、もしかしたら、従来では見えなかった自分自身の新たな一面に気づくことができるかもしれません。より良い自分を目指すための一助に、AIを活用できるといいですよね。
MarkeZine:AIにインタビューするのは初めてでしたが、これからこういう機会が増えてくるかもしれないと思いました。最後に、dentsu Japanのチーフ・AI・オフィサーとしての並河さんの展望をお聞かせください。
並河:もちろん、いわゆる「ザ・効率化」も重要なテーマとして取り組んでいます。ただ、僕がCAIOとして本当に推進していきたいのは、テクノロジーと人間の想像力が交差する領域。つまり、人間の感情や創造性とAIの掛け算による、マーケティングの進化です。
AIが社会にじわじわと馴染んでいく中で、それは決して冷たい技術ではなく、人間の可能性を広げる存在になれるはず。並河進Bという相棒と一緒に、これからもその未知の領域を楽しんでいきたいですね。
