急成長を続けるモバイル事業
データの活用によりネットとリアルの垣根を越えた展開を進める楽天が、今最も力を入れている事業の1つがモバイル事業だ。モバイルEC市場の成長スピードが約1.2倍と言われるなか、モバイル版楽天市場の売り上げは毎年1.5倍という圧倒的な成長率を維持している。しかし、河野氏の所属するモバイル担当のチームではさらなる成長を目指し、近い将来PC版楽天市場の売り上げを追い抜くことを目標に、ページ編成やマーケティングといったさまざまな戦略を練り、実行し続けている。
PC版での売れ筋商品は家電や日用品、食料品だが、モバイルの場合は戦略の違いからファッションやダイエット、コスメが売れている。また、ユーザーにも違いがある。
「モバイルの場合、5歳ほど若いです。PCは30代40代ですが、モバイルは20代30代が多いですね。しかし、最近では40代50代がすごい勢いで伸びてきています。そういった年代の方々も、日常でお子さまやお友達とメールのやり取りをしているので、携帯での文字入力にも慣れています。ケータイ版楽天市場でのお買い物で必要になるのは文字入力だけなので、当然そのステップを踏むことは可能です。以前は、モバイルは場所と時間を選ばないけど使いづらいと言われることもありましたが、モバイルの方が、使い勝手がいい、買い物しやすいと言われることを目指してサイト改変に取り組んでいます」
既存ユーザーとの接点は圧倒的にメール
楽天では、既存ユーザーをサイトへ誘導する施策として、特にメールが高い効果をあげているという。
「他社のデータを見ると、既存ユーザーは公式メニューやブックマークからアクセスすることが多いのですが、弊社でのアンケート結果では、ダントツでメールでした。メールを配信すれば、ブックマークしてもらわなくても受信箱にあるメールからアクセスしてもらえます」
モバイル向けのメール媒体は「モバイルニュース」という総合媒体のほか、レディスファッション、エンタメニュースや、ポイント利用明細も含めると40種類以上あり、相当数のメールでユーザーと接している。そのほとんどのメールは、エイケア・システムズの配信システム『MailPublisher』を利用している。
モバイルの特性上、昼時、夕方の帰宅中、在宅時など、時間帯によってユーザーの購入シーンが異なり、それに伴い売れ筋商品も変わる。そのため、リアルタイムで情報を発信できるメールを活かしたプロモーションは、効果的な手法の1つだ。楽天ではメールを配信する曜日と時間はPC以上に細かい配慮をし、そのシーンに応じた見せ方を意識しているという。
「PC版楽天市場では日替わり品が好評ですが、モバイルの場合はタイムセールが人気です。もちろんタイムセールの案内メールの効果は大きいです」
メールを送る際のユーザーのセグメントについても、性別や年代別といったベーシックな指標だけでなく、行動コンテキストも交えたターゲティングを行っている。