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「今さら紙?」の新規事業で成功した経営者の話

 毎回ユニークな事業を行っている企業の経営者にインタビューする「すべらない事業のつくりかた」。第2回はNYや上海などに住む邦人向けフリーペーパー事業を行う Trend Pot Inc. 創業者の新谷哲士氏にすべらない事業開発の秘訣を聞いた。

Q 貴社の事業内容を教えてください

 海外在住の邦人向け日本語のフリーペーパーの発行を現地で行っています。具体的にはニューヨーク、ハワイ、そして、中国、上海、広州、北京でフリーペーパーを発行しています。

 現在のフリーペーパー事業は、2001年にニューヨークで週刊『NYジャピオン』を発行したところからスタートしています。

フリーペーパー事業は『NYジャピオン』からスタート

Q 事業を始めるきっかけは?

 私が独立したのは28歳のときでした。前職のリクルートでは、主に求人媒体の営業をしていました。リクルートを退職後、すぐに起業せずにヨーロッパやアメリカなど友人の家を訪ねながら、世界を旅していました。その旅の途中、「海外で現地邦人向けのスポーツ新聞のような事業をやりたい」という友人がいました。

 しかし彼には出版に関する知識が何もなかったので、とりあえず前職のリクルートでのノウハウがある程度あったのと、幸い時間も十分にありましたので、とりあえず手伝おうかということで最初に始めたのが、現在の事業に携わったきっかけです。

 この雑誌は、今でもサンフランシスコで発刊されています。

Q 他社との差別化・競争優位性はどこでしょうか?

 弊社がニューヨークで『NYジャピオン』を発行する前までは、現地の邦人向けフリーペーパーは、発行する側の書きたいこと、発信したいことありきのものでした。要は広告主目線で作られたモデルではなく、編集者をベースとした発想が元になっているものが多かったのです。その為、それまでのフリーペーパーは、広告効果の出にくいものが多い状況でした。

 しかし、フリーペーパーというのは、基本的には、広告主に宣伝効果を感じていただけないと成り立たないビジネスです。そのため、弊社は出稿価値があるメディア、すなわち「広告効果の出るメディア」を作ることに焦点を絞りました。

 また、創業当初なので、少人数で事業を回していく体制をどう実現するかということも考え抜きました。もちろん潤沢な資金があるわけではないので、プロのライターさん雇うこともできません。そこで思いついたのが、フリーペーパーのメインコンテンツは日本にある記事を買って調達するということでした。

 創業当初の、ただでさえ営業活動その他で忙しい中、自社で記事を作ることは無理がありましたし、無理して自社で行っても、クオリティの低いものになる可能性が大でした。そのため、日本のスポーツ新聞社各社に「記事を売っていただけませんか?」、「海外でのプロモーションになります」とアプローチし、版権を売ってもらいました。

 こうしてフリーペーパーコンテンツの基盤を作り、受注した分だけ広告の枠を取りました。

 フリーペーパーは、低資本での参入が可能なビジネスです。弊社も起業した際は3人の小所帯でした。一般的には、参入障壁の低さは、どんな事業をやるにしてもデメリットになってしまうことは確かです。

 では、参入障壁の低い事業ドメインでどのように参入障壁を作かということなのですが、フリーペーパーの場合は「他社が追いつけないほどの大量の広告数とその広告成果」だと思っています。多くの方は「コンテンツの質や特徴」と考えるようですが、コンテンツだけでは参入障壁にはならないというのが私の認識です。極端な例ですが、面白い記事はお金をかけてよいライターを雇えば実現可能になりますので、後発で市場に参入した会社でも先駆者を追いこせる可能性を秘めています。だからこそ参入障壁は、広告の数と成果なのです。

 既に膨大な広告主がついているフリーペーパーに追いつくには、資金やマンパワーで解決できるもの以外に「信頼」や「実績」という要素が必要になります。そう考えるとフリーペーパーの参入障壁は、やはり「膨大な広告主数」、そしてその「広告効果」。これしかないと思っています。

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