車と一緒で、CMSにも種類がある
―― CMSというキーワードでひとくくりにされると違いがわからないのですが、それぞれ製品ごとに得意、不得意がありそうですね。
T氏 はい。車にも車種やグレードによって違いがあるように、一言でCMSといっても、製品によってスペックには差があり、製品ごとにできることできないことがあるんです。やはり、エンタープライズCMSにはエンタープライズの特徴があり、オープンソースはオープンソースの特徴があります。
エンタープライズCMSといわれるジャンルの製品は数千万円以上するわけですが、システムのカスタマイズ要素が多く、アプリケーションといっても自社システムとの連携などの拡張ができるというメリットもあります。
一番企業向けで勢力が強くなっているWebCMSの場合は、その多くが数百万円で購入できるうえ、機能的にもWebサイトを構築するには十分な機能を有していますが、アプリとして完成しているのでカスタマイズには不向きな製品が多いのも事実です。
一方、最近Web制作会社の人はMovable Typeが好みだったりする傾向があります。これはやはり、低価格であるということとオープンソースに近いノリで、誰かが作ったプラグインなどもいっぱい出回っているからだと思います。Movable Typeは世界的にもシェアが増えているようですし、これからのCMSベンダーにとっては今後かなり脅威だと思いますよ。
これからどうなる!?CMS業界最新動向
―― 今後の業界の流れを、どのように見ていますか?
T氏 WebCMSは機能がどんどんエンタープライズ化していくと思います。なぜならば、低価格の簡易CMSがどんどん機能拡張してくるのからです。例えばシックス・アパートがより企業向けの商品を出したりすると、かなりの脅威になってくるのではないでしょうか。(注2)やはり、コストの面で競争力がありますからね。また、現状多くのCMS製品は「静的なhtmlファイルを生成する」という前提で作られていることが多いのですが、今後はより「Web2.0」的なサイトを管理していけるシステムになっていくと思います。
よりWeb2.0的なWebサイトになると、外部データとの連携も意識したサイト作りが必要となります。他のコンテンツサーバーから自動的に情報を取得するとか、動的表示の要素とか、サイト内の表示する情報をパーツとして他のサイトに展開するなど、RSSやトラックバックなどの機能を含め、よりサイト内のデータをいろんな形で表示できるような機能が必要になってくると思います。あとは、どこまで本当かわからないですが、CMSツールは海外の製品だけでも2000本ぐらいあるらしいんですよ(笑)。
―― 2000本ですか!
T氏 確か日本だけでも30~40ぐらい製品がある状況です。マーケットの規模に比べて、製品数が多いので、勝ち残るためには相応の戦略が必要ですね。
昨年度流行ったキーワードである、web2.0の提唱者、ティム・オライリーによると、「Wikiが2.0でCMSは1.0」ということになるのですが、日本人的な感覚で言うとCMSはWikiとは違い「Webサイトを企業のグループウェア的に、複数の担当者がWebブラウザから簡単に更新できるツール」という捉え方なので、CMSというキーワードは、今後も残っていくと思っています。
それから製品体系としてCMSが今のようにパッケージ製品で成立することができるかというと、価格が安い製品ならともかく、価格の高い製品が「パッケージだから、カスタマイズはできません」と言いきっていると、、今後どこまで生き残れるかは疑問ですね。
なぜなら、CMSのパッケージ製品よりインターネットの方が進化が早いからです。新しい技術が次々と生まれていて。技術発展があまりに早すぎるので、Webサイトで利用されるCMSがパッケージ製品のままでは、今後製品のほうがついていけなくなってしまう可能性もあるため、そういう意味ではCMSで単なるパッケージというコンセプトは、この先限界があるかもしれませんね。
例えば、もしgoogleが企業向けCMS的な製品を出してくると、業界図ががらりと変わってしまう可能性もあると思います。しかし、アクセス解析ソフトの例でいえば、Google analyticsと他のアクセス解析ソフトは、今のところまだ共存しているので、あくまで可能性としてという意味ですが。