検索技術そのものの優劣がわかりやすかった2000年頃であれば、優秀な検索技術が十分なアピールになっただろうが、今日は無意味だ。ユーザが求めていることは技術の違いそのものでなく、その技術がどれだけ検索体験を豊かにするか、そして実感できるかということだ。
例えば「日本語特有の表記ゆれに対応すること」は別に国産検索エンジンでなければできないことではないし(事実、Googleがすでにやってる)、その「ある・なし」を言葉で説明されても日常の検索利用シーンにおいてそれが"実感できる"ことは多くないのだ。
白黒テレビとカラーテレビといったように、誰が見ても一目瞭然で違いがわかる製品同士であれば、消費者はどちらを選べばいいか判断できるが、ある2社の液晶テレビを目の前に並べられて一方を選択せよと言われても、一部のマニア層以外の消費者には違いなど全くわからないだろう。今日の検索サービスは利用者の満足を満たすそこそこの完成度に達しているわけで、少々の技術の違いをアピールされても差異は認識させることはできないのだ。
ただし、体感することで差異を認識できるケースはある。例えば米Ask.comはダイレクトにワンボックス(自然検索の上に、クエリに該当する情報を表示する)の表示機会を増やすことでその便利さを伝える努力をしている。つまり、技術的優位性があるならば、いかに日常の検索シーンの多くの機会で体験させ、実感させるかを考えることが必要なのだ。
4. Yahoo!検索の利用が習慣化されている
日本国内の検索市場において、新規参入検索会社がターゲットとするユーザはGoogleでなくYahoo! JAPANだ。というのも「Googleユーザは『Googleが好きだから』という明確な理由があるが、Yahoo!ユーザにはそれがない、ただ漠然と利用している」と考えられているからだ。私も当初はそう考えていたのだが、Yahoo!優位が全く動かない検索シェアの推移、そして欧米の傾向を見ていると、どうやらYahoo!検索が利用されるのは漠然と利用しているからではなく「習慣化しているから」ではないかと考えられる。

つまり、検索連動テレビCMが昨年流行ったように、消費者は興味・関心を持ったものに対して検索で情報を探し出すという行動が日常化している。検索をするという敷居が低いからこそクロスメディアは成り立つのだろうが、それは同時に特別な行為ではない、習慣化されているとも言える。一度習慣化されてしまうとそれを変える(変えさせる)のは難しいことで、「Yahoo!=インターネット」と捉えられていたといってもいい日本市場で「Yahoo!検索」の優位を揺るがすことは困難であろう。
Yahoo! JAPANの壁を超える検索エンジンが出てくるか
世界的にGoogleが成功しているからといって、日本市場でそのGoogleがYahoo!を追い越せないように、中国や韓国で成功したからといって日本で成功する保証はどこにもない。特にアジア各国においては国固有の事情によって作り上げられた超え難き参入障壁の存在や、先行者利益により築き上げられた優位性によるものが多い。そうした要素を持つのが国内においてはYahoo! JAPANである。市場攻略がいかに難しいかはこれから日本に上陸する彼ら自身もよく理解しているだろう。
ただ同時に、ネット関係者の中には「Yahoo!ひとり勝ち」状態が面白くないと思っている人は決して少なくなく、そうした地位を脅かす存在としてもぜひ突破口を見出してもらいたいものである。