ミッション:ユーザーとメーカーが協力し合う「生活者主導型市場」の実現を
インターネットの普及により、誰でも容易に情報の送受信が可能になった今、生活者の「クチコミ」の影響は増すばかりだ。その影響力にいち早く気づき、株式会社アイスタイルが、コスメをテーマにしたコミュニティサイト「@cosme」を立ち上げたのが10年前。いまや登録者135万人、日々アップされるクチコミ数750万件を越える大人気サイトへと成長した。
その「@cosme」のメーカー側に対する窓口となる「ソリューション事業部」を部長として取りまとめるのが、このたび登場いただいた濱田健作氏だ。
「インターネットの普及により、産業の構造が大きく変わりつつあるといわれています。ユーザーが自らの声で情報を発信し、その声が提供者側の商品開発や販売活動に大きな影響を与えるようになってきました。そして、この傾向はますます強まっており、メーカーは顧客を出発点としてビジネスを組み立てる力が必要になっています。「@cosme」は、この『生活者主導型市場』の実現を担う一翼でありたいと考えています」
インターネットという、オープンでリアルタイムなコミュニケーションツールがあるとはいえ、散乱する「声」をまとめ、ニーズとして掴むには、時間やテクニックが必要であることは変わりない。そうしたユーザーの声を取りまとめ、メーカーへと橋渡ししていくのが、「ソリューション事業部」のミッションだという。
「日々の仕事として実際に行なっているのは、「@cosme」のユーザーをターゲットとしたリサーチサービスや販促サービスを企画開発し、メーカーの方々に紹介することです。しかし、それを通じて私たちが実現しようとしているのは、まさに『生活者主導型市場』の実現に伴う新たな価値創出のお手伝いと考えています。
『@cosme』の強みは、やはりその情報量とバリエーションの豊かさ、そして「リアル感」にある。誰もが自由に発言し、中にはメーカーにとって“うれしくない”コメントもアップされる。しかし、そうした「コントロールされない情報」が集まるからこそ、無数に存在する「生活者の声」をまとめた「リアルな情報」は、メーカーにとって新しいビジネスのヒントの山となりうる。そう気づいてもらうために数年を擁したという。
「かつて、メーカーの窓口の方の中には『誤解されるようなコメントを削除してほしい』『ランキングに手心を加えてほしい』とおっしゃる方も少なくはありませんでした。しかし、中立性こそ『@cosme』の生命線です。そして、中立であるからこそ得られる“リアルな情報”がメーカーにとって有用であることは間違いありませんでした。それをご理解いただくために、一人ひとりの担当者が毎回真摯に伝えていくことを徹底したのです」
その日々の取り組みのおかげもあって、近年は『@cosme』のスタンスに共感し、自身のビジネスにつなげる方策を建設的に考えるメーカーがほとんどだという。むしろマイナス評価の声こそ、改善のチャンスとしてポジティブに捉えるメーカーも増えつつある。
「たとえば、ユーザーの声が必ずしも正しいわけではないんですよ。時に誤解から生じるネガティブな情報も掲載されることがある。そういう声に出会うと、よりよい商品づくりに心を砕き、誠実であろうとするメーカーの皆さんに接している身としては、歯がゆい思いでいっぱいになることがあります。しかし、誤解が生まれたのは何か問題があるはずなんです。そこで誤解をあえて取り上げつつ、正しい使い方を紹介するという販促の企画を提案したところ、商品の誤解を解消し、利点を改めてアピールすることができたのです。そうした“声”を起点にした企画を通じて生活者と供給側との連携を深め、お互いにとってよりよい関係が構築できないかと思っています」
こうした営業活動の中で、濱田さんが重視しているのは、仕事を通じて得た「リアルな声」を関係する場へと流通させていくことだという。社外からの「@cosme」に対する声だけではなく、社内であがる他部署への意見も、客観的な声であれば、遠慮なく自ら投げかけていく。
「仕事において一番怖いのが“独りよがり”でしょう。他の部署からどう見えているのか、メーカー様からどう見えているのか、それをお互いがフィードバックし合っていけば、よりよい仕事ができると思うんです。それは、ユーザーの声をメーカー様に届けるのと、なんら変わりないと思うんですよ」
そのスタンスは、当然、部内においても徹底されている。週3回行われる社内のマネジメント会議への出席、そして、部内では毎夕、その日の報告会を兼ねた「夕礼」を行なっている。上層部が何を考えているのか、また、部下や同僚が何を考えているのかを共有することが、組織の活性化につながると信じるからだ。
「もちろん、営業として案件が獲得できれば『やった!』という喜びは得られるでしょう。しかし、自分たちが何のためにやっているのか、その全体像が見えてこそ、やりがいは増大し、継続していくのではないかと思います。『生活者主導市場』の実現という目標を共有しつつ、それがどんな社会をもたらすのか、理解できていなければお題目にすぎません。それがどんな風に世の中にいいのかを自分自身で問いかけながら仕事をすることが大切だと考えています」
メーカー向けサービスの企画、提案というプレーヤーとして活躍するだけでなく、部長としてマネジメントする役割を担う濱田さん。社内でも「ステキ上司」との呼び声高い、そのスマートな仕事ぶりを拝見させていただいた。(次ページへ続く)