NBC Universalはユニバーサル・ピクチャーズをはじめとする映画会社、テレビネットワークなどを持ち、一方のNews Corporationも映画会社の20世紀FOXや、テレビネットワーク、衛星放送、出版事業などを展開する、いずれ劣らぬ巨大メディアグループ。この2つのグループが、3月22日、ネットでのビデオ流通に革命を起こす、新たなサイトを開設すると発表した。
新しいサイトでは、2つのグループが持つ、映画、ドラマ、テレビ番組などの映像作品を提供。「Heroes」「24」「サタデー・ナイト・ライブ」「シンプソンズ」などの人気番組を全編、あるいはクリップのかたちで公開する。また、ユーザーが自分でつくった作品を公開することも可能なソーシャルビデオサイトとしても機能するという。サイトの収益は広告収入とダウンロード販売などで構成されると見られており、多くの作品が無償で公開されるようだ。すでに広告主として、キャドベリー・シュウェップス、シスコ、インテルなどが名乗りを上げている。さらに、動画の配信に関しては、AOLや、MSN、MySpace、Yahoo!も参加を表明。これによって、全米のインターネットユーザーの96%にリーチする。
CNNMoney.comが報じたところによると、NBC UniversalとNews Corporationは、YouTubeの親会社であるGoogleともビデオ配信について協議しているとのことで、「我々はYouTubeキラーではない」とNews CorporationのCOOであるPeter Chernin氏が述べたという。
動画投稿サイトのYouTubeは2005年2月の創設後、ユーザーがビデオを投稿して共有するサイトの先駆けとして大成功を収めたものの、著作権者の許可を得ずにアップロードされた大量のテレビ番組や映画作品が問題視されてきた。しかし、その人気に後押しされるかたちで、いくつかの大手メディア企業とパートナーシップを結んでいる。2006年にNBC Universal、Warner Music Group、Universal Music Group、CBSと提携。そして2006年10月10日、GoogleがYouTubeを16億5,000万ドルで買収。2007年3月にはBBCとの提携が発表されたばかり。NBC Universalは早い段階でYouTubeと提携したメディア企業のひとつだった。
YouTubeにビデオクリップの削除を要求してきたコンテンツホルダーのひとつ、Viacomは先日10億ドルの賠償請求をもとめてYouTubeと親会社のGoogleを提訴している。しかし、Viacomは今回の提携に加わらなかった。
YouTube包囲網とも言える今回の巨大グループ同士の提携。質の高い、人気作品が目白押しということもあって世界中で注目を集めているが、それだけでユーザーは満足するのか。あるいは「それだけでいい」というユーザーの掘り起こしに成功するのか。配信に参加するAOLのRandy Falco会長は「この新しい事業は、インターネットが成熟した娯楽メディアであることの証明だ」と語ったという。多くの人が頼まれもしないのに、著作権を無視して5分程度の動画をアップし続けることで得た「YouTube体験」とはなんだったのか、ここで考えてみる必要がありそうだ。
2006年にオンラインビデオ広告に使われた広告費は4億1,000万ドル、今年はその2倍になると予測されている。NBC UniversalとNews Corporationの新しいサイトは、2007年夏にオープンする予定だという。
参考資料:"NBC, News Corp. gang up against YouTube" (CNNMoney.com)