「湯葉(ゆば)」という食べ物をご存知ですか? 精進料理の食材として知られるこの食材を扱う老舗が、ネットショップを開き、見事に「ゆば」で一番有名なお店になるまでを、店長の松田正司さんにうかがいました。後編はこちら。
店長紹介
松田 正司(まつだ・ただし)昭和26年5月生まれ。上に姉ばかり4人! 創業(昭和9年)以来「ゆば」一筋の有限会社松田甚兵衛商店の二代目。東京、京都に毎日、業務用(料亭用など)「生ゆば」を製造卸売販売するとともに、ネットショップを通じて小売りにも進出。受注してから製造する「作り立ての生ゆば」を販売している。趣味は、ギター、天体観測、自動車、スキーなど。現在の一番は強いて言えば、パソコン。ゆば甚は現在、
本店、
楽天市場店、
Yahoo!ショッピング店 の3店を運営。
「ゆばってなんですか?」という人に、魅力を伝えたい
「ゆば」という食べ物は、知っている人は知っているけれども、知らない人はまったく知らない食べ物ですよね。
はい。ネットショップ「ゆば甚」を始めたのも「ゆば」という食べ物を、もっと広く皆さんに知ってもらいたいと思ったからなんです。「ゆば」は豆腐と同じように、大豆を原料としています。大豆からつくった豆乳を煮ると表面に膜ができるんですが、それが「ゆば」です。もともとは中国から伝わった食べもので、日本では古くから僧侶の重要な栄養源として、寺院の精進料理には欠かせない食品でした。現在では豊かな栄養素が見直され、色々な料理に使われるようになっています。
「ゆば」は、大豆の植物性蛋白質と脂肪をはじめとした
さまざまな栄養素を含んでいる。(写真提供:ゆば甚)
長い伝統のある食べ物なんですね。ゆば甚さんで販売している「生ゆば」の特長はなんでしょうか。
当店では、ゆばの製造に昔から使っていた井戸水を使っています。ここ、但馬地方は昔から「但馬に行くときゃー、弁当忘れても傘わすれるな」と言われるほど雨の多いところですから、水も豊かです。
但馬地方は兵庫県の北部ですが、やはり水のおいしいところには、おいしい食べ物があるものですね。お酒や豆腐も水が命とよく聞きます。
そうですね。わかりやすいように「豆腐」にたとえてみましょう。豆腐は使う水によって製品の味も大きく左右されます。都会や地方の大手スーパーで売られている「都会の豆腐」を買って食べると、昔ながらの豆腐の味がまったく感じられません。田舎で生まれ、田舎で育ち、田舎に暮らしてる者にはまったく味のない豆腐なんです。
地元の豆腐屋さんが作っている豆腐には、子供の頃から食べてた豆腐の味、豆の味がします。使ってる大豆はそんなに違わないはずで、むしろ都会の方が高い大豆を使ってることもあります。ある豆屋さんから聞いた話では、田舎の豆腐屋さんは普通の大豆を使っていることが多いそうです。
店の近所に、お婆さんが昔ながらの石臼で豆を挽き、手作りで作ってる豆腐がありますが、これは本当にうまい。豆は普通の大豆です。「手作り」ということもありますが、やはり地元・但馬の水が豆腐のおいしさに大きく関係していると思います。
なるほど。そのお婆さんの豆腐も食べてみたいですね(笑)。ゆば甚さんのゆばも、同じようにつくり方にこだわりがあるのでしょうか。
はい。ゆばづくりには大豆は非遺伝子組み替え大豆と、国内産エンレイ大豆とをブレンドして使っています。遺伝子組み替え大豆は使用していません。
また、まとめて製造している「ゆば包み」「ゆば小町」「海老身上の湯葉巻き」などの加工品以外の生ゆばは、発送日に作った作り立ての品物を発送しています。合成保存料などは使用していません。まとめて製造している加工品も冷凍保存しており、保存料は一切使用していません。
ほとんどの地域は翌日到着ですから、購入した人は、前日作られた「生ゆば」を食べることができるんですね。これってすごいことですよね。ところで、ネットショップでは「生ゆば」のみの販売で、実店舗で販売している「乾燥ゆば」は販売していないそうですが、これはなぜですか?
生ゆばと乾燥ゆばでは、味がまったく違います。乾燥ゆばを水などで戻して生ゆばと同じような格好にしても、味は生ゆばの味には戻りません。ネットショップでは、特に生ゆばの味を知っていただきたいと思い、生ゆばだけを扱っています。 それと、ゆばというのは薄いものですから、乾燥ゆばは配送途中で、割れたり壊れたりする可能性が大きいのです。クレームの問題もありますので、ネットでは生ゆばだけにしています。