顧客を知るための「分析」環境
ライフ&ビーナス社を例にとって考えてみましょう。
ライフ&ビーナス社では今まで、事業部門や販売チャネルごとに顧客データベースや売上情報がバラバラに管理されていました。この状態では健康食品と化粧品事業部両方で購入履歴がある「Aさん」がいたとしても気付くことができません。また、Aさんがどのような商品を好み、どのような販促キャンペーンをきっかけに購入する傾向が高いか、次はいつごろ購入することが予測されるかといったことも、データを漫然と見ているだけでは知ることはできません。これではライフ&ビーナス社の優良顧客になり得る顧客の囲い込みチャンスを、みすみす逃してしまう事にもなりかねません。
今回、ライフ&ビーナス社では統合顧客データベースを構築し、さらにデータマイニングなど高度な分析が行える分析環境を整備しました。これにより「30代女性で過去に3回以上、化粧品を購入したことがある」顧客グループに絞ると、購入確率は70%と非常に高くなることが分かりました。さらに、平均購入金額が他の顧客グループに比べ高いことも分かったのです。
ライフ&ビーナス社のマーケティング担当者も、経験から化粧品と美容液の併売は想像できていましたが、年齢などの顧客属性やリピート回数、購入金額との相関関係までは分析しきれていませんでした。こうした複数の項目間の相関関係を、人手による分析で行うには限界があります。データマイニング・ツールなどを活用し、仮説・検証のサイクルを継続的に続けていきながら「分析力」を高めていくことが必要不可欠です。
ライフ&ビーナス社では、分析の結果、高い効果が期待できる顧客グループだけにターゲットを絞った、ダイレクトメール・キャンペーンの実施が可能になりました。データベースの統合と分析環境の整備により、眠っていたデータから、生きたデータが手に入ったのです。
過去のキャンペーンの成果、さらに売上や顧客の属性情報など社内に散在するあらゆるデータから最適なターゲットと施策の組合せを見つけ、どれだけの効果が期待できるかを予測し、その上で最適なリソースの配分を決定していくのが、本来のデータ分析を活用したマーケティングです。そのためにも、社内に分散しているさまざまなデータを統合したデータベースを構築して分析環境を整備することが、最初の重要な課題になってきます。
大場部長はデータ分析をもとに、ターゲット層を限定してキャンペーンを打つことにしました。反応はどうなるのでしょうか。結果は果たして……。