ドロップしていた顧客層を新たに獲得
国内最大級の宿泊予約サイト「楽天トラベル」。当初はビジネス目的の利用が中心だったが、ここ1~2年は個人旅行・レジャーでの利用が増えるなど、さまざまなシーンで使われるサイトへと成長してきている。
利用シーンが多様化するに連れて、楽天トラベル内で意識されるようになったのは、ユーザーと楽天トラベルとをつなぐチャネルも多様化させること。スマートフォンなどのモバイルへの対応を強化し、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアにも率先して取り組んでいる。
そんな中、楽天トラベルで議論の俎上に挙がるようになってきたのが宿泊予約の方法。「宿泊予約はまずWebで完結させるようにユーザーインターフェースや機能を整備してきました。でも、ユーザーの求めるチャネルは多様化してきています。Webだけではなく電話も有効に活用していこうと考えるようになりました」と楽天トラベル株式会社 常務執行役員 事業戦略部 部長 鎌田啓之氏(写真右)は同社内での変化を明かしている。
ただ、電話予約を打ち出すことへの懸念もあった。全体の予約数が伸びないままWeb経由の予約が電話予約に流れてしまい、コールセンターのコストだけが増えて収益率が悪化するのではないか、というものだ。
様々な結果が予想される中、楽天トラベルではモバイルサイト上で、電話予約を前面に表示。すると、モバイルサイト経由の予約数は減らず、電話予約の件数だけが大幅に増えたという。つまり、これまで楽天トラベル経由で予約をしていなかった新規顧客層を、見事に取り込めたことになる。
「じっくり探したい時はじっくり探してWeb、もしくはモバイルサイト経由で予約する。本当に急いでいる時は申込フォームの入力すら煩わしくて電話を掛ける、ということなのだと思います。あらゆる利用シーンに対応できるインフラとして私たちのサービスを浸透させていくためには、電話も必要だったという気づきを得ることができました」(鎌田氏)
電話予約強化の弊害はコスト増
電話予約を強化したことで全体の予約件数が増えた。すると今度は、収益性改善のためにコールセンターのコストを抑える取り組みも必要になってくる。
楽天トラベルは早くからコールセンターを活用してはいたが、基本的なトークマニュアルの見直し、オペレーターのトレーニングといった改善を積み重ねていたものの、予約を完了させるまでには数分掛かっていた。その壁はなかなか越えられずにいたという。
そんな時に紹介されたのがTIS株式会社が提供するWeb・電話連動型顧客接点強化ソリューション「Callクレヨン」。同サービスの利用用途はビジネスの目的によって様々だが、今回、楽天トラベルではモバイルサイトから宿泊予約の電話が入った時に、オペレーター側で「ユーザーがどのページを見て電話したのか」を把握できるようにした。
宿泊予約が完了するまでのフローは
- 宿泊する施設を見る
- サービス・料金などを検討して宿泊プランを選ぶ
- 日程や人数などの条件を指定する
- 名前・住所・電話番号などの個人情報を伝える
といった具合になる。電話の際に見ていたページがオペレーター側で分かれば、1~3までの情報は改めて確認せずに済む。その分だけ1通話当たりの所要時間を減らすことができるのだ。