新しいデバイスからYahoo! JAPANへのアクセス状況
「最新データから見る マルチデバイス時代の検索ユーザー動向」と題された今回の講演は、ヤフー独自の調査データの分析から、スマートフォンユーザーの検索動向を明らかにしていく興味深い内容となった。まず、Yahoo! JAPANスマートフォントップページのPV数の推移を見てみよう。2010年2月を100%として算出されている。
毎月、対前月比110~140%の割合でYahoo! JAPANトップページへのアクセス数は増加しており、そのボリュームは1年前と比べ、約7.6倍に上っていることがわかる。Android端末の本格的な市場投入が始まった2010年11月から、さらに伸び率が加速しているのが特徴だ。
次に、iPadからのアクセスも紹介。西谷氏によると、「iPadからのアクセスも、スマートフォンと同様に急速な勢いで上昇傾向を見せている」という。iPadは2010年5月末に発売されたが、2011年1月までの間にアクセス数は当初の3倍にまで伸びているそうだ。
今後も、iPad2が4月28日に発売開始となり、NTTドコモから2011年 夏モデルの約20種がSIMフリー対応となる発表があったりなど、新しいデバイスを取り巻く環境は目まぐるしい動きを見せている。
新しいデバイスが、アーリーアダプターのみならず、一般ユーザーの元へ届くようになるのは時間の問題であり、それにともなって、新しいデバイスからのアクセス数もさらに速いスピードで増加していくだろう。「新しいデバイスへの対策は、とにかく早く挑戦することが大切。そのためには、現状をしっかりと理解した上で、PDCAのサイクルをひとつでも多く回していく必要がある」と、西谷氏は語る。
先に紹介したYahoo! JAPANトップページのPV数の推移からは、新しいデバイス市場の成長を見ることができた。タッチパネルが主流の新しいデバイスでは、ホーム画面のアイコンをタップするだけで、すぐにインターネットにアクセスできるので、その手軽さからも、トップページのPV数が端末数の増加とともに伸びていくのは、自然とも言える。
では、タッチパネルでの文字入力が必要な、検索の方はどうなのか。検索結果ページのPV数について「スマートフォンでの検索数は、Yahoo! JAPANトップページへのアクセス以上に、速いスピードで増加傾向にある」と西谷氏は明かす。同様に、iPadからの検索結果ページのPV推移についても近しい傾向にあるという。
PC・モバイルにおける検索数の動向
一方、4デバイス(スマートフォン・iPad・PC・モバイル)の検索結果ページの合計PVの推移については、ゆるやかな増加傾向を見てとることができるようだ。この傾向について西谷氏は、「新しいデバイスからのアクセス数や検索数は、既存PCやモバイルからのスライドではないと言える。ただし、総検索数に対する各デバイスのシェアには変化がみられる」と指摘した。
検索結果ページのアクセス数における各デバイスシェアを2010年2月時点と2011年1月で比べてみると、PCのシェアが未だ圧倒的ではあるものの、他のデバイスのシェアが1年前よりも確実に増えていることがわかる。
- PC:88.5%→83.2%
- モバイル:11.2%→13.6%
- スマートフォン:0.4%→2.8%
- iPad:0%→0.4%
「新しいデバイスは、年に数%の勢いでシェアを伸ばしており、今後もこの傾向は続くだろう。新しいデバイスからのアクセスや検索数は増えており、PC・モバイルといった既存のデバイスからの減少も見られない。デバイスが多様化する現在のマーケットにおいて、『検索』に対する需要は一段と高まっている」と西谷氏は主張した。
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AISASの時代は終わっていない
さて、昨今のソーシャルメディアの台頭により、SIPS(共感する→確認する→参加する→共有・拡散する)という新たな消費者行動モデルが提言されているが、これによって既存のAISASモデル(注意→関心→検索→購買→共有)は不要になってしまうのだろうか。
「『SIPSはあくまでもソーシャルメディアが十分に浸透した時点での、ソーシャルメディアに関与が深い生活者の行動モデルの考え方であり、AISASにとってかわるモデルではない』とあるように、ソーシャルメディアは消費者のメディア関与が一般化したに過ぎない。購買検討プロセスの各段階をつなぐ『検索』の役割が持つ重要性は変わらない」と西谷氏は状況を整理。これまでに紹介した資料からもわかる通り、検索総数が増加傾向にあることを見ても、検索の重要性は変わらないと言えるだろう。
マルチデバイス時代に適した広告運用
それらの状況から、連動検索連動型広告に対する企業からの注目度はさらに高まっていくのではないかと推測できるが、今後の検索連動型広告を運用する際のポイントについて、西谷氏は次のように語っている。
「デバイスごとに、ユーザーの特性は異なっている。現状を把握した上で、自社が注力すべきデバイスに合わせて、正しい仮説のもと、運用を行うべきである」。
このグラフは、検索数の上位5,000キーワードをカテゴリに分類した上で、どのカテゴリの検索数が多いのかをデバイスごとに比較したものである。このグラフの状況から、西谷氏は「デバイスによって『検索されやすいカテゴリ』というものが存在する。ただし、PC・モバイル・スマートフォンでは、圧倒的にPCの検索ボリュームが大きく、全体のインパクトを踏まえた上で、対策を講じてもらいたい」とアドバイスを贈る。
また、検索連動型広告の出稿の際に気になるポイントが、入札キーワードの選定である。1単語のビッグワードだけでよいのか、複数の単語を組み合わせたスモールワードを多く入札すべきか、頭を悩ませる担当者も多いのではないだろうか。
西谷氏によると、モバイルでは圧倒的に1語で検索される割合が多いが、スマートフォンは2語、3語の複合キーワードで検索される割合が、PCよりも多いという。つまり、スマートフォンユーザーを意識した入札を行う場合は、1語のキーワードだけでは不十分と言えよう。
最後に西谷氏は、検索単語数や検索カテゴリだけでなく、検索が行われる時間帯さえもデバイスごとに異なることを指摘し、「新しいデバイスの対策を検討する際に、正しい情報を元に現状を理解した上で、仮説を持って施策を講じてもらいたい」と、講演を締めくくった。
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