日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 セントラルマーケティング本部本部長
佐藤哲也氏
1992年マイクロソフト株式会社入社と同時に、外販系チャネル営業を担当。以降 流通会社営業などを担当。1995年にアプリケーションソフトのプレインストールビジネスを担当し、同ビジネスを立ち上げ大きな成功を収める。その後、様々な部門を担当し、現在は日本国内の全社的マーケティングコミュニケーションおよびマーケティングガバナンスの責任者としてセントラルマーケティング本部を率いている。
個人/法人向けのコミュニケーションのバランスが課題
青葉――佐藤さんが統括されているセントラルマーケティング本部は、どのような業務を担われているのでしょうか?
佐藤:セントラルマーケティング本部は、文字通り、マイクロソフトのあらゆる製品のマーケティングを預かる部門です。マーケティングコミュニケーション戦略を立案・展開するグループと、それをサポートするグループの2つに大きく分かれていまして、前者はさらに法人向けと個人向けのチーム、後者はデジタルマーケティングを担うチームとデータベースマーケティングを担うチームに分かれています。
後者のいわば専門部隊の分析や知見をエンジンとして、法人および個人向けに、具体的な戦略立案やキャンペーンの展開を行っていきます。いま、正社員、派遣スタッフ合わせて約130名が在籍しています。
青葉――あらゆる製品というと、数も相当になると思うのですが、いまセントラルマーケティング本部で課題となっているのはどのようなことでしょうか?
佐藤:まず、製品が多い分、メッセージを絞りにくいことですね。それに加えて、法人・個人の両方を顧客としているので、企業や製品イメージのトーン&マナーをどう管理するかも難しいところです。法人向けに硬いイメージにすると、個人の顧客に対して親近感を創出できませんし、逆もまた然りで。どのようなバランスを狙うかが、とても重要ですね。
おそらく、国内外問わず、法人・個人の両方に製品を展開している他の会社様も、同じ状況なのではないでしょうか。消費者に馴染みのあるブランドを持つ会社の中にも、現実的には法人ビジネスの規模が大きいことも珍しくありません。しかし、世間的なイメージとしては、個人向けのブランディングがしっかりできている。これは、我々として学ぶべきだと思っています。
元々マイクロソフトは個人向けのプロダクト会社でしたが、私が1992年に中途で入社した数年後くらいから法人向けビジネスに投資していき、結果的に現在の規模まで成長しました。一方で個人向け市場の存在感は、今は以前ほどのイニシアティブを取れていないかもしれません。
ただ、当社は法人・個人に対して、総合的なサービスを提供できるので、ビジネスシーンでもプライベートでも最適なソリューションを展開できる、唯一の会社だと思っています。それをしっかり伝えることが、これからの我々のテーマです。
青葉――具体的に、経営課題に対してどのようなマーケティング施策をお考えですか?
佐藤:いま、米国本社を中心として「Consumerization of IT」というテーマを掲げています。個人として活用している最先端のIT技術やITデバイスなどを、法人としても積極的に取り込んで活用していこうという意図で使っています。
たとえば、いまスマートフォンで会社のメールもチェックしている人が増えてきましたよね。業務効率も上がるので、会社としても禁止しづらい。ただリスクはあるので、会社のIT部門は、セキュリティやプライバシーなどの面から難しい判断を迫られています。
つまり、個人向けの製品革新が、企業のIT部門に対して非常にインパクトを与えているんです。そうした状況に対して、当社なら個人向けデバイスも合わせて一貫したサービスプロダクトの提供ができます。よって、これからは製品同士を関連させた訴求により力を入れていきたいと考えています。