クラウドの時代に求められるデジタルマーケターの視点
青葉――デジタル領域は部署内だけで盛り上がりがちとのことですが、どうして部内だけになってしまうのでしょうか。そして、デジタルマーケッターはどのように対処していくべきなのでしょうか?

佐藤:単純に、デジタルマーケティングが面白すぎるからでしょうね。反応もすぐ取れますし。ただ、細かい技術にのめりこむのではなく、一連のマーケティングにおいてデジタルがどういうインパクトを与えていて、そこでの成果をではどこへつなげるのか、そういう視点を持てると仕事の幅も広がってくるはずです。
いまデジタル領域にはクラウドという大きな流れが起きています。ソフトのライセンスを買ってもらうという我々の従来のビジネスモデルとは違って、クラウドだとそのサービスを使い続けてもらうことが重要になってくる。つまり、購入や契約のためのマーケティングではなく、使い続けてもらうリテンションのマーケティングが求められるわけです。
すると、ユーザーの利用動向を分析する力がとても重要になるので、デジタルマーケティングを専門にしている人はまさにこれから活躍のチャンスがあるでしょう。若い人はプロとして活躍するために、2、3年ほど、いわゆる現場営業などを経験してからまた戻るのも、視野が広がっていいと思います。
青葉――最後に、佐藤さんが考える「マーケティング・プロフェッショナル」を教えてください。
佐藤:マーケティングは、ビジネス全般を支える活動。ですから、マーケティングのプロとはビジネスそのもののプロフェッショナルであるべきだと考えています。当社では、「Marketing Leadership Council」というマーケター同士のコミュニティ組織を立ち上げて、約200人によるそれぞれのマーケティング活動のガバナンスを図る試みを始めています。これからもさまざまな取り組みを通して、マーケティング活動の成果、すなわちビジネスの成果を最大化するために注力していきたいと思います。(文・高島知子)
マイクロソフトの事業環境は、この数年で大きく変わり、ソフトウエアの販売モデルからサービスを利用契約型ビジネスへ急激にシフトしています。佐藤さんは、「Marketing Leadership Council」(マーケティングリーダーシップカウンシル、通称MLC)という組織横断するプロジェクトを立ち上げ、約30~40の部門に存在する約200名のマーケッターとの全社の利害関係の調整を行なっています。如何にしてマイクロソフトのビジネス全体を成功させるかという議題に対して、マーケティングの力を信じ、向かい合いっています。
この数年で、マーケティング業務の分業が進みました。ネットマーケティングに取り組んでいると、どうしても細部データの上げ下げに一喜一憂しがちですが、事業全体を俯瞰しながら、如何にビジネスを成功に導くかという視点が最も重要なのだということを改めて教えていただきました。
マーケジン読者の方には、ネットを活用することで、「事業全体にどのようにマーケティング・インパクトを与えることができる」のか、自社の競争力強化、利益確保、企業の社会貢献のためにも、一度上司や仲間と話し合ってみてはいかがでしょうか。
