Web2.0以降の企業情報発信プラットフォームの要件とは何か?
とはいえ、コード化できる=htmlソースを1から書けるという意味では必ずしもありません。最初にWebサイトを構築する際の情報設計を行う時点で、しっかりと運用段階に入ったときの情報発信の効率を考慮した設計を行っておけば、実際にはほとんど入力フォームの項目に合わせて文章を書いていけばよい形になるはずです。
現状ではオンラインマーケティングの主要な手段であるSEOにしても、現在のように個別にSEO対策を行っていくのではなく、記事の公開=SEO対策という形に移行していくことになるでしょうし、すでにRSS/Atom Feed(以下、RSS)は情報を企業サイト=HTMLから解放された形で、記事単位で情報のやりとりが行われるようになっています。こうした技術的な進化もあり、Web上ではより情報そのものが力を持てるようになったということが、Web2.0時代の1つの変化といえるでしょう。
では、企業の情報発信プラットフォームとして、Webサイトにはどんなことが必要になるのでしょうか。主要な要件としては、以下の3つが挙げられるのではないかと思います。
- 細分化された情報フォーマットとそれらを適宜組み合わせられる、動的コンテンツマネジメントシステム(CMS) (注:3)
- 多様化、分散化、大量化した情報間を結ぶ関係性のルールの実装
- 情報資産の「私有」から「共有」を可能にする外部が利用可能な仕組み
この3つの要件を満たすことで、企業のWebサイトは、情報そのものの力で勝負可能なオンラインマーケティングのプラットフォームとなるでしょう。
それでは、それぞれの要件を簡単に説明していきたいと思います。
細分化された情報フォーマットとそれらを適宜組み合わせられる動的コンテンツマネジメントシステム(CMS)
最初の要件はこれまで主流だったサイト単位、ページ単位での発想をやめることです。
トップページを基点にカテゴライズされた情報がツリー構造的に整理されていればOKという発想はもはや通用しません。先に情報量が膨大に増えると書きましたが、そうした時代が企業サイトに要求するのは、企業サイトも同じように情報量を増やすことです。そうした場合、ツリー構造的な発想だけでは有効な情報設計は不可能です。
例えば、amazonのサイトを思い浮かべていただければよいかと思います。膨大な商品を扱うamazonのサイト内で、ユーザーを必要な情報にナビゲートするのは、従来のツリー構造に基づくグローバル・ナビゲーション、ローカル・ナビゲーションというセットではなく、検索と関連商品リンク(「この本を買った人はこんな本も買っています」)です。
そして、それ以上に特徴的なのは、アフィリエイトによる外部からのナビゲーションです。一般的な企業サイトでも検索エンジン経由での訪問が、SEOを意識していればいるほど、アクセスに占める割合が多いはずですが、amazonのサイトはさらにそれに加えて、ユーザー参加による外部リンクを増やす仕組みとして、アフィリエイトを活用しているのです。 もちろん、一般的な企業サイトのすべてがアフィリエイトに適しているとはいえません。
しかし、外部からのナビゲートを行う仕組みは、何もSEO(リスティング広告含む)とアフィリエイトだけではありません。それ以上に今後、影響が大きくなるのが確実なのはRSSでしょう。RSSの普及により、情報へのナビゲーションの度合いはより一層加速します。RSSは単なる更新通知ではなく、極小化した情報コンテンツととらえた方がよいでしょう。RSSという極小化した情報分子はユーザー各々のRSSリーダーに、別のサイトのRSSといっしょに格納されます。その時点でサイト単位、ページ単位という概念は失われます。情報をまとめる枠組みは、個々のサイトからユーザー各々のRSSリーダー(注:4)に移るといってもよいでしょう。
また、ブログの場合も情報は記事単位で細分化されています。記事それぞれはデータベースに格納されたデータです。日々発信されるフロー情報がストックされます。これもやはりこれまでのツリー構造とはまったく異なる情報構造です。さらに、情報をセマンティックな視点で、文字通り極小のフォーマットにするものとしてmicroformats(注:5)という動きもあります。
こうして細分化、モジュール化した情報をスピーディーに生成、統合、管理するために、動的なコンテンツ生成が可能なCMSが必要不可欠になってくるでしょう【図3】。