米国の状況 ~着実に浸透するゲーミフィケーション~
良くも悪くも、ゲーミフィケーション分野は米国が最も先行しています。本連載の第1回でお話ししたとおり、すでに専門のカンファレンス「Gamification Summit」が2回開かれています。米国の今を見ることで、日本の近い未来を想像することができます。
第1回のカンファレンスが米国で開かれたのは2011年1月でした。このときの印象として強く残っているのは、「ゲーミフィケーションの可能性については、まだまだ賛否両論なんだな」というものでした。質疑応答が熱心にされるのはお国柄の違いかもしれませんが、ゲーミフィケーションの考え方自体に懐疑的な質問も多く聞かれたことを覚えています。
なにより象徴的だったのは、カンファレンスのスポンサー企業であるゲーミフィケーション関連SaaSを提供するスタートアップ企業が、ベンチャーキャピタルとともに登壇する最後のセッションでした。このセッションの内容は「これらの企業は投資に値するか?」を議論するというものだったのです。いかに当時のビジネス界が、ゲーミフィケーションに対して懐疑的であったかがわかります。
懐疑から実践へ、ビジネスの世界で受け入れられたゲーミフィケーション
この状況は、今の日本国内の状況とほぼ同じと言っていいと思います。ただ、その約8か月後の2011年9月に開催された2回目のカンファレンスでは、この印象が大きく変わりました。ゲーミフィケーションというコンセプトについて、少なくともオーディエンスからの質疑応答からは有効に活用できるものであるという認識が十分に浸透していることが感じ取れたのです。わずか8か月間ですが、確かにカンファレンスのセッションでも、企業のマーケティング領域、従業員満足度向上の領域、教育・金融など様々な領域での活用事例が紹介されました。
パネルディスカッションも非常に実践的な内容となりました。前回は「投資に値するか?」と言われていたスタートアップも実際にこの間に投資を受け、顧客数を確実に増やし、成功の知見を共有する立場に立っていました。
最近では米国で登場するスタートアップ企業でも、サービスリリース当初からゲーミフィケーションを取り入れたものが多く見られるようになりました。大手からベンチャーまで、幅広い企業で受け入れられるコンセプトであるということが明らかになってきたのが米国の現状です。つい先日、第3回のゲーミフィケーションカンファレンスの開催がリリースされましたが、今回は開催期間も長くなり、より中身の濃い内容となるようです。