ネットではんこ屋を営む山下弥寿男さんは、全国一の技術を誇る職人でもあります。今回は、ネットショップが巻き込まれやすい価格競争に陥ることなく、伝統の技を伝えようとしている山下さんのお話をお届けします。後編はこちら。
店長紹介
山下 弥寿男(やました やすお)
高校卒業後、大阪のはんこ屋【現代の名工】所で5年間の丁稚奉公・修行を経て、山下弘栄堂入社(本人は二代目にあたる)。平成10年2月「第16回全国一級技能士グランプリ大会」の「印章木口彫刻部門」で、第1位受賞。実店舗3店を経営しながら、激戦の印鑑ネット通販業界の中で、価格競争ではなく技術力と販売力で売上を伸ばしている。ネットショップでは
「京のはんこや 幸栄堂」の本店、
楽天市場店、
Yahoo!店 の3つを経営。
全国一級技能士グランプリ大会1位のはんこ屋さん
山下さんの会社
「京のはんこや 幸栄堂」は、2代続いている、はんこ屋さんだそうですね。
はい。私の親父がはんこ屋での丁稚奉公を終えた後、昭和36年に京都で創業しました。「はんこ屋」は3店舗経営しています。私は2代目になんですが、右耳が悪く難聴だったため、自分は営業は向かないだろうと自覚して、高校卒業後にはんこ屋へ丁稚奉公しに大阪へ行きました。
師匠はどんな方だったのでしょうか。
私の師匠は「現代の名工」に選ばれた二階堂先生です。「二階堂印章店」という工房へ行き、5年間修行と商売の勉強をしました。先生からは「山下!お前は耳の聞こえが悪いので、しっかりとはんこの彫刻技術をみがいて、人より優れた彫刻技術を磨かないと、将来は難しいので頑張れ!」と1日目に言われました。心に決めて、一生懸命に努力したつもりです。
5年間住み込みで修行した後、京都に帰ってきてから2年後の25歳のときに、親父から宇治店の店長として店を任されました。約12年ほど妹と2人でがんばってきて、4年前に本店へ戻って、親父から代表者を引き継ぎました。現在、従業員は3名です。
厳しい修行のかいあって、山下さんの技術は表彰されてますよね。
はい。おかげさまで、平成9年4月の「第16回全国一級技能士グランプリ大会」の「印章木口彫刻部門」で、第1位を頂きました!日本一の名誉を獲得できたのです。これは私1人の力でなく、励ましてくれた二階堂先生・一門の先輩達のおかげです。
「京のはんこや」と銘打っていますが、ほかの地域のはんことはどんなところが違うのでしょうか。
そうですね。古く昔から都として栄えていたので、京都には【京印章】という独特の文字の形のある「手彫りハンコ」があります。それをブランド化して売っていきたいという考えがあったことがひとつ。もうひとつは、東京をはじめとしてほかの地域の人たちは、京都への憧れがありますよね。その優位性を出すために「京のはんこや」と名づけました。
日本最初の印判師は、江戸時代に京都・三条室町に住んでいたといわれている。
長い歴史を持つ京都の職人の技術を今に伝えるのが「京印章」。