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Excelビジネス統計~アンケートの設計と分析~

データからワンランク上の規則性を見つけるために 「分散」と「標準偏差」をざっくり理解し、エクセル分析しよう


実務に使える「不偏分散」の理論を学ぼう

 これまで、分散のイメージを伝えるためにやや簡略化して説明を行って来ました。実は分散には、「母分散」「標本分散」「不偏分散」の3種類あります。少し難しくなりますが、ついてきてください。

母集団

 これを理解するために、まず「母集団(population)」の説明をします。

 ある観測対象全体の集合を母集団と呼びます。例えば、「16歳から18歳(日本でいえば高校生に該当)の男子の身長」は世界中に数え切れないほどいるはずです。この「16歳から18歳の男子の身長」全体のことを母集団と言います。

無限母集団と有限母集団

 さらに母集団には、数に限定があるかどうかで、無限母集団と有限母集団に分類できます。無限母集団の場合、「過去から未来にいたるすべての16歳から18歳の男子の身長」となります。有限母集団の場合、「東京都に在住している16歳から18歳の男子の身長」と考えることができます。

標本(サンプル)

 有限母集団であっても、東京都に住んでいるすべての16歳から18歳の男子の身長を調べることはほぼ不可能です。そこで、母集団からランダム(でたらめという意味ではありません。偏りがなく選ぶということ!)に一部分を取り出したものを標本(またはサンプル)といいます。統計学の醍醐味は、このように標本から得られた情報を使って、母集団の性質を推測することにあります。

母分散を求める

 もう一度、3つの分散の話に戻ります。「母分散」とは、文字通り母集団の分散で、すべてのデータのバラツキを意味します。以下の公式で求めます。

 しかしながら、公式にも出てくる母集団の平均「μ」(ミューと読みます)は、まず分からないことの方が多いです。そこで、標本から得られたデータを使って母分散を推定するわけです。

標本分散を求める

 「標本分散」は、先ほどの売上データのように、偏差平方和をデータの個数で割ります

不偏分散を求める

 もう1つの分散である「不偏分散」は、以下の式で求めます。

不偏分散の分母がなぜデータの個数から1を引くのか、数学的な証明に関心がある方は、『統計的方法のしくみ』(永田靖・著/日科技連)のP147を参照ください。

実際に使うのが不偏分散である理由

 結論からいうと、母分散を推定するには、データの個数でわる標本分散ではなく、データ数から1を引いた不偏分散の方を用います。数学的に証明するととても難しいので、入門段階では次のようなイメージで考えてください。

 不偏分散の方が分母が小さくなるので、標本分散より大きくなります。仮に偏差平方和(分子)がともに100の場合、データ数が10個の場合、不偏分散は100÷(10-1)=11.11、標本分散は100÷10=10となります。データ数が小さいほど変動のばらつきの影響を受けますので、少し幅を持たせて大きめに分散をとったほうがより安全なのです。

 先ほどの売上データの場合、このデータを母集団だとみなすと、先ほどの偏差平方和をデータ数で割った分散(標本分散)で良いのですが、現実的に1ヵ月の売上は、これまでもこれからも理論上は無限にとり得るので、不偏分散を使って母分散を推定した方がより真の値に近づきます

 統計は、標本から母集団を推定する使い方が多いので、今後は特に断りがない場合、分散とは不偏分散の意味で使用します。

次のページ
Excelのデータ解析で分散を求める手順

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この記事の著者

末吉 正成(スエヨシ マサナリ)

株式会社メディアチャンネル 代表取締役。

慶應義塾大学経済学部卒。統計解析を駆使したWebマーケティングが専門。「見るサイト」から「使えるサイト」をモットーにWebサイトの付加価値を高めるコンサルティングを得意とする。

主著に「EXCELビジネス統計」(翔泳社)、「Excelでかんたん統計分析」(オーム社)、「事例で学ぶテキストマイニング」(共立出版)、「Excelでかんたんデータマイニング」(同友館)、「仕事で使える統計解析」(成美堂出版)がある。

所属:言語処理学会、日本行動計量学会、品質工学会

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/20 17:38 https://markezine.jp/article/detail/15763

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