O2Oを単独で捉えず全体のコミュニケーションプランに組み込む
「“オンラインtoオフライン”の概念自体は以前からあったが、言葉としては世界では2008年ごろから広がった」と日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング&ニュービジネス iマーケティング&システムイノベーション バイスプレジデント 江端 浩人 氏。日本では今年になって急激に広がった感があるが、この理由について江端氏は、スマートフォンの拡大を第一に挙げる。
「GPS機能などはフィーチャーフォンにも備わっているが、常にオンラインに接続している状態を実現し、処理能力も明らかに高いスマートフォンがO2Oを後押しする力は大きい」
2つ目の理由は、“ゲーミフィケーション”という概念の理解と浸透だ。「単にWebから店舗に誘導するのではO2Oの実現とは言えない。オンラインとオフラインを行き来する仕組み自体が楽しいものにこそユーザーが集まる。また、その楽しい体験をユーザーがSNSで発信し、他者を巻き込んで広がっていく構造も重要」と江端氏。さらに、ビッグデータの有用性に注目が集まっていることも、ユーザー動向データを多く得られるO2Oに企業が関心を寄せる要因だ。
だが、O2O施策を単独で検討するのは薦めない、と江端氏。「O2Oの概念をキャンペーン全体の一要素として捉え、全体の効果を大きくするためにどう取り込むかという視点で考える方が成果が大きい」。
具体的にコカ・コーラでは、キャンペーンを次のようなステップで考えている。目的に応じて、まず自社でコントロールできるオウンドメディアを整備し、それがSNSを中心とするアーンドメディアでどう広げられるかを見通す。足りない部分やさらに影響力を大きくしたい場合はペイドメディア、いわゆる広告で補う。加えて、O2Oを“シェアードメディア”での施策に取り入れている。これは、同社の商品が小売店や飲食店を通して生活者に届くことから、それらの店舗を各社とシェアするメディアとして捉える同社ならではのコンセプトだ。
実際に、直近では同社商品を扱う日本マクドナルド、およびJリーグとタッグを組んだ施策「マイJプログラム」を実施。会員1,000万人を擁するコミュニティサイト「コカ・コーラ パーク」内の「Jリーグサポーターズパーク」にて好きなチームを登録すると、試合の勝敗に応じてマクドナルドで使えるクーポンが得られる仕組みだ。勝敗というリアルな事象を絡めたことで、ユーザーに期待感と共に利用され、3社とも手応えのある結果を得ているという。
「O2Oの大きな落とし穴は、単純に値引きというインセンティブで集客すると、顧客の質が下がり、マーケティング原資が磨り減る結果を導いてしまうことだ。オンラインでブランドを体験し、店舗ではロイヤルティが上がる施策を全体のコミュニケーションプランに組み込むことが重要」と、注意点も述べられた。
他にも、上記の注意点を踏まえた企画「からだ巡茶 汚れたプリンセス診断」(※クーポン配布は終了)や、新たなソーシャルサービスとして広がりつつあるLINEを使ったオリンピック応援企画、アメリカ・ショップキック社の来店客にアプローチするサービスなど多数の事例が紹介され、マーケティング施策の立案に活かせる示唆に富んだ講演となった。