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次世代広告エージェンシー最新動向(AD)

100万人に100万通りの広告配信を アドテクノロジーが具現化するパーソナライズド広告最新事情

 効果的かつ効率的なWebマーケティングの実践を可能とするアドテクノロジーに、広告業界だけでなく、クライアントも大きく期待を寄せている。今回は、マーケティングにおけるアドテクノロジー活用に定評のあるオプトが、このほどスタートさせた「データフィード最適化エンジン(MCP)」において、タッグを組むこととなったリターゲティング広告のCRITEOに注目。両社に提携や今後の展望を語っていただいた。

今回お話をうかがったのは…
株式会社オプト 取締役 広告・ソリューション事業管掌
岩切 隆吉氏
1978年神奈川県生まれ。アウトソーシング会社勤務を経て、2003年株式会社オプト入社。営業副部長、コンテンツ企画部長、SEM部長を歴任し、2007年クロスフィニティ株式会社 代表取締役社長に就任。2010年1月オプト執行役員就任、2011年3月オプト取締役就任。2011年7月より広告・ソリューション事業管掌、現在に至る。株式会社クラシファイド 取締役、クロスフィニティ株式会社 取締役、ソウルドアウト株式会社 取締役、株式会社エスワンオーインタラクティブ 取締役を兼任。

CRITEO株式会社 代表取締役 兼 General Manager,APAC
上野 正博氏
1987年株式会社リクルート入社。1998年ダブルクリック株式会社 代表取締役社長に就任。2001年トランスコスモス株式会社 取締役就任。2003年同社 常務取締役に就任。2004年オーバーチュア株式会社 取締役社長に就任。2006年ビカム株式会社 代表取締役社長に就任。2011年4月CRITEOに入社し、General Manager,APACに就任。2011年6月同社 代表取締役に就任(General Manager,APAC兼任)し、現在に至る。

アドテクノロジーにより再び注目されるリターゲティング広告

――まず、アドテクノロジーに注目が集まっている背景、とりわけリターゲティング広告が話題になっている理由を教えていただけますか。

株式会社オプト 取締役
岩切 隆吉氏

岩切:今から5、6年前、私はサーチ事業のマネージャーをしていたこともあり、肌身に感じているのですが、当時は検索連動型広告が非常に伸びていて、クライアントもかなりの予算を投じてマーケティング成果を獲得していました。

 しかし昨今では、市場のサイズは限りがある為に、成果が頭打ちになり始め、以前のような費用対効果が得られないことが目立ってきました。従って、クライアントが何か次の策を待ち望んでいたタイミングであったということが、アドテクノロジーへの注目の背景にあると思います。

 アプローチの仕方に関しては、リターゲティングに限らず全体的に、このサイトを見ている人という枠で考えるアプローチから個人へのアプローチにシフトしている傾向があります。リターゲティング広告の仕組みは最近登場したものではありませんが、日本では2005、6年頃にヤフーが、2010年にグーグルが提供を開始したタイミングで段階的に市場が拡大しました。

 このように市場のアドテクノロジーへの関心が向上したことや、CRITEOのようなサービスが整備されたことなどから、今ようやく機が熟したという印象です。ディスプレイ広告の再価値化という点で、媒体側の期待も大きいですね。

IT技術の発達により、高精度のパーソナライズド広告が実現

CRITEO株式会社 代表取締役 兼 General Manager,APAC
上野 正博氏

上野:一度サイトを訪れたユーザーを識別してアプローチする、というリターゲティングの構造自体はシンプルなので、それこそ2000年以前から業界内にそうした発想はありました。

 ただ、サーバー容量やCPUの問題やディスプレイ広告の表現の限界がありましたし、RTB(Real Time Bitting)も最近になって実現した技術なので、アドテクノロジーの進歩によって今やっと本領を発揮できる段階になったと言えます。ユーザーの属性分けをせず、完全に個人への配信最適化が図れるCRITEOは、個人をターゲットにするという点で本当のターゲティング広告を実現できると好評をいただいています。

岩切:日本では2011年がRTB元年と言われましたが、まさにそれに合致していると思いますね。それから、クライアントが自社の組織体制への危機感を持ち始めたことも、アドテクノロジーへの関心を高める要因かもしれません。

 アドテクノロジーでできることが広がり、さまざまなデータを得られるようになったことで、それを宣伝部やCRM部、システム部など各部門のどこがどう管理するのかが必然的に課題になっています。部門間や商品間の連携がうまくいかず、部門横断的にやり取りしている我々代理店が一番状況を知っている、といった事態も起きています。この課題に際して、アドテクノロジーの活用法を考えざるを得ない現状もあると思います。

世界37カ国でビジネスを展開、配信の精度に強み

――CRITEOはフランスに本社を置き世界的にビジネスを展開されていますが、事業の概要から伺えますか。

上野:CRITEOは2005年にフランスで創業され、今では世界15カ国に拠点を持ち、37カ国でビジネスを展開しています。スタッフは700人程度で、3000以上のクライアントと取引をしています。

 初めの3年は今のようなビジネスモデルではなく、サイト内レコメンデーションシステムの開発販売をしていました。08年から現在のサイト外レコメンデーションの仕組みを構築・提供しています。加えてDSPとしての顔もあり、1日あたり7.5億回のビッティングのやり取りを手がけています。それを支えるデータセンターを世界に5カ所設けています。

サイト外レコメンデーションのイメージ(CRITEOのホームページより)

岩切:エンジニアの数が非常に多いんですよね。

上野:そうですね、社員の4割がエンジニアでパリの本社におり、一部の数学者とリサーチャーがシリコンバレーにいます。

――クライアントにはどういう業種が多いのですか?

上野:大きく3種類あり、まずEC事業。次に旅行など予約販売業。3つ目が、クラシファイド系、情報系などと呼びますが、不動産や人材など多くの情報を扱う業種のクライアントです。そもそもCRITEOのリターゲティング広告は個人の興味関心に応じて高い精度で広告を出し分けて行くのが特長なので、出し分ける元となる情報量がそれなりに多い業種でないと効果を発揮しにくいという側面があります。同じ理由で、商品数もある程度多いほうが適しています。

クライアントとメディア、双方にフレキシブルな入札の仕組み

――入札の仕組みはどのようになっているのですか?

上野:通常の検索連動型広告はキーワード単位で価格が決まっていますが、当社では「カテゴリ」と「検討度合いの深度」の掛け合わせで1件あたりの価格が決まる仕組みになっています。

 具体的には、まずカテゴリはファッションのECサイトなら「ジャケット」「靴」、旅行の予約サイトなら「大阪」「北海道」などになります。それぞれにおいてROIの目標に合わせてCPCを設定することができます。例えば大阪だとビジネス利用客が多いのでリピーターがかなり見込めますが、北海道だと観光の割合もかなり高くなるので、ビジネス利用のリピーターを捉えたい場合は「大阪」のレートを高く設定しておく、という調整が可能です。

 検討度合いの深度とは、ユーザーをトップページのみ訪れた見込み客、個別商品サイトまで閲覧した検討客、そして実際に購入した既存客の3段階に区別することを意味しています。それぞれにCPCを設定できるという仕組みにしています。

――ほかに、他のリターゲティング広告とどのような点で異なっていますか。

上野:クライアントに対してはCPCを適用していますが、メディアに対しては1インプレッションごとに当社が購入しているんです。通常の広告配信事業者はクリック数に応じてメディアにフィーを支払っていますが、我々の場合はクリックされなくても当社がメディアに媒体料を支払うので、当社がリスクを負っている形になりますね。その分、メディアには好意的に受け入れられています。

課題は新規顧客や休眠顧客へのアプローチ

岩切:当社がCRITEOに非常に優位性を感じているのは、パーソナライズ化できることですね。通常リターゲティング広告はユーザー動向に応じてユーザーをグループ分けし、その後はグループの属性ごとに適した広告を判断し配信していきますが、CRITEOの場合ははじめから個人を識別し配信を最適化しています。クライアントは究極、あるグループ単位ではなく一人ひとりに対してビジネスをしていますから、その効果は大きいと思います。

上野:確かに、個別ユーザーに対する配信最適化の精度は非常に高いですね。クライアントから定期的にデータを受領できる環境を整えられれば、100万人いたら100万通りの配信ができるのが、CRITEOの強みです。また、ディスプレイ広告上の画像でアピールできるので、一定の訴求力も見込めます。

――では、現在の課題は何でしょうか?

上野:課題は新規顧客や休眠顧客へのアプローチです。現状、クライアントのサイトを訪れたユーザーに対して、その後30日間のアプローチを開始するので、それ以外のユーザーには積極的に訴えかけられる仕組みになっていません。データはもちろんクライアントごとに切り離しており、流用はできないので、この部分の解決のために第三者からデータを購入するなどの策を検討しています。

両社のタッグにより、日本市場のディスプレイ広告活性化を狙う

――8月末、CRITEOへのヤフーの出資が決まり、「Yahoo! JAPAN」の主要メニューでCRITEOの広告配信がスタートしました。これは大きな弾みになるのではないですか。

上野:そうですね。当社はまだ日本で法人を立ち上げて1年ほどなので、当社の各国での実績や費用対効果を踏まえて、ヤフーとの提携が実現したことはありがたいですね。

――最後に、今回のオプトとCRITEOの連携に期待することをお聞かせください。

岩切:アドテクノロジーの進歩が著しく、できる施策は以前の何十倍にもなっているのに、クライアント社内の担当者の数は当然ですがそこまで増えてはいません。扱うパラメーターが増え、物理的に処理しきれない状態だからこそ、我々の存在価値があります。特にCRITEOの、バナーのクリエイティブまで判断して自動最適化できる点は、ユーザー一人ひとりにアプローチできるオーディエンスターゲティングの意義を大きく発揮する部分なので、これまで実現しにくかった“個々に響く効果”を得られると思っています。

上野:今、CRITEOの利用にはクライアントに商材データを用意してもらうことと、サイトへのタグの埋め込みが、早急な着手を妨げている現状があります。そうしたクライアントフォローにオプトが加わることで、ローンチに至るまでの相当な時間短縮になると考えています。実際に世界で2500社の当社クライアントのうち、継続率が96%に上るほど効果を感じていただいているシステムなので、これを機に日本市場でもディスプレイ広告の活性化に寄与できればと考えています。

岩切:上野さんのおっしゃるように、商材データを定期的にアップロードする事と、タグ埋め込みに際してページの商品情報を取得しタグに引き継ぐ設定をする事、この2点がCRITEO導入時のハードルになります。この部分の手間を軽減するために商品データフィードを最適化するサービスである 「MCP」の開発と、新たなタグ埋めを必要としないADPLANワンタグの機能を改修いたしました。ぜひ積極的に活用いただきたいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/25 12:47 https://markezine.jp/article/detail/16318