デジタル・データがWeb上で急激に増加するのはなぜか
次は、「データの増大」についてです。ビッグデータということばをWeb検索してみると、すぐに“exponential growth”(指数関数的増大:幾何級数的増大ともいう)というキーワードを見つけることができます。この言葉に、ビッグデータに内在するとても重要な特性が含まれています。これは、データが1,2,3,4…(線型:linear)ではなく1,2,4,8,16,32… (10進法では1,10,100,1000…)のように、回数(時間)とともに桁が増えていく状態を示しています。
Web上では、“exponential”なデータの増大傾向がさまざまなところで見られます。なぜでしょうか。
第一の理由に挙げられるのは、Webがネットワークによって構成されているという事実です。たとえば、「ビッグデータ」というキーワードのWeb拡散を考えてみましょう。ネットでこのキーワードを知って、あっこれは面白いと思ってコピペして2人にメールを出す。その2人がまた友人2人にメールを出す。これが繰り返されると、メールの回数に応じてメッセージの数は“exponential”に増大していくことになります。
もし、これがスパムメールだったらどうなるでしょう? 一度に膨大な数のデジタル・データが生成されることになります。このように、Webの世界には“exponential growth”のメカニズムが内包されているといえます。逆に、Web上のデータの80%はゴミだという批判も生まれる理由も、ここにあります。
第二の理由に挙げられるのは、環境収容力(carrying capacity)問題の不在です。人口論がいうように、人口増加には“exponential growth”が内在していますが、食物、水、土地などの環境の制約があって、現実には「成長の限界」が存在します。
ところが、Web社会はそもそも人工物で、その実体は世界中のサーバやネットワークによって構成されています。デジタル情報の増大に応じてストレージの容量=環境収容力を増加していくことで、環境収容力の問題を回避できるため、「成長の限界」を意識する必要はありません。
あらゆる業界が成熟した日本だからこそビッグデータが求められる
最後に、ビッグデータのトレンドのグローバルな進展に注目してみましょう。今年、9月に米国と中国(杭州)で大手Web系企業の話を聞く機会がありました。米国は、予想と違わずビッグデータの最先端を走っている印象が強く残っています。
一方、中国ではアリババ・グループの幹部が将来の柱として示していたのが次の5項目で、そこにはまだ「大数据」(ビッグデータ)の文字は見られず、そこで強調されていたのはeコマースの急激な拡大を先導する当グループの自信とリーダーシップでした。
- インターネットはインフラになってきた
- コンピューティングは実用的になってきた
- データは土地、労働、資本より重要で生産力の高い資産(productive asset)に なってきた
- サプライチェーンは価値を生む仕組み(web)になってきた
- 知識労働者はコストより資産になってきた
両国の違いは、エマージング・エコノミーとマチュア・エコノミーの差異を表しているともいえます。市場が拡大し、販売量が急激に成長している段階では、ビッグデータ(ここでは販売履歴データ)の精緻な分析は、成熟期ほどクリティカルな問題ではないからです。
日本でビッグデータのトレンドが急拡大している理由に、あらゆる業界が成熟化していること、とりわけIT業界そのものが新しいテーマを渇望しているという事情があるといえるでしょう。
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