SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

ビッグデータ・マーケティング

ビッグデータの特性再考 マチュア・エコノミーでこそ求められる理由


デジタル・データがWeb上で急激に増加するのはなぜか

 次は、「データの増大」についてです。ビッグデータということばをWeb検索してみると、すぐに“exponential growth”(指数関数的増大:幾何級数的増大ともいう)というキーワードを見つけることができます。この言葉に、ビッグデータに内在するとても重要な特性が含まれています。これは、データが1,2,3,4…(線型:linear)ではなく1,2,4,8,16,32… (10進法では1,10,100,1000…)のように、回数(時間)とともに桁が増えていく状態を示しています。

 Web上では、“exponential”なデータの増大傾向がさまざまなところで見られます。なぜでしょうか。

 第一の理由に挙げられるのは、Webがネットワークによって構成されているという事実です。たとえば、「ビッグデータ」というキーワードのWeb拡散を考えてみましょう。ネットでこのキーワードを知って、あっこれは面白いと思ってコピペして2人にメールを出す。その2人がまた友人2人にメールを出す。これが繰り返されると、メールの回数に応じてメッセージの数は“exponential”に増大していくことになります。

 もし、これがスパムメールだったらどうなるでしょう? 一度に膨大な数のデジタル・データが生成されることになります。このように、Webの世界には“exponential growth”のメカニズムが内包されているといえます。逆に、Web上のデータの80%はゴミだという批判も生まれる理由も、ここにあります。

Webの世界には“exponential growth”のメカニズムが内包されている

 第二の理由に挙げられるのは、環境収容力(carrying capacity)問題の不在です。人口論がいうように、人口増加には“exponential growth”が内在していますが、食物、水、土地などの環境の制約があって、現実には「成長の限界」が存在します。

 ところが、Web社会はそもそも人工物で、その実体は世界中のサーバやネットワークによって構成されています。デジタル情報の増大に応じてストレージの容量=環境収容力を増加していくことで、環境収容力の問題を回避できるため、「成長の限界」を意識する必要はありません

あらゆる業界が成熟した日本だからこそビッグデータが求められる

 最後に、ビッグデータのトレンドのグローバルな進展に注目してみましょう。今年、9月に米国と中国(杭州)で大手Web系企業の話を聞く機会がありました。米国は、予想と違わずビッグデータの最先端を走っている印象が強く残っています。

 一方、中国ではアリババ・グループの幹部が将来の柱として示していたのが次の5項目で、そこにはまだ「大数据」(ビッグデータ)の文字は見られず、そこで強調されていたのはeコマースの急激な拡大を先導する当グループの自信とリーダーシップでした。

  • インターネットはインフラになってきた
  • コンピューティングは実用的になってきた
  • データは土地、労働、資本より重要で生産力の高い資産(productive asset)に なってきた
  • サプライチェーンは価値を生む仕組み(web)になってきた
  • 知識労働者はコストより資産になってきた

 両国の違いは、エマージング・エコノミーとマチュア・エコノミーの差異を表しているともいえます。市場が拡大し、販売量が急激に成長している段階では、ビッグデータ(ここでは販売履歴データ)の精緻な分析は、成熟期ほどクリティカルな問題ではないからです。

 日本でビッグデータのトレンドが急拡大している理由に、あらゆる業界が成熟化していること、とりわけIT業界そのものが新しいテーマを渇望しているという事情があるといえるでしょう。

1日集中特訓! 9月20日「Excel徹底活用!アンケート設計と分析」講座開催

★データに強いマーケターを目指して、まずはアンケート設計とExcelデータ分析から始めましょう★

「プッシュ型リサーチの代表「アンケート」を効果的に活用するために必須の、ビジネス統計を学びます。論理的なアンケート設計、マーケティングに必須の統計の知識、Excelを使ったデータ分析の三本柱を身につければ、あなたも明日からデータに強いマーケターになれるはず!

★☆★講座「Excel徹底活用!アンケート設計と分析」の詳細・お申し込みはこちら★☆★

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
ビッグデータ・マーケティング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

佐々木 宏(ササキ ヒロシ)

立教大学 経営学部教授。

筑波大学 経営・政策科学研究科修士課程、大阪大学経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。金融系シンクタンクにてマーケティング・リサーチ、経営コンサルティングなどに従事後、大学教員になる。マーケティング・リサーチ、データマイニング、eビジネス、IT産業の国際比較などが専門で、大...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2013/06/27 17:50 https://markezine.jp/article/detail/16731

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング