楽天スーパーDBが示す、消費者行動分析の複雑化
筆者は「ビッグデータ戦略的ビジネス活用研究会」(社団法人企業情報化協会)のコーディネーター役を拝命しているのですが、今回のテーマに関してとても印象に残っているのが、楽天景山均氏の講演です。
楽天では「楽天経済圏」の顧客に対し、2007年より「楽天スーパーDB」を構築、次の4つの顧客プロファイルを組み合わせた分析を行っているといいます。
- 基本属性(デモグラフィック:性、年齢、住居、職業、年収など)
- 行動属性(ビヘイビア:購買履歴、サービス利用、頻度など)
- 心理的属性(サイコグラフィック:行動特性、嗜好性、ブランド、趣味、ライフイベントなど)
- 地理情報(ジオグラフィック:人口統計、エリア特性など)
たとえば、顧客をクラスタリング(分類)して、数百のクラスターを数十程度のクラスターに集約させ、「家事お任せ」「グルメ大好き」「お手軽ビューティ」「おしゃれメンズ」などを抽出する、Webサイトのパーソナライズ化を行い顧客に出すバナー広告のタイミングの適正化をはかる、クロス・ユース(1人が複数のサービスを利用)への誘導を行うなどの取り組みをしています。トランザクション系の分析では、Webログ、サーチ検索ログ、大量の商品・サービスデータを組み合わせて精度の高いレコメンデーションを実現しています。
このように、楽天ではセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの各フェーズに実績データをビルトインし、多様な顧客属性と絡めて緻密な分析を行っていることがわかります。以下で取り上げるのは、そこに見られるような消費者行動分析のディメンジョン(属性:次元)の複雑化です。
O2Oサービス拡大で求められる、ネットとリアルを融合した消費者行動分析
米国のShopkickや日本のNTTドコモによる「ショッぷらっと」など、O2Oサービスの拡大が顕著になっています。ネット・リアル間のポイントカードの共有化も進展しつつあり、日本経済新聞(2013年3月5日)は、楽天がネット店舗で利用できる「Rポイントカード」を実店舗で利用可能にする計画を第1面トップで伝えています。
近未来には、在庫や値段を連動させることにより、にわか雨で「傘が欲しい」とスマホで入力すると、すぐ先のコンビニで500円の傘が1本、300メートル先の100円ショップで3本在庫があります、と教えてくれるようなサービスが登場してくるでしょう。
こうしたトレンドの中で、ネットとリアルを融合したオムニチャネルの消費者行動分析がホットなテーマになっています。そこで注目されているのは、これまでWebログ解析で用いられてきた分析手法やKPIのリアル店舗への応用です。
一例を挙げると、実店舗での滞在時間や、店舗に入る前・入った後・レジまでの行動のコンバージョンレートの測定・評価があります。また、店舗の近くを通りかかった顧客の勧誘、検討だけで店舗を去った顧客に対するリマーケティングなどでも、Webユーザに対するアプローチやノウハウが参考になります。また、10年ほど前にAISAS(※)ということばがはやりましたが、ビッグデータの技術を使って消費者行動を紐づけることで、個々の消費者のAISAS特性が識別できることになります。
一方、実店舗のショールーミング化が問題になっています。実店舗のアドバンテージは、何といっても対面で直接顧客とのコミュニケーションがとれることです。顧客ひとりひとりのオムニチャネル行動特性を把握し、きめ細かいサービスを提供することがショールーミング化の回避につながるものと考えられます。
※AISASは電通の登録商標である。同社は、「SIPS」という考えも表明している。
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