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ソーシャルブームはひと段落、次はいかにビジネスへつなげるか ソーシャルデータとビジネスデータ連携の最前線

企業に求められる「スマイルカーブ」の両端の強化

 次に登壇したのは、企業のビジネスプロセスを最適化するさまざまなソリューションを提供しているSAPジャパン の瀬尾直仁氏。「アナリティクスの新たな潮流~SNSをより効率的に分析しビジネスにつなげるには?~」と題し、最新事例を交えた内容が展開された。

SAPジャパン ソリューション営業統括本部
ビジネスアナリティクス営業部 マネージャー 瀬尾 直仁 氏
SAPジャパン ソリューション営業統括本部 ビジネスアナリティクス営業部 マネージャー 瀬尾 直仁 氏

 ドイツに本社を置くSAPは、55,700人の従業員により世界120カ国で活動、75カ国に現地法人を有している。グローバルでは約10万社、SAPジャパンが対応する日本のユーザー企業は2,000社に上る。

 同社は長らく基幹業務システムを手がけてきたが、近年はデータ分析の領域を強化し、またモバイル対応を推進、いずれもクラウドで提供することでビジネスのリアルタイム化を進めている。Business Objects社統合後の2010年よりSAPはビジネスアナリティクス市場でもNo.1のシェアを獲得している。

 多様なクライアントに接する中で、最近の日本企業を取り巻く環境について瀬尾氏はJMAマネジメント研究所による調査(※)を挙げる。これによると、経営者が感じている2012年の課題として1位は「売上・シェア拡大」、次いで収益性向上と人材強化、4位が「新製品・新サービス・新事業開発」。瀬尾氏は「研究開発と、販売・サービスの両面、つまりスマイルカーブの両端の強化に課題がある」と指摘する。

JMAマネジメント研究所「第34回当面する企業経営課題に関する調査」より
JMAマネジメント研究所「第34回当面する企業経営課題に関する調査」より抜粋

ソーシャルメディア×ビジネスデータ

 この両方に、ソーシャルメディアは大いに活用できる。顧客の声からニーズを捉えて新たな開発に活かし、またソーシャルメディア上での伝播によって販売を伸ばしたり、購入後のコミュニティー運営などによってサポートや顧客育成につなげたりすることも可能だ。

 「顧客の声を事業に活かすことは昔から行われていたが、ソーシャルメディアの双方向性やリアルタイム性によって、得られる情報量は劇的に豊かになった。だが、ビジネス側がその量やスピードに対応できているかというと、まだとても十分とは言えない。企業もコンセプト開発から市場導入まで、またその反応を次の開発に活かすまでのビジネスプロセスを最適化し、できる限りリアルタイム化することが求められる」。

 例えば、SAPがサポートしたある食品メーカーでは、ソーシャルメディア上の声をビジネス上の意志決定に活かしている。刺激的な表現が含まれる新CMキャンペーンを同社が展開したところ、コールセンターに否定的な意見や放送中止を求める意見が殺到した。一方、ソーシャルメディア上のデータとコールセンターのデータを統合して分析したところ、むしろターゲット層には「革新的」だと高く評価されていることが分かったという。

 「一時はキャンペーンの中止も検討されたが、この結果を受けて続行が決まり、売上に大きく貢献した。キャンペーンそのものをリアルタイムで分析し、判断材料として採用した事例となった」と瀬尾氏。

自然言語解析を実現した「SAP Social Media Analytics by NetBase」

 「顧客や生活者の声をリアルタイムに得られるというスピードをビジネスに活かすには、売上や在庫、POS、コールセンターのログなどのデータ収集や活用もリアルタイムにしなければいけない。こちらの支援については、当社で現在特に注力している分野」だと瀬尾氏は話す。例えばソーシャルメディア上の情報とビジネスデータを掛け合わせて集計し、その関連を可視化すると、より立体的な分析ができる。

 「『売上が伸びていない』といっても、不評なのではなく、ニーズはあるのに入手経路が乏しい場合もある。ソーシャルメディアでは『購入しなかった』人の意見も捉えられるので、実際に当社のクライアントでは『買わない』のではなく『買えない』状況を検出し、販売を大きく伸ばしたケースもある」。

 では、数値のように単純には集計できないソーシャルメディア上のデータを、どのように扱うのだろうか。同社の支援事例では、分析ソリューション「SAP Social Media Analytics by NetBase」を活用している。

講演の中で実演した『iPad』の分析イメージ。キーワードに関するサマリ(画面上部)や
頻出頻度(画面左下)、ポジネガ傾向(画面右下:緑がポジティブで右がネガティブを表す)
講演の中で実演した『iPad』の分析イメージ。キーワードに関するサマリ(画面上部)や頻出頻度(画面左下)、ポジネガ傾向(画面右下;緑がポジティブで右がネガティブを表す)

 コメントのポジティブ・ネガティブ判定を超えて、気持ちの強さや、それがどういう行動につながっているかなどを特定して分析する自然言語解析を整備しているため、客観性の高いデータとして抽出することが可能だ。全世界で1.5億以上、日本固有のサイトでは60万のソーシャルメディア上のデータを過去1年分蓄積し、網羅的かつ時系列での把握を実現した。

ソーシャル・エンゲージメントの形成が事業の推進と連動する

 これを活用してビジネスデータと連動させると、ポジティブなコメントが多いのに売上に反映されていない理由は何か、あるいはネガティブ発言が目立っても売上に影響していない場合にどう対応するか、といった細かな考察ができ、ソーシャルメディア上の情報を最大限ビジネスに反映できるようになる。

 「コメントの投稿数や内容と売上などの関連が見えるようになれば、需要の予測や在庫管理もしやすくなる」と瀬尾氏。インフルエンサー分析や競合分析、また現在多くの企業が取り組んでいるFacebookページの分析などの機能も、導入企業には効果的に活用されているようだ。

 企業のソーシャルメディア活用における今後の方向性について、瀬尾氏は「ソーシャル・エンゲージメントの形成が加速する」と述べる。ソーシャルメディア上の声に耳を傾け、リアルタイムで対応しながら、ビジネスデータと連動させて顧客を深く理解することが、そのまま事業の推進に結びつくようになるからだ。「ソーシャルメディア上の声という大量かつ貴重なデータソースを使って、ビジネスプロセスの最適化にさらに注力したい」と、瀬尾氏は講演を締めくくった。

次のページ
顧客の本音といかに向き合い、どう付き合うか?

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2013/09/09 12:36 https://markezine.jp/article/detail/16834

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